Location via proxy:   [ UP ]  
[Report a bug]   [Manage cookies]                
HOME > 障害学会全文掲載 >

「日本における予防接種施策の変遷について(発表要旨)」

野口 友康(NPO法人予防接種被害者をささえる会 代表理事・東京大学大学院総合文化研究科 学術研究員) 2020/09/19
障害学会第17回大会報告 ※オンライン開催

last update: 20201009


質疑応答(本頁内↓)



■キーワード


■発表要旨

本文

 感染症ウイルスの伝播と蔓延の拡大を制御するために、近代化の過程で科学・医学が果たした貢献は看過できない。特に人類が開発した予防接種は、感染症の治療薬の開発とともに人間を感染症から守る重要な手段であることは周知である。予防接種の効用により世界において、現在、年間約200万人の人命が救われている。そして、約250万人が予防接種を受けられなかったために死亡している。予防接種には、公衆衛生に基づいた集団社会防衛的な側面が存在するだろう。
 一方で、近代化の過程で人類が開発した予防接種により個人的に健康被害を受けた人々も少なからず存在している。予防接種は、そもそもその人の感染症への免疫力を高めるために体内に病原体のもつ毒性成分の一部や添加剤を入れるため、その人の健康状態や体質によって、予測できない副反応がおこる場合がある。副反応が起こる確率は、平常時においても約10万分の1から100万分の1程度とされている。
 日本は、予防接種により副反応の被害を受けた人々を救済するために、1976年に予防接種健康被害救済制度を創設したが、それ以降の副反応被害者認定者数(定期接種のみ)は、約3400名以上にのぼっている (注1)。これらの人々は、予防接種という公衆衛生上の集団社会防衛システムの犠牲者であると言える。
 予防接種を実施すれば、必ず一定の割合で不可避な副反応の被害が生じてしまう。しかし、実施しなければ防げる感染症に罹患する可能性がある。手塚洋輔は、このような状況を行政の立場から次のように述べている。予防接種を行うことは、するべきでないのにした誤り(作為過誤=副反応)と、すべきなのにしなかった誤り(不作為過誤=感染症罹患)という二つの「過誤」の可能性を行政が引き受けることになる。しかも、これらの二つの過誤は同時に回避することはできない(手塚 2010:37)。
 本発表の目的は、戦後の日本の予防接種施策の変遷を、感染症罹患回避施策と副反応回避の施策の視点から分析を行い、今後の課題を検討することである。

(注1)
厚生労働省ホームページより。https://www.mhlw.go.jp/topics/bcg/other/6.html(閲覧:2020年8月31日)。

参考文献


[野口友康・のぐちともやす]



>TOP

■質疑応答

※報告掲載次第、9月19日まで、本報告に対する質疑応答をここで行ないます。質問・意見ある人はtae01303@nifty.ne.jp(立岩)までメールしてください→報告者に知らせます→報告者は応答してください。宛先は同じくtae01303@nifty.ne.jpとします。いただいたものをここに貼りつけていきます。
※質疑は基本障害学会の会員によるものとします。学会入会手続き中の人は可能です。→http://jsds-org.sakura.ne.jp/category/入会方法 名前は特段の事情ない限り知らせていただきます(記載します)。所属等をここに記す人はメールに記載してください。


*頁作成:安田 智博
UP: 20200824 REV: 1009
障害学会第17回大会・2020  ◇障害学会  ◇障害学  ◇『障害学研究』  ◇全文掲載
TOP HOME (http://www.arsvi.com)