ホンダの250ccクラスが製造中止
二輪ディーラー最大手、桜井ホンダのスタッフはボヤく。
「売るものがない! どうしてくれるんだ!」
このスタッフの怒りは、メーカーであるホンダ(本田技研工業)に向けられたものだ。ホンダは、この8月31日(6月末日までのディーラーからの注文分)をもって、一部をのぞき250CCクラスの現行車種を生産中止する。これは、国土交通省が定める二輪車排出ガス基準強化を受けたものだ。
「この規制によって販売できなくなることは、2005年からわかっていたこと。新型車の開発をすすめなかったために、販売店が苦しめられている」
と桜井本田のスタッフは言う。
また、この時期の、このクラスの販売中止に問題があるという。
「250CCクラスは、初心者のためのエントリーモデルに最適なクラスなのです。夏休みに免許を取得したひとが、ホンダ車に選べるモデルがないのは大問題。最初に買ったメーカーに、ずっと乗り続けるとすると、この先数年は、ホンダの販売店にとって暗い状況。売れスジのひとつであるこのクラスのスクーターが、販売できないのは痛い」
ほかの販売店は、かなり深刻になっている様子だとか。
「このところ店にかかってくる電話のほとんどは同業者からで、売るバイクやスクーターがないから、在庫があるなら、うちに売ってくれないか? というものばかりで、なかには、数件電話をしたという小さな販売店もあるようです」
ホンダの広報に聞いた。
「多くの販売店に、ご迷惑をおかけしていることは耳に入っています。販売しなくなったのではなく、排ガス規制によって販売できなくなったとご理解いただきたいです」
どうやらメーカーが新型車を開発しなかったのは、国内における二輪車の需要減が、おもな要因であるようだ。新型車の開発、生産、販売は、最大限効率的に行わなければ赤字になってしまうほど、国内の二輪需要は冷えているのだ。
そして、これらを最大限に発揮し、広告、宣伝、パブリシティなどの高価を最大限に生かすためには、10月に行われる「東京モーターショー」で新製品を発表、即時発売が有効だという判断のようだ。
「私の口から、新型車の発売時期は名言することはできませんが、モーターショーには、ご期待いただきたいと思います」
輸入大型バイク(ハーレー・ディヴィトソン、BMW、ドッカティなど1000CCクラスが人気)の台頭、ヤマハ、スズキカワサキといったライバルのなか、250CCクラスの販売中止という、ホンダの決断は正しかったのか、疑問が残る。