元公明党委員長・矢野絢也氏が会見
6月25日、元公明党委員長・矢野絢也氏が東京・有楽町の日本外国特派員協会で会見を行い、5月12日に創価学会と同会幹部7人に対して民事訴訟を提起した経緯について説明した。
矢野氏は、30年分の政治活動を記録した手帳を元公明党幹部から奪われたと証言した『週刊現代』の記事に関して、記事で名指しされた元公明党議員から提訴されており、一審で敗訴後、現在も東京高裁で争っている。
「私怨ではなく公憤」
矢野氏は会見で、創価学会関係者から政治評論家活動の中止や多額の寄付を強要され、創価学会機関紙『聖教新聞』などで誹謗中傷されたと主張。さらに家族が「正体不明」のグループから尾行などを受けたとした。
また、類似の行為が元公明党委員長・竹入義勝氏に対しても行われており、創価学会が信者から多額の寄付を半ば強制的に集めているという話を「数多く聞いています」として、これらに関して「私怨ではなく公憤を強く感じています」と語った。
5月1日には、家族7人全員が創価学会に退会届を提出したという。
矢野氏によれば、ことの発端は15年前の『文藝春秋』に寄せた手記。ここに「学会と公明党は政教一致といわれても仕方がない部分があった」との記述があったために、05年になって『聖教新聞』上で批判された。それ以降、“身元不明の多数グループ”による自宅への監視、イヤガラセ電話、訪問、尾行が行われるようになり、いまだに続いているという。
さらに学会幹部などから「査問会同然の吊るし上げ」によって評論家活動の停止を強要されたほか、30年にわたる手帳などの資料を引き渡すよう「威圧を加えながら要求があり」、資料を持ち去られた。これが矢野氏の主張だ。
録音データは改ざんされている?
矢野氏は05年、手帳を奪われた件を報じた『週刊現代』の記事が元で、発行元の講談社と同誌編集長とともに、記事で名指しされた元公明党議員の伏木和雄氏・大川清幸氏・黒柳明氏の3氏から提訴される。
07年12月、東京地裁が「(矢野氏は)自らの判断により手帳を原告らに預けることを決断した」とし、矢野氏と講談社に計660万円の支払いを命じる判決を下したが、矢野氏側は控訴中だ。
この訴訟では、手帳が奪われたとされる当日、矢野氏が公明党OB議員らと友好的に会話をしている様子を録音したデータが、原告側から提出された。この日の会見で矢野氏は、この録音データについても言及した。
「このテープを聞くと、(OB議員らの)『あなたの身の安全は保障されない』などの脅かしの発言はきれいに削除されている。(レコーダーの製造元である)ソニーによると『編集、改編、削除、入れ替えは自由自在。削除してもその痕跡が残らないのが売りのレコーダー』とのこと。オリジナルのデータを出せと言っても、先方は『出せない』と言う」(矢野氏)
創価学会は「ますますエスカレート」
矢野氏は会見で、創価学会の行為を「人権蹂躙(じゅうりん)」「反社会的」と非難した。
報道陣との質疑では、「『(公明党議員時代に)やりすぎた』とは、どういう意味か」との問いに、具体例は示さないものの
「謀略的なことではなく、問題解決のためにいかに行政機関や政党にはたらきかけるかということが中心。ちょっとやりすぎた。ちょっとどころか、だいぶやりすぎた」
とした。
「それを教訓に(学会の)運営が改善されれば、それはそれで意味があったが、私は厄介なことを解決する便利屋に過ぎなかったのかもしれない。もう一度教訓にしてもらう必要がある。創価学会の暗い部分を客観的に世間に知っていただいて、学会に改めてもらえれば、これに過ぎる喜びはない」(矢野氏)
しかし、創価学会はこれまでも、部外者どころか「元関係者」からも批判されている教団だ。
会見後の矢野氏に、これまでのところ学会改善の手ごたえを感じているのか尋ねると、こんな答え。
「そういう感じは全然ありません。ますますエスカレートしています」(矢野氏)
矢野氏が訴訟に勝つだけでは、やはり創価学会は変わらないのだろうか。