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『障害者運動と価値形成――日英の比較から』

田中 耕一郎 20051120 現代書館,331p. ISBN: 4768434509 3360


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田中 耕一郎 20051120 『障害者運動と価値形成――日英の比較から』,現代書館,331p. ISBN: 4768434509 3360 [amazon][kinokuniya] ※ d d00h,

■内容(「BOOK」データベースより)
障害者運動は健常者文化に何をもたらしたか。“障害”を否定する支配的価値への抵抗・告発から、アイデンティティの再構成を経て、新たな価値の創生へ。
内容(「MARC」データベースより)
「障害」を否定する支配的価値への抵抗・告発から、アイデンティティの再構成を経て、新たな価値の創生へ…。障害者運動は健常者文化に何をもたらしたか。障害者運動の価値形成を日英の比較を通して検証する。

■賞
 *日本社会福祉学会第3回学会賞(2006年度)学術賞 Outstanding Academic Awards of the JSSSW
 http://wwwsoc.nii.ac.jp/jssw/award/index.html

■目次

  1章 研究の対象と方法
第I部 日英障害者運動の軌跡
  2章 日本の障害者運動の軌跡
  3章 イギリス障害者運動の軌跡
第II部 障害者運動における価値形成
  4章 <障害>概念の再構成
  5章 <当事者性>をめぐる価値
  6章 <異化>と<統合>をめぐる価値
 補論 日英障害者運動のいま
  1 最近の日英障害者施策の動向と障害者運動の展開
  2 権利擁護に関する条約及び国内法の制定・改定に向けて
  3 優生問題への取り組み
  4 アイデンティティの多様性への認識とネットワークの形成



  1章 研究の対象と方法

「現代の日英障害者運動は、1960年代という時代の「跳ね上がった気分」☆の中から誕生した新しい社会運動(new social movement)である。」([15])

  2章 日本の障害者運動の軌跡

「アメリカのIL運動との出会いが、日本の運動展開における価値の転換や、アメリカ的障害者運動の価値の移植、そして、その結果としての日本の障害者運動の方向転換をもたらしたというわけではない。
 なぜなら、自己決定を中核とする<自立>の概念、<障害>の肯定と自己信頼の獲得の提唱等、アメリカIL運動において強調された幾つかの主要な価値<0045<は、第一期以降の日本の障害者運動がその独自的展開の中で培ってきた価値と重なるからである。したがって、アメリカIL運動が日本の障害者運動における価値形成に及ぼした影響を正確に表現するとするなら、それは、「価値の転換をもたらした」のではなく、「価値の承認と明確化」をもたらした」と言うべきであろう。
 もっとも、この価値の承認と明確化ということの意味は決して過小に評価されてはならない。」([45-46])

  3章 イギリス障害者運動の軌跡

「例えば、イギリス障害者運動におけるアメリカ障害者運動批判は、一考に価する消費者主義の本質を突きながらも、やはり、相手方の背景的要因を閑暇した、或いは表層的な理解に基づいた曲解であると言わざるを得ない点もある。例えば、次のような批判である。」([73])

第II部 障害者運動における価値形成

  4章 <障害>概念の再構成

「イギリスの障害者運動においては、<障害>に関する支配的価値の体系が、個人モデル、医学モデル、個人悲劇理論等として命名され、理論的に整序されたのに対して、日本の場合には支配的価値に対するこのような特別な名称の付与、或いは理論的整序は(それへの志向はあったと言えるが)実現されなかった。
 その相違の理由としては考えられるのは[…]」([94])

「[…]当時の「介助者手足論」は、このような介助行為における障害者の主体性担保という主張の枠に収まるものではなかった。それは、介助行為を通した健常者の意識変革の延長に社会変革という目的を措定した主張だったのである。したがって、この社会変革という目的から演繹的に規定される介助観を持つ障害者たちにとって、介助料要求運動は、介助関係における革命的意図を金銭に転化させる反動的主張として映ったのである。」([106])

  5章 <当事者性>をめぐる価値

「[…]英米において介助の<当事者性>を担保するために提起されてきた消費者主義の主張と近似した介助料要求運動は、障害者運動の介助保障要求運動に新たな方向を示唆するものとなった。」([133])

「[…]「介助者手足論」は上述した介助の消費者主権の主張とは異なった地平において介助の<当事者性>の担保を求める論理であるが、これは身体の<当事者性>に関する日本の障害者運動の独自性を象徴する論理でもあった。日本の障害者運動における介助の意味づけと、介助獲得のための活動方針をめぐる論争は、基本的にはこの「障害者手足論」と消費者主義との間で闘わされた介助認識をめぐる論争であり、その論点は、単純化して言えば、介助を「人間関係と捉えるか、金銭関係と捉えるか」という点にあったが、それは障害者運動が支配的価値とどのように関わるのかという本質的な問いを内包する議論であったと言える。」([134])

「日本の障害者運動において、消費者主義の提起の嚆矢となったのは、府中療育センター闘争から分派したグループによる介助料要求運動である。」([148])

 *おおむね当たってはいるのだが、「有償」の主張も、かならずしも一つの流れとはいえない。「消費者主義」の主張は、1980年代後半以降の「自立生活センター」系の運動の主張(の主流)とはかなり近いが、それ以前の「有償派」の主張については必ずしもそうと言えないところがあると思う(立岩)。

「日英の障害者運動は、その延長上に描き得る「明るい未来像」とは別の次元において、消費者主義に内在する危険を感受してきた。それは、日本の障害者運動においては介助料要求に対する批判として、また、イギリスの障害者運動ではダイレクト・ペイメントに対する危惧として表現されてきたものである。」([162])

 6章 <異化>と<統合>をめぐる価値

「イギリスの障害者運動において、比較的早くからこの優生問題を論じたきたモリス(Morris:1991)は、イギリスにおける障害胎児の中絶が障害者運動内部においても最近まで重要な問題として取りあげられてこなかった理由の一つとして、イギリスの個人主義の伝統によって、障害児の養育が伝統的にパーソナル・コストとして捉えられてきたことをああげている。」([179])

 引かれている文献
 Morris, Jenny 1991 Pride Against Prejudice, The Women's Press

 福祉機器の使用反対をめぐる主張 ([207-210])


■誤植
p.272 立岩真也(2000)→立岩真也(1995)
 (あるいは、初版にある文章で頁の変更もないので 「立岩真也(1990)……p.180」)
p.290 立岩真也(1996)→立岩真也(1995)
 (あるいは、初版にある文章で頁の変更もないので 「立岩真也(1990)……p.185」)

■紹介

◆立岩 真也 2006/07/01 「書評:田中耕一郎『障害者運動と価値形成』」
 『社会福祉研究』[了:20060528]
◆立岩 真也 2006/11/25 「「社会人(院生)」の本・2」(医療と社会ブックガイド・65)
 『看護教育』47-10(2006-11):-(医学書院)[了:20060927]
◆立岩 真也 2007/09/25 「  」(医療と社会ブックガイド・75)
 『看護教育』48-09(2007-09):-(医学書院)


UP:20060524 REV:20070618 0729 20090709
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