2014年9月7日、本拠ヤンキースタジアムであったジーターの引退セレモニー。参列者とともに記念撮影するジーターとジョーダン=AP
今季限りで引退した大リーグ、ヤンキースのデレク・ジーター(40)が、「兄」と慕う存在がいる。
プロバスケットボールNBAの元スター選手で、「神様」と呼ばれるマイケル・ジョーダン(51)だ。
20年近い親交がある2人には、共通点がある。
あらゆる社会の垣根を越えて、スポーツの持つ力を人々に伝えてきたことだ。
取材・文:村上 尚史制作:佐久間 盛大、木村 円
9月7日。本拠ヤンキースタジアムであったジーターの引退式には、チームの黄金期をともに築き上げた元同僚らが招かれた。
大リーグ歴代最多通算652セーブのマリアノ・リベラ、通算2336安打のバーニー・ウィリアムズらがファンの拍手とともにグラウンドに登場する中、最後に大歓声で迎えられたのが、ジョーダン。その名前を知らない人が珍しい伝説的なスーパースターだが、競技は違う。その場にいたのが不思議だったが、2人の結びつきを思えば、招待されたのは当然だっただろう。
ジョーダンとジーターが初めて出会ったのは、1994年秋。アリゾナ州であった大リーグ傘下のマイナー選手のための教育リーグだった。
その年、ジョーダンは大リーグに挑戦していた。93年10月、突然、プロバスケットからの現役引退を発表。ブルズを3季連続でNBA王者に導き、全盛期を迎えていた中での引退劇は、燃え尽き症候群、父親が強盗に殺害されたことなどが原因とも言われた。当時31歳。ホワイトソックス傘下のマイナーチームに所属していた。
そのとき対戦したのが、ヤンキース傘下マイナーにいた20歳のジーター。卓越した運動能力に加え、生き生きとプレーする若者を見て、ジョーダンは確信した。「必ず成功すると思った。すべてが洗練されていた。あのときの私のお手本で、先生みたいな存在だったよ」。接するうちに、ジーターの飾らない人柄にも好感を覚えていた。
翌年、電撃的にジョーダンはNBAに復帰し、ジーターは大リーグに初昇格した。以来、戦う舞台は違ったが、常に期待と注目を集める2人の交流は自然と続いた。ジーターはいう。「マイケルには、たくさんアドバイスをもらった。選手としての生き方だけでなく、私生活についても。兄のように思っていた」