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分散ストレージのBashoが日本法人設立で提携業務を本格化

IDCF、RiakでAmazon S3型ストレージ提供へ

2012/09/27

 Amazon Dynamoに影響を受けたオープンソースの分散データベース「Riak」を開発する米バショー・テクノロジーズは2012年9月27日、日本法人としてバショー・ジャパンを設立したと発表した。バショーと、資本を含む提携関係にあるIDCフロンティアは同日、都内でセミナーを開催。IDCフロンティアの顧客やメディアを招いて、Riakという技術コアを中心としたバショーのソリューションと、Riakを使ったIDCフロンティアの今後のサービス展開について説明した。

photo01.jpg 日本法人設立を発表したバショー・ジャパンの創業メンバーと、米バショー幹部ら。バショー・ジャパンの代表取締役社長には高木修氏が就任。
basho-web.png バショーは日本語による情報提供も開始

高機能な分散ストレージ「Riak」

 Riakは、多数のノードで巨大なストレージ空間を実現できる分散KVSの1種だ。Erlangベースで開発されているコア部分はオープンソースで公開されている。コンシステント・ハッシングを使った160ビットの鍵空間を持ち、RESTfulなAPI、Protocol Buffer、またはErlanネイティブのAPIが用意されている。RESTfulなAPIはAmazon S3互換であるため、既存のS3バインディングライブラリが用意されているほとんどの開発言語が利用できるという。Riakはバックエンドのストレージとして、生のファイルシステムやメモリも使えるが、標準ではErlangベースのBitcask、グーグルが開発したC++ベースのLevelDBなどが使える。

concept.png Riakのクラスタリング概念図。全体がパーティションに分けられ、ノードに分散される。

 Riakの特徴はマスターノードが存在せず、全てのノードが対等である点だ。いわゆるSPOF(Single Point of Failure)が存在しない。ライト時のレプリカ数やリード時の読み込み対象ノード数の設定によるが、複数のノードがダウンしても読み込みが継続できるという耐障害性を持つ。複数クライアントから複数ノードへの書き込みができるため、書き込みデータにコンフリクトが発生する可能性がある。Riakでは、書き込みデータの順序決定やコンフリクトの検知には、ベクタークロックという仕組みを採用している。

 RiakはKVSの1種だが、オブジェクトを「バケット」というグループ単位で扱うことができる。また、RDBMSでいう外部キーのような「リンク」という参照をオブジェクトに持たせることで、単なるキー・バリュー以上の高度なクエリを扱うことができるのも特徴だ。また、バケットを指定してインデックスを作成しておくことで全文検索のクエリを使ってデータを読み込むことも可能だ。リアルタイム性が必要でないバッチ処理には、MapReduceのAPIも用意されていて、JavaScriptまたはErlangを使ってMapperやReducerを書くことができる。

日本国内の3拠点を高速に結んでAmazon S3に対抗

 バショーは、Riakのコア技術を使って、監視・サポートを提供する「Riak Enterprise DS」、Amazon S3のようなマルチテナントのクラウド・ストレージを実現する「Riak CS」を提供している。Riak Enterprise DSは、データセンター間のレプリケーションにも対応する。Riak CSはベースにEnterprise DSのノードを利用している。

products.png Riakはオープンソースのフリー版のほかに、エンタープライズ版とクラウド市場向けの3つがある
cs.png Riak CSはRiak Enterprise DSをノードに利用してREST APIを提供する
ceo.jpg 米バショー・テクノロジーズCEOのドン・リパート氏(Don Rippert)

 Riakの利用例としては、2012年6月にマイクロソフトに買収されたエンタープライズ向けTwitterともいうべき「Yammar」や、モバイル端末のデータ転送サービスを開発するベンチャーの「Bump」、開発向けサービスの「GitHub」などの採用実績があるほか、Riak Enterprise DSおよびRiak CSは、Fortune50企業を含むエンタープライズ市場で広く使われているという。

 米バショーCEOのドン・リパート氏(Don Rippert)によれば、米保険大手や、小売大手のBEST BUY、デンマークの医療サービスなどでの利用例もあるという。例えばデンマークの例だと、550万人のデンマーク人の処方箋関連データを保存。Oracleのソリューションに比べて95%安く、MySQLよりも4倍のパフォーマンスが出ているという。一般にクラウド・ストレージといえば保存先として捉えられることが多いが、Riakはパフォーマンスが十分に高いため、写真や映像などの配信元としてモバイル向けグループチャットの「Voxer」といった利用例もあるという。Voxerでは1日に5TBもの勢いでデータが増えているという。

日本国内の3拠点を高速に結んでAmazon S3に対抗

 IDCフロンティアは、同社の複数のデータセンターにBashoのクラウド・ストレージ製品「Riak CS」を採用し、分散ストレージ・サービスを開始する。10月30日に2つのデータセンターで、12月3日には3つのデータセンターを結んでのベータサービスをそれぞれ開始予定だ。S3型クラウドストレージだけでなく、KVSとしての「Riak Enterprise DS」のサービス化も予定しているという。

 同社はこれまで東京・大阪の都市部データセンターに加えて、北九州に大規模データセンターを開設。来月には、建設中だった福島県白河市に新規データセンターが竣工予定だ。東京ー白河(3.5ms)、東京ー北九州(15ms)と低遅延で結んだ3拠点にデータを分散することで、DRやBCPといったことを考えなくて良いようにしていきたいという。サービスの価格体系については現時点でアナウンスされていないが、「S3と比べても、魅力ある価格を提案する」(IDCフロンティア 代表取締役社長 真藤豊氏)としている。

※記事初出時、分散ストレージ・サービスのベータ開始を10月5日としていましたが、正しくは10月30日です。訂正してお詫び申し上げます。

latency.png IDCフロンティアが示した各デンターセンター拠点間の遅延

(@IT 西村賢)

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