政府はアフリカのサハラ砂漠周縁部「サヘル地域」の治安改善への協力を強化する。武器や武装勢力の移動を阻止するため、国境地域にパトロール車両を供与したり、中央への通報体制を整える通信機材を供与したりする。行政官や住民向けの啓発活動も支援する。邦人犠牲者が出た2013年のアルジェリア人質事件などを踏まえ、テロ活動の抑制を通じて関係国の支援に取り組む。
16年春までに西アフリカのニジェールで、車両や通信機器の提供など州政府の能力向上に取り組む。西アフリカの他の国でも、15年度から空港や国境地帯などでの検査体制強化など具体的な支援に順次乗り出す。農村支援などテロの温床となる貧困対策にも力を注ぐ。
安倍晋三首相は13年に横浜市で開いたアフリカ開発会議で、サヘル地域の治安対策に1千億円を支援する方針を打ち出した。まずは国際機関を通じて資金を支援してきたが、今後は個別の国のニーズに合わせ、日本からの直接支援を拡充する。
【ナイロビ服部正法】ロイター通信によると、西アフリカ・ニジェール第2の都市ザンデールで16日、仏週刊紙シャルリーエブドに対する抗議デモが暴徒化し、フランス文化センターやキリスト教徒の商店などを襲撃し、キリスト教会に放火した。警官隊とも衝突し、警官や市民計4人が死亡した。
ニジェールはイスラム教徒が人口の9割以上を占める。国際テロ組織アルカイダの分派「イスラム・マグレブ諸国のアルカイダ(AQIM)」や、隣国ナイジェリアで支配地域を広げるボコ・ハラムなど、複数のイスラム過激派の浸透が懸念されている。
風刺画掲載 ニジェールでは混乱続く
フランスの新聞社が襲撃事件のあと初めて発行した新聞でイスラム教の預言者の風刺画を掲載したことに対して、西アフリカのニジェールでは、暴徒化したデモ隊と警察が連日激しく衝突して死者が出るなど、混乱が続いています。
西アフリカのニジェールの首都ニアメーで、17日、襲撃を受けたフランスの新聞社「シャルリ・エブド」がイスラム教の預言者ムハンマドを描いた風刺画を掲載したことに抗議して、イスラム教徒の若者らおよそ1000人がデモを行いました。
現地からの報道によりますと、デモ参加者の一部は暴徒化し、おのや棒などを持って暴れるとともに、キリスト教の教会少なくとも8つに放火したということです。
デモ隊と警察の間では激しい衝突も起き、警察側が催涙弾を発射する事態となっており、これまでに少なくとも3人が死亡したということです。
ニジェールでは、前日の16日にも第2の都市ザンデールで抗議デモが拡大し、フランスの文化センターなどが焼き払われて警察官など4人が死亡しています。
連日の激しい衝突を受けて、ニジェールのフランス大使館では、現地に滞在するフランス人に対して、警戒のため屋内で待機するよう呼びかけています。
預言者の風刺画掲載を巡っては、イスラム教徒が多い中東やアジアの国々でも抗議の声が高まっていて、混乱の拡大が懸念されています。
仏大統領「シャルリ・エブド」を擁護
フランスのオランド大統領は、17日、フランスの新聞「シャルリ・エブド」がイスラム教の預言者ムハンマドの風刺画を掲載したことに対する抗議デモがアフリカや中東などで広がっていることについて、「こうしたデモはフランス国民が表現の自由をどれだけ大切に思っているかを理解していない」と述べて、懸念を示しました。
そのうえで、「表現の自由はフランスにとって原則であり、基本的な価値だ」と述べて、「シャルリ・エブド」を擁護する立場を示しました。
【ナイロビ=共同】西アフリカ・ニジェールのイスフ大統領は17日、首都ニアメーで預言者ムハンマドの風刺画を掲載したフランスの週刊紙シャルリエブドへの抗議デモが暴徒化し、キリスト教会や飲食店が放火されて市民5人が死亡したと明らかにした。フランス公共ラジオなどが伝えた。風刺画抗議デモの死者は計10人になった。
ニジェールではザンデールで16日にシャルリエブドをめぐるデモで5人が死亡していた。
18日も野党勢力が抗議デモを呼び掛け、ニアメー中心部に約300人が集結。解散させようとした警官隊が催涙弾を発射し、再び混乱が広がっている。
イスフ氏はテレビ演説で、風刺画に対して不快感を示す一方、「崇拝の場を略奪して汚し、キリスト教徒の同胞を殺害した者たちはイスラム教のことを何も理解していない」と述べ、暴徒化したデモ参加者を糾弾した。
17日はニアメーの他にも2カ所の町で抗議デモがあり、教会などが放火された。ニジェールでは人口約1780万人の約95%がイスラム教徒。
仏週刊新聞が預言者ムハンマドの風刺画を掲載したことを受け、イスラム教徒が多い西アフリカのニジェールでは18日、首都ニアメーで再び大規模な抗議デモが起き、混乱が続いている。17日のデモでは少なくとも5人が死亡。16日に同国第2の都市ザンデールで起きたデモと合わせると、同国内の死者数は計10人に上っている。AFP通信などが伝えた。
ニジェールは、イスラム教徒が9割を超える。フランスが旧宗主国だ。18日の抗議デモではデモ隊に警官隊が催涙ガスで応戦し、複数の逮捕者が出た模様だ。同通信などによると17日のデモでは約千人が鉄の棒やオノなどを振りかざして暴れ、少なくとも八つのキリスト教会が焼かれた。16日のデモのあと、教会から焼死体が1体見つかったという。同国の仏大使館は、仏国籍者らに外出しないよう呼びかけている。
かつてフランスの植民地だったマリやセネガル、モーリタニア、アルジェリアでも16日にデモが起きた。
風刺画を転載したアフリカの新聞社は謝罪に追い込まれている。英BBCによると、東アフリカ・ケニアの日刊紙「スター」は15日の朝刊で、多くのイスラム教徒の読者から抗議があったとして、「風刺画で苦痛を与えたことは誠に遺憾です」とする謝罪文を掲載した。南アフリカ紙「シティズン」も「風刺画で傷ついたすべての人に対して謝罪します」と陳謝した。
中東では大きな抗議デモは起きていない。エジプトのシーシ大統領は13日、宗教を攻撃する外国の出版物の流通を禁止する権限を首相に与えるとする大統領令を出している。宗教指導者らは仏週刊新聞社に対するテロ行為を非難しつつ、イスラム教徒に対し、預言者の風刺画に過剰に反応しないよう説いている。(ヨハネスブルク=三浦英之、カイロ=翁長忠雄)
風刺画掲載抗議デモで10人死亡…ニジェール
The Yomiuri Shimbun
2015年01月18日 18時48分
【ヨハネスブルク=上杉洋司】AFP通信によると、仏政治週刊紙「シャルリー・エブド」がイスラム教預言者ムハンマドを描いた風刺画を掲載したことに対するアフリカ・ニジェールの抗議デモで、首都ニアメーでは17日、少なくとも市民5人が死亡した。
南部ジンデルでも同日までに5人が死亡した。
ニアメーでは少なくとも非イスラム教の宗教施設8か所が放火されたほか、バーやホテルが暴徒に襲われた。フランス系企業の看板がある建物が狙われたという。ニジェールは人口の95%がイスラム教徒。
世界各地で仏紙に抗議デモ ニジェールで10人死亡
cnn.co.jp
2015.01.21 Wed posted at 12:10 JST
(CNN) 仏風刺週刊紙「シャルリー・エブド」が先週発行した最新号の表紙にイスラム教の預言者ムハンマドの風刺画を掲載したことに対し、世界各地のイスラム教徒が抗議デモを展開している。
かつてフランスの植民地だった西アフリカのニジェールでは、イスラム教徒が暴徒化して教会や民家に火をつけ、政府発表によると10人が死亡した。
仏AFP通信によると負傷者は173人に上り、首都ニアメ市内だけで45の教会が放火された。キリスト教系の学校や孤児院も標的になった。多くの建物は放火前に略奪されたという。
ニアメからの映像は、イスラム教の聖典コーランをかざして「神は偉大なり」と叫び、聖書を破り捨てるデモ隊の姿を伝えている。フランス人経営のバーが炎上する場面も映っていた。
同じく旧植民地のアルジェリアでも、デモ隊と警官隊の衝突が起きた。
パキスタンの最大都市カラチでは、イスラム政党の呼び掛けで200人以上のデモ隊がフランス総領事館の前に集結。警察は催涙ガスや放水銃で強制排除を図った。これに先立ち、同国議会ではシャルリー・エブドの風刺画掲載を非難する決議が採択された。
ヨルダンの首都アンマンでは、イスラム組織「ムスリム同胞団」が2000人規模のデモを主催。デモ隊はフランス大使館へ向かって行進し、警棒を持った警官隊が排除を図った。
パレスチナ自治区ガザでは19日、約200人のイスラム過激派グループがガザ市内にあるフランス文化センターを襲撃した。AFP通信によると、グループは「フランス人よ、ガザを去れ。さもなければのどをかき切って殺す」などと叫んでいた。
パレスチナ警察はグループのメンバー数十人を拘束した。イスラエル紙ハーレツは、メンバーがイスラム過激派「イラク・シリア・イスラム国(ISIS)」のような戦闘服を着ていたと伝えた。
西アフリカのマリや東アフリカのソマリア、中東レバノンでも大規模なデモが実施されたが、暴力には発展していない。
ロシアのイタル・タス通信によると、同国南部チェチェン共和国の首都グロズヌイで開かれた抗議集会には数十万人が参加したとみられる。
西アフリカのセネガルとモーリタニアではデモ隊がフランス国旗を燃やして抗議した。イランのデモでは米国とイスラエルの国旗が焼かれた。
ボコ・ハラム:ニジェールに侵攻…町を攻撃後に撤退
毎日新聞 2015年02月07日 12時31分(最終更新 02月07日 13時25分)
【ヨハネスブルク服部正法】西アフリカ・ナイジェリアの北東部で支配地域を拡大するイスラム過激派ボコ・ハラムが6日、国境を越えて隣国ニジェールに侵入し、町を攻撃した。ニジェール軍などが応戦し、ボコ・ハラムは撤退した模様。ボコ・ハラムは最近、カメルーンへの越境攻撃を強めてきたが、ニジェールへの侵攻は初めてで、今後さらなる攻撃が懸念される。
AP通信などによると、ボコ・ハラムは6日、ニジェール側の国境の町ボッソに侵攻。ニジェール軍とニジェール支援のため駐留するチャド軍が応戦した。
ナイジェリア北東部の支配地域でイスラム国家樹立を宣言するボコ・ハラムは昨年12月以降、カメルーン北部で攻撃を強めてきた。このためカメルーン軍支援のために1月からカメルーン領内に駐留していたチャド軍が今月3日、ナイジェリア領内に進攻し、ボコ・ハラムが制圧していた町ガンボルを奪回した。
しかし、ボコ・ハラムはその後、カメルーン側の町フォトコルを急襲。AP通信は4、5両日で100人近い死者が出たと報じている。
勢いを増すボコ・ハラムについて周辺国の危機感が高まっており、アフリカ連合(AU)がチャド、ニジェールを含めた5カ国による、ボコ・ハラム対策の多国籍部隊の発足を決めたばかり。ボコ・ハラムのニジェールへの攻撃は周辺国の機先を制する狙いも考えられる。
ボコ・ハラム:ナイジェリア国境越え拡大 IS手法まね
毎日新聞 2015年02月18日 20時04分(最終更新 02月18日 23時54分)
【ヨハネスブルク服部正法】西アフリカ・ナイジェリア北東部で支配地域を広げるイスラム過激派ボコ・ハラムは今月に入り、隣国ニジェールとチャドに相次いで侵攻した。ナイジェリア軍の鎮圧作戦に屈するどころか、逆に国境を越えて拡大している。強大化の背景には、イスラム過激派とのネットワークや、地域の民族的な対立が浮かび上がってくる。
ボコ・ハラムは今月1日には北東部の最大都市マイドゥグリにも大規模攻撃を仕掛けたほか、これまでに北東部3州を中心にベルギーに匹敵する3万平方キロ程度を制圧。約170万人を支配下に置いたとも推測される。
隣国への攻撃も始めた。昨年12月からカメルーンへの攻撃を強め、今月6日にニジェール、同13日にチャドをそれぞれ初めて越境攻撃した。越境前には、この3カ国で戦闘員勧誘を活発化させていたことが明らかになっており、事前に隣国にも布石を打っていた可能性がある。
支配地域拡大の背景にあると見られるのが、ナイジェリア北東部と、この3カ国の国境地帯にまたがって住むカヌリ人の存在だ。「ボコ・ハラムの戦闘員の多くがカヌリ人」(ナイジェリア北部カノの住民)との指摘もある。ボコ・ハラムは過激思想を吹き込んで勧誘するだけでなく、カヌリ人の帰属意識や、人口が多くナイジェリア北部で政治的、社会的に主流をなしてきたハウサ人に対する、カヌリ人の反発を利用して、戦闘員の勧誘と拡大を進めている可能性もある。
ナイジェリアと周辺3カ国にまたがる地域は、カヌリ人が主流となったイスラム教国「カネム・ボルヌ帝国」(9世紀ごろ〜19世紀)のあった地域でもあり、一部の専門家からは、ボコ・ハラムの目的が同帝国の再現にあるとの分析も出ている。
進撃を続けるボコ・ハラムの中心的な戦闘員数について4000〜6000人程度との推計がある。しかし、ボコ・ハラムに詳しいシンクタンク「安全保障研究所」(南アフリカ)のマーティン・エウィ上級研究員は、戦闘員の実数について「最大約2万人」と推測し、これまでの推計以上に拡大している可能性を指摘する。
また、資金面では、国際テロ組織アルカイダ系でアルジェリアを拠点とする「イスラム・マグレブ諸国のアルカイダ」(AQIM)から援助を受けているとされている。崩壊したリビアのカダフィ政権が保有していた武器が、AQIMやチャドなどを経由して、流入している疑いがある。
ナイジェリア北部でテロ攻撃を続けてきたボコ・ハラムは、イラク、シリアで拡大するイスラム過激派「イスラム国」(IS=Islamic State)の建国宣言(昨年6月)の直後に、ISへの支持を表明。ISの手法をまねるように町や村を面的に制圧する戦略を取り始め、8月には支配地域でのイスラム国家樹立を宣言した。ボコ・ハラムは昨年から、自爆攻撃に少女らを使うようになった。エウィ氏は「ISをまねた」とISの影響を指摘。実際にISの前身組織が女性戦闘員の自爆攻撃をイラクで頻発させていたことが知られている。
アフリカ連合(AU)は7日、ナイジェリアと3カ国にベナンが加わる8750人の多国籍部隊創設を承認。地域を挙げて鎮圧に取り組む姿勢だ。
【ことば】ボコ・ハラム
2002年にナイジェリア北東部ボルノ州で結成されたイスラム過激派。組織名は現地語で「西洋の教育は罪」を意味し、シャリア(イスラム法)導入を同国政府に要求している。創設者のモハメド・ユスフ師は09年に当局によって殺害された。同年以降、同国北東部などでテロを繰り返し、昨年4月にはボルノ州で女子生徒200人以上を拉致し、国際社会の非難を浴びた。政府は同10月に停戦合意を発表したが、ボコ・ハラムの指導者は否定した。
武装勢力掃討で葬儀参列者を誤爆、37人死亡 ニジェール
cnn.co.jp
2015.02.19 Thu posted at 09:50 JST
ナイジェリア・カノ(CNN) アフリカ西部ニジェールのナイジェリアとの国境に近い村で戦闘機が落とした爆弾が葬儀の参列者を直撃し、37人が死亡、20人が死亡した。ニジェールの治安関係者や地元住民が18日に明らかにした。
空爆があったのは現地時間の17日午後6時半ごろ。地元当局者の葬儀のため自宅前に集まっていた参列者が死傷した。
治安関係者によれば、誤爆したのはイスラム過激派「ボコ・ハラム」の掃討作戦を行っていた戦闘機だった。
戦闘機の所属国は不明だが、住民はナイジェリアの戦闘機だったと主張している。これに対してナイジェリア空軍の報道官は、17日にこの地域で空爆は行っていなかったして関与を否定した。
ボコ・ハラムはナイジェリアを拠点とする武装勢力で、ナイジェリアとカメルーン、チャド、ニジェールが共同で掃討作戦に力を入れている。チャドとナイジェリアはこの作戦に戦闘機を使っていた。
ボコ・ハラムはナイジェリアの村落を次々に襲って住民の拉致や虐殺を繰り返し、市場や教会、モスクなどを狙った爆弾テロも相次いでいる。ニジェールやカメルーン、チャドなどの周辺国を狙った攻撃も増えていた。
<ニジェール旅行>退避勧告、中止要請…ツアー会社が実施
毎日新聞 3月2日(月)18時55分配信
外務省が2月、危険情報で最もレベルの高い「退避勧告」を出している西アフリカ・ニジェールへの「冒険ツアー」を企画した東京都内の旅行会社に対し、ツアーの取りやめを求めていたことが分かった。同社は要請を受け入れず、ツアーを予定通り実施した。同省は今後、旅行業界に対して危険地域へのツアーは取りやめるよう、働きかけを強める方針だ。
この旅行会社が企画したのは、2月中旬から下旬までの約2週間の日程で、首都ニアメーから、サハラ砂漠があるアガデスなどを回り、登山や市内観光を行うツアー。十数人が参加した。同省と観光庁がツアー実施前の2月上旬から複数回にわたってツアー中止を要請したが、同社は「ニジェール軍にも警備を要請するなど、安全対策はとっている」と説明し、ほぼ当初予定通りに実施した。
ニジェールでは外国人の誘拐事件が多発していることから、アガデスなどの地域では退避勧告、ニアメー周辺地域でも2番目に危険度が高い渡航延期を発令している。いずれも拘束力はないが、同省幹部は「警戒レベルが最も高い地域にツアーを計画するのは極めてまれで、危険だ」と話す。同社は、毎日新聞の取材に「こちらから言うことは何もない」と話している。【鈴木美穂】
ナイジェリア北部カノ(CNN) ナイジェリアを拠点とするイスラム過激派ボコ・ハラムに対し、隣国のニジェールとチャドは8日、大規模な掃討作戦を開始した。
ニジェール軍の情報筋によると、作戦は同国とナイジェリアの国境付近で展開されている。ニジェール側の町ディファにいる軍当局者は匿名を条件に、「ニジェールとチャドの部隊が早朝に空と地上からの集中攻撃を開始し、今も続行している」と語った。
ディファの住民によると、午前6時ごろに大規模な部隊がボコ・ハラムと衝突し、川を隔てたナイジェリア側まで撃退した。「大きな砲撃音や戦闘機の爆音が響き、次第にナイジェリア方面へ遠ざかっていった」という。住民らは沿道に並んで水や茶を振る舞い、兵士らはボコ・ハラムのアブバカル・シェカウ指導者を「生け捕りにする」と気勢をあげた。
ディファで活動するジャーナリストによると、国境へ向かった車列は戦車や救急車、給水車、貨物トラックなどで構成され、長期戦の構えがうかがわれたという。
ニジェール側の別の町バッソからも、地上部隊が上空援護部隊とともに出発した。
ボコ・ハラムは7日、シェカウ指導者がイスラム過激派「イラク・シリア・イスラム国(ISIS)」への忠誠を表明したとする音声メッセージを公開した。ナイジェリアは周辺国とともに、北部ボルノ州などで掃討作戦を展開。今月28日の総選挙までにボコ・ハラム支配下の地域をすべて奪還することを目指している。
アフリカ西部ニジェールのイスフ大統領は都内で日本経済新聞のインタビューに応じ、同地域でテロ活動を続ける過激派組織「ボコ・ハラム」の掃討に向け、7月末にナイジェリアなど周辺5カ国で合同軍を編成すると明らかにした。各国が個別に実施する作戦では、ボコ・ハラムを掃討できないと判断したためだ。日本にもテロ対策や経済支援で協力を求めた。
2009年ごろから過激化したボコ・ハラムはナイジェリアのほか、周辺のニジェールやチャドなどでも自爆テロや住民の虐殺を繰り返している。各国はボコ・ハラムの国境を越えたテロ活動に柔軟に対応できていなかった。17日もニジェール南東部で約40人が殺された。
合同軍はアフリカ中部チャド湖を取り囲むように位置するニジェール、ナイジェリア、カメルーン、チャド、ベナンの5カ国で構成する。計約8700人の兵力で、作戦本部はチャドのヌジャメナに設ける。「作戦はナイジェリアを中心に展開する」という。
イスフ氏は合同軍を編成する理由について「指揮系統を一本化することで、軍事作戦が効率的になる」と述べた。
これまでの掃討作戦で「既にボコ・ハラムの戦力は弱まっている」としたうえで「完全にせん滅するまで戦う」と作戦には期限を設けない考えを強調した。合同軍の作戦が成功すれば、地域の治安回復や経済発展に向けて大きな一歩を踏み出すことになる。
資金の確保が課題になりそうだ。ヌジャメナへの本部設置には数十億円が必要になるとみられるほか、作戦の遂行は多額の出資を伴う。イスフ氏は「テロリストには国境がない。国際社会からの資金支援を期待したい」と訴えた。
日本に対しては「テロとの戦いに関心を持たなくてはならない」と呼びかけた。19日の安倍晋三首相との首脳会談でも、イスフ氏はテロ対策への取り組みを説明し、日本とテロ対策で関係を強化することで一致した。
自国の経済発展に向け、日本からの積極的な技術支援や企業移転も求めた。ニジェールは13年の1人当たり国内総生産(GDP)が約400ドルで、特に開発が遅れた国「後発発展途上国」だ。インフラ整備などに力を入れるイスフ氏は「14年の経済成長率は7%。大きな成長を続けている」と自信をみせる。
特に「農業や医療、人材教育などの分野で日本政府の支援を続けてほしい」と強調した。「法整備などで民間企業の投資環境も向上している」とも話し、ウランなどの資源開発や、鉄道、エネルギー分野への投資を求めた。
(国際アジア部寺井浩介)
【7月18日 AFP】13歳の少女、ムルジャさんの鼻は壊疽(えそ)によって溶けてしまっている。上唇と、上側の歯茎の一部もだ。栄養失調が原因で発症する壊疽性口内炎(水がん)に冒されているのだ。
最貧国の一つ、西アフリカのニジェールに住む、はにかみがちの少女ムルジャさんは「前はもう少しましだったのに」と不安げな様子で話した。複数の菌の感染によって起こる壊疽性口内炎で大きく損なわれた外見を気にして、ムルジャさんは相手の目をまっすぐ見て話すことができない。最初は炎症を起こした歯茎から出血し、そのわずか3日後には、鼻などの組織が急速に壊死し、彼女の美しさと子ども時代は失われた。
1992年からニジェールで活動するスイスのNGO「サンティネル(Sentinelles)」の看護師、ファティ・バダマシさんは「問題はこの病気の進行が非常に速いということ。壊死は72時間以内に起こる。顔に黒っぽいまだらが現れてから患者が来るころには、もう手遅れだ」と話した。
ニジェールでの慈善活動を監督しているアリ・アダさんによると、壊疽性口内炎は「死体から臭うような腐敗臭」を放つ。「事務所に着いて、壊疽性口内炎の患者が来ているとすぐに分かる」という。ムルジャさんの患部からも強い臭いがしていた。
■貧困から生じる病
壊疽性口内炎は、食糧不足の地域で主要なビタミンが欠乏し発症することが多い。水の細菌汚染など衛生問題も関係している。また自然免疫力が極端に落ちた状態でも発症しやすい。
ニジェールでは食糧危機が頻繁に起こる。保健、教育、所得に関する国連開発計画(UNDP)の指標、人間開発指数(HDI)では最下位だ。また国連によると、1人の女性が生涯に産む子供の数では、ニジェールが7.6人で世界のトップ。だが、14年6月の時点で、5歳未満の子どもの15%超が飢餓状態にあり、毎年、4000〜6000人の幼児が栄養失調で亡くなっている。
世界保健機関(WHO)によれば、壊疽性口内炎はアフリカ諸国の大半の他、アジアのラオス、一部の南米諸国でもみられるが、世界全体で1年間に発症する14万〜18万人のうち大半を占めるのはニジェール人だ。
WHOの専門家、ブノア・バレンヌ(Benoit Varenne)氏によると、欧州では第2次世界大戦末期、連合軍がその劣悪な環境を直接目にしたナチス・ドイツ(Nazis)の強制収容所での症例の記録が最後だ。「そう考えれば、どのような類の感染症を相手にしているのか、イメージがつかめるだろう」とバレンヌ氏はいう。
ニジェールの疾患対策に関わるイブラヒム・ハマドゥ(Ibrahim Hamadou)氏は、同国の壊疽性口内炎に関する信頼できる統計はないとしながら「90%の子どもが基本的な手当てを受ける前に亡くなっている」と説明した。
■予防に懸ける政府
スイスのNGO、サンティネルの協力で、ムルジャさんはまもなく同国ジュネーブ(Geneva)へ渡り、鼻と口の再建手術を受ける。しかし、同じく目など顔の左半分が壊死したセイミ君もスイスで皮膚と筋肉組織の移植手術を受けたが、外見が大きく損なわれた状態は変わらない。片方の目は完全に失われてしまった。
ジュネーブ大学病院(Geneva University Hospitals)のブリジット・ピッテ(Brigitte Pittet)外科教授は「私たちがやっていることはほとんど奇跡だが、完璧にはほど遠い」と話した。
しかも手術の費用は極めて高い。そこでニジェール政府は、壊疽性口内炎の予防に関する知識を広める活動と抗生物質に期待をかける。疾患対策当局のハマドゥ氏は「母親たちにショックを与えるような恐ろしい写真を見せて」、子どもが感染した場合には一刻も早く手当てを受けるよう呼び掛けていると話した。「十分早い段階で壊疽性口内炎を発見できれば、結果は非常に向上する」
(c)AFP/Joris FIORITI
【12月18日 AFP】ニジェールのマハマドゥ・イスフ(Mahamadou Issoufou)大統領(63)は17日のテレビ・ラジオ演説で、同国政府がクーデター計画を「阻止」し、複数の人物を拘束したと発表した。事態は既に「収拾されている」としている。
この発表に先立ち、地元メディアとソーシャルメディアは14日、軍の上級将校少なくとも4人が拘束されたと伝えていた。だが、この情報の真偽はニジェール政府によって確認されていない。
ニジェールでは来年2月21日、イスフ大統領が再選を狙う大統領選と議会選挙の第1回投票が控えている。同大統領は「この狂気の陰謀の背後にいる全員の身元が確認され、逃亡中の1人を除き全員が拘束された」と述べた。(c)AFP
アフリカ西部ニジェールで21日、大統領選の投票が行われた。2期目を目指す現職イスフ大統領(写真)をはじめ計15人が立候補し、混戦の様相を呈している=18日撮影、ニアメー
【6月16日 AFP】西アフリカ・ニジェールの政府は15日、同国の砂漠地帯で先週、子ども20人を含む移民34人の遺体が見つかったと発表した。隣国アルジェリアを目指す途中で密入国業者に置き去りにされたとみられる。
ニジェール内務省の発表によると死者の内訳は男性5人、女性9人、子ども20人。治安当局筋はAFPに対し、移民らは飲み水がなかったことにより死亡したとみられると語った。
アルジェリアには近年、隣国のマリやニジェールなどから数千人単位の不法移民が流入。その多くは欧州を目指している。(c)AFP
砂漠に子どもら34人の遺体、密入国業者が置き去りか ニジェール
【7月25日 AFP】西アフリカの辺境では、イスラム過激派による暴力行為で難民危機が発生し、多くの人々が困窮している。しかしニジェールでは、地元のある小企業の飢饉(ききん)対策事業が成果を上げている。
同国公用語のフランス語で「食品加工会社」を意味するSTAという社名を掲げるこの企業は、世界中の救援活動家らが活用しているピーナツを主原料とする栄養補助食品「プランピーナッツ(Plumpy'nut)」を現地生産する数少ない会社の一つだ。当初4人だった従業員数は、過去15年で100人以上に急増した。
イスマエル・バルムー(Ismael Barmou)社長(35)は首都ニアメー(Niamey)でAFPに対し、「わが社は昨年、深刻な栄養不足に苦しむ27万人の子どもたちを救う一助になれた」と語った。
1990年代後半に高プロテインの特殊栄養食品としてプランピーナッツを開発したのは、フランスに本社を置くニュートリセット(Nutriset)。同社は現地生産を促進するプログラムの一環で、ニジェールをはじめアフリカの数か国に生産技術を輸出した。
領土の大部分が乾燥した貧困国ニジェールは、度重なる人道危機や食料不足に苦しんでいる。自宅を失った人や、近隣のナイジェリアやマリのイスラム過激派から逃れてきた難民が、現在約30万人に上っている。
加えて先月には、ナイジェリアを拠点とするイスラム過激派組織ボコ・ハラム(Boko Haram)が国境を越えてニジェール南東部のボッソ(Bosso)に大規模な攻撃を仕掛け、さらに5万人が家を追われた。
フランスや英国に留学した後、母国に戻ったバルムー氏は2001年、最貧家庭向けに小麦粉を製造する会社としてSTAを起業した。転機は2005年に訪れた。同年の食糧危機をきっかけに事業を拡大し、「予防的対応が可能な企業を目指し、治療補助食品」の生産に参入したのだ。
STAは、株式の3分の2をニジェールの出資者、残りをニュートリセットが保有する民間企業。ニアメーの自動生産工場には正社員115人が常勤する他、ピーナツの収穫期には地元の農場にさらに約200人の季節労働者が加わる。
年間の売上高は60億CFAフラン(約11億円)。生産量は1日当たり約27トンで、昨年の年間生産量は8500トンに上った。
個別包装されたプランピーナッツは、国連児童基金(ユニセフ、UNICEF)などの支援団体に納品され、そこから栄養を必要とする人々に配給される。プランピーナッツを利用している病院長の話によると、子どもが1日3袋食べれば、「健康的な標準体重に達するのに必要な全栄養素を摂取できる」という。
STAの生産部長は、「プランピーナッツは、人道支援員らの要望に応えられる利点を備えている。冷蔵も調理も必要なく、ただ袋を開けさえすればいい」と語った。(c)AFP/Patrick FORT
茨城県の名産「さしま茶」の生産者らで構成するさしま茶協会は9日、西アフリカのニジェールに茶葉を輸出すると発表した。現地で子どもへの支援活動を手掛ける一般社団法人コモン・ニジェール(同県守谷市)などと連携し、8月中旬にも500キログラムを輸出。販路拡大につなげたい考え。
さしま茶は茨城県の古河市、坂東市、常総市、境町、八千代町で生産される茶葉で、豊かな香りとコクが特徴だ。江戸時代に栽培が始まったとされ、日本茶として初めて海外に輸出された歴史も持つが、直近では国内販売のみにとどまる。
今回輸出するのは、25グラム入り5000個と200グラム入り1875個。さしま茶協会に加盟する30人のうち13人が生産した茶葉を使った。乾燥の際に時間をかけたり、気温を高めたりと現地の嗜好に合うよう加工した。フランス語で「日本の緑茶」を意味する商品名で販売する。
ニジェールはビタミン補給の手段として緑茶を飲む習慣があるが、その多くは安価な中国産だ。今回は市場価格と同程度(250グラム300円)で販売し認知度を高め、次回の輸出にもつなげたい考え。
さしま茶協会の石山嘉之会長は「海外で注目してもらうことが、国内のPRにもつながると期待する」と話した。
南アフリカのヨハネスブルクで開かれている野生動植物保護のためのワシントン条約締約国会議で26日、絶滅が危惧されるゾウの保護に関する議論が第2委員会で始まった。アフリカ諸国などは象牙を狙った密猟を止めるため、すべての象牙市場を閉鎖すべきだと提案。日本は国内市場の存続を訴えていく方針で、会議の紛糾が予想されている。
提案国の一つのニジェールはこの日、「合法と違法の象牙を見分けるのは難しい。取引市場の閉鎖は密猟への有効な手段だ」などと主張。日本は委員会での発言はなかったが、報道陣の取材に「(日本)国内の象牙市場は適切に管理されている」などと述べ、全面閉鎖には反対の姿勢を示した。議論はこの日の委員会ではまとまらず、作業部会で継続して審議されることが決まった。
アフリカでは象牙を目的としたゾウの密猟が止まらず、国際自然保護連合(IUCN)は25日、アフリカゾウの個体数は37カ国で推定約41万5千頭で、2006年と比較して約11万1千頭減ったと発表。今月開かれたIUCNの国際会議では、象牙の国内取引を禁止する勧告が賛成多数で採択されている。(ヨハネスブルク=三浦英之)
だが工業化の波で中国国内のロバの数は減っている。そこで原料調達先として期待されているのがアフリカだ。輸入は順調に増加しているが、さまざまな問題も起きている。
ニジェールは中国への輸出増を受けて、先ごろロバの輸出を禁止した。
ニジェール政府によれば、今年に入って中国向けに販売されたロバは8万頭。去年の2万7000頭と比べ急増しており、このままでは国内のロバが「激減してしまう」という。
禁輸措置に踏み切ったアフリカ諸国はニジェールだけではない。8月にはブルキナファソも同様の措置を取った。同国では半年間で4万5000頭のロバが殺されたという。
両国にとって、ロバは貴重な外貨獲得源だ。だが一方で食肉処理場が水資源の汚染を引き起こしたり、ロバの皮や肉の価格上昇が他の家畜に波及するといった副作用も起きている。 南アフリカ
のステレンボス大学で中国の研究に携わるエマニュエル・イグビノバ氏は「ロバの価値の高騰が経済に不均衡をもたらした」と指摘。それでも慎重に練った計画の下でなら、ロバ輸出は各国に大きな利益をもたらすとみている。
同氏は「もしアフリカ諸国がうまく規制を導入し、食肉処理場に高い基準を設けたり、ロバ飼育に関する教育を行うことができれば、ロバは重要な収入源になりうる」と説明する。
ブルキナファソはロバ販売への規制を検討しているが、一方で他のアフリカ諸国との競争にもさらされている。
ケニアや南アフリカといった経済力で勝る国々では中国の需要に応えるべく、施設の拡充が進む。また、闇市場での取引もアフリカ全体で盛んとなっている。