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話題のグーグルフォン「Moto X」〜米有力レビュアーの評価やいかに?三国大洋の箸休め(11)

米モトローラの新型スマートフォン「Moto X」が8月23日に米国で発売となった。米グーグル傘下となったモトローラが新機軸を盛り込んで投入した同製品について、米有力レビュアーらの評価を紹介する。

» 2013年08月27日 17時00分 公開
[三国大洋,オンラインニュース編集者]

 今回は趣向を変えて、2013年8月23日に米国で発売になった米モトローラの新型スマートフォン「Moto X」の評判について。この「グーグルフォン」第1弾について、目の肥えたベテラン・レビュアーらがどう評しているのかをかいつまんで紹介する。

Moto X

 最初に複数のレビュー記事に目を通した筆者の印象を記しておくと、それは「野球のバッティングでいうと2塁打(評者によっては3塁打)くらいのインパクトがMoto Xにはある」という点で、ほぼ評価が一致しているように思えること。ただし、「第1打席からいきなり『ホームラン』はさすがに難しかった」という点もほぼ共通している所で、特にスペック競争(ハードウェア関連の数字や搭載アプリの種類)から距離を置いた所で訴求点を見出そうとした戦略が「吉と出るか、凶とでるか」は今後の結果待ち、といえよう。

 さらに、「Moto Xが仮に100ドルの市販価格で売り出されていたら、すぐに大ヒットになっていたかもしれない」という印象も受ける。100ドルというのはご存じの通り、いまだに購入時の一部負担(支払い)が残っている米国市場での「松、竹、梅」の「竹」に相当する値付け。199ドル(携帯通信キャリアとの2年契約が条件)という価格にしたせいで、競合他社の最上位機種――「iPhone 5」「GALAXY S4」「HTC One」などと同じ土俵に乗せられてしまい、プロセッサやディスプレイ、カメラのスペックや仕上がりなどで、どうしてもこれらの製品と比べた際の弱さを指摘されて、損をしているようにも思える。

 無論、「100ドルではもうけも残らない」(特に米国内で組み立てる分、余計にコストが掛かる、といった理由で)といった台所事情もあったと想像できるが、それでも部品のスペックの高さではなく、万人向けに「バッテリの持ち時間」「持ちやすい大きさ・重さ」などを優先して企画・開発したという担当者の話を聞くと、あるいは価格帯性能比の高さで成功した「Nexus 7」タブレットの前例を思うと、Moto Xでも同じような「同じ土俵に上がらない」ための工夫があったらさらによかっただろうに……と思えてしまう。

新機能ではなく新機軸で勝負

 前振りが長くなったが、そろそろ本題に。

 Moto Xの長所・短所の両方を端的に示しているのはAllThingsD(Wall Street Journal)のウォルト・モスバーグ氏のレビュー。下掲の動画にあるように、「いろいろと革新的な点もあるが、全体として革命的(に新しい)わけでもない」と評している。

 モスバーグ氏はMoto Xの長所として、

  1. Touchless Control("OK, Google Now"と話し掛けて操作するもの)
  2. Active Display(ポケットから取り出したり、伏せておいた本体をひっくり返して画面を上にするだけレジュームする機能)
  3. Qucik Access to Camera(本体を持って数回ひねるような動作でカメラ機能が起動するもの。ただし「うまくいかないこともあった」「使いこなせるまでに若干慣れが必要かも」とも述べている)
  4. Customization(本体カラーや壁紙を指定できるもの)

を挙げている。また短所についても

  1. 音声コマンドの聞き取り能力がまだそれほど優秀ではない(特に固有名詞などで)
  2. もっと安いモトローラ製品にも同じ機能が搭載されたものがある

の2つを挙げている。

 また同じベテラン勢(年配の評者)では、Bloombergのリック・ジャロスロフスキー氏が「スペックよりも使い勝手を重視する人にとっては、全体として手堅い選択肢」、またNYTimesに連載を持つデビッド・ポーグ氏が「モトローラがアピールする5つの新機軸(注)は残念ながら、地を揺るがすようなものではない。確かによくできた製品だが、競合する各社の最上位機種と比べるといささか分が悪い」と記している。いずれのレビューも動画付きなので気になる方は、ぜひ観ていただきたい。

注:ポーグ氏の挙げる5つの新機軸は、本体内外のカスタマイズ、米国内での組み立て、Touchless Control、Actvie Display、それに捻るとカメラが起動する点


「アシスト」機能の気配り度、カメラのイマイチさ加減

 その一方で、若手の中では、The Verge編集長のジョシュア・トポルスキー氏が、「Motorola Assist機能のためだけでもMoto Xを手に入れる価値がある」と高く評価している点が目を引く。Assistは、例えば、自動車運転中やミーティング中に余計な情報をシャットアウトしてくれるもので、前者については、内蔵センサで感知して、また後者についてはスケジュール情報に基づいて、いずれも自動で動作する、と説明がある。また、「Active Notificationは、通知機能のお手本のようにできがいい」「Touchless Controlの感度も上々」としつつ、いずれもまだ改善の余地が残っているとしている。その他、バッテリ駆動時間の長さ、ハードウェアの素材の質感やしっかりした作りも評価する一方、AMOLED液晶の色味やカメラの性能には若干難ありとしている。

 カメラの性能(画質や反応)については、「Android大好き」を自認するGigaOMのケビン・トフェル氏も指摘している(カメラを起動するためのセンサに、当てにならない部分が残っている、とある)。ただし、全体としては「フラッグシップ機」らしいエクスペリエンス(使い勝手)を提供するものとし、「特にハードウェアとソフトウェアの連携具合がいい」と好印象だ。また、競争相手はGALAXY S4やHTC Oneではなく、やはりiPhone 5と述べる。

 今年の春〜初夏辺りから、少なくとも米国では「上位価格帯のスマートフォンの売れ行きが伸び悩んでいる」というニュースが目立っている。あれほど鳴り物入りで発表・投入されたGALAXY S4の売れ行きが期待外れだとか、iPhoneでも旧機種ばかりが売れている、といった類いの話である。

 この停滞の大きな理由の1つは、いうまでもなく業界全体で新しい方向性を見付けづらくなっていること。「iPhoneキラーを作り出すことがますます難しくなっている。米アップルにとってさえ、それは例外ではない」というデビッド・ポーグ氏の指摘は、そんな状況をよくいい表している。米グーグル傘下となったモトローラが新機軸を盛り込んで投入した「Moto X」に対する市場の反応が、よくも悪くも全体の今後の流れに影響を与える可能性が高そうだ。

【参照情報】

三国大洋 プロフィール

オンラインニュース編集者。「広く、浅く」をモットーに、シリコンバレー、ハリウッド、ニューヨーク、ワシントンなどの話題を中心に世界のニュースをチェック。「三国大洋のメモ」(ZDNet)「世界エンタメ経済学」(マイナビニュース)のコラムも連載中。


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