まず「LINE」の全容を把握する前提として、登録時にどのような情報を入力するのか、また設定においてどのような形で自分が保持しているデータをLINEのサーバに預けることになるのかを見ておく。
LINEの利用登録画面は、以下のような画面から始まる。国、キャリア、電話番号を入力し、これで番号認証のボタンを押すと、登録電話番号宛にSMSが送られてくる。SMSには認証番号が書かれており、それをLINEアプリに入力することで、電話番号の確認を行なっている。
ただ電話番号の登録は必須ではなく、電話番号欄を空欄にして「いまは登録しない」を選んで登録することもできる。これはiOS版では可能だが、Android版では電話番号の登録は必須のようだ。ということは、3G回線の電話番号を持たないAndroidタブレットなどでは利用できないが、iPod touchではLINEの利用は可能だということである。
登録プロセスの途中で、アドレス帳を利用するかどうかの選択肢が出る。これは説明文にも書かれているように、電話機内のアドレス帳データをLINEのサーバに上げるかどうかの選択だ。これも、「今は利用しない」を選ぶと、アドレス帳のアップロードなしに登録を行なう事ができる。
続いて「名前」の登録となる。ここでは、「友だちがあなたとわかるように名前と写真を登録して下さい。」と書かれているので、多くの人は本名か、あるいはリアル社会で通用しているニックネームなどを入力することだろう。今初めて思いついた名前を入力したら、誰だか分からなくなってしまうと考えるはずだ。
注意すべきは、この画面で入力する「名前」は、あとで変更ができないことだ。LINEの使い方を指南しているブログなどでは、「この名前はあとから変更できる」と書いてあるところが多いが、それはここの「名前」と、プロフィール欄で設定できる「名前」は同じだと錯誤しているからである。
ややこしいので、ユーザー登録時にあなたが入力する名前を「名前A」、誰かのアドレス帳にあなたの名前として登録されているものを「名前B」、あなたがLINEユーザーになったのち、プロフィールのところで設定できる名前を「名前C」としておく。
多くの人が勘違いする原因は、デフォルトで名前Cの欄には、名前Aとして入力されたものが自動的に入っているからだ。名前Cは書き換え可能だが、名前AはそのままLINEのサーバ内に残る。
誰かのLINEに表示されるあなたの名前は、3段階があるようだ。優先的に表示されるのは、プロフィール欄で設定できる「名前C」で、LINEの友だち同士ではここの名前が表示される。
プロフィール欄の「名前C」が何らかの事情で取得できなかった場合は、アドレス帳に登録している「名前B」が表示される。さらにそのデータも取得できない場合、例えばPC版のLINEクライアントを使っている場合には、ユーザー登録時に入力した「名前A」が使用される。
この複雑な名前システムだけでも、何かと不都合が出ることは容易に想像できる。おそらくユーザー登録時には、LINEの仕組みがまだよく分かっていないので、表示される説明から類推し、多くの人は名前Aに本名をフルネームで登録することだろう。
しかし、本名を伝えずに、適当な遊び相手としてニックネームや、LINE IDを使って友だちになった相手もいるかもしれない。若い女の子にはありがちだ。だがいったんLINEで友だち同士になってしまえば、PC版クライアントを使うことで、その子の本名が分かることになる。
本名が知られたからなんだ、ということもあるかもしれない。友だちなんだから本名を知っていて当たり前、と考える人もあるだろう。LINEの設計者もそのようだ。
普段私たちが気軽に「知り合い」程度の意味で使っている「友だち」という関係は、LINEでは想像以上に重いということがあまり知られていないために、色々と面倒なことが起こるわけだ。本名を隠しておきたい相手と「友だち」になるなんてあり得ない、と真っ正面から言われてしまうと、そりゃそうだけど、と言葉に詰まってしまう部分もあるのではないだろうか。
1回目でも述べたが、LINEではアドレス帳データを付き合わせることで、人間関係を簡単にLINE上で再構築できるのがポイントではあるが、大人のアドレス帳の中には、友だちとは呼べない関係のデータも沢山入っている。うっかり友だち自動追加機能を使うと、妙なことに巻き込まれる可能性が高い。
さらに状況を悪くしがちなのは、LINEでいったん友だちになった相手とは、友だちの解除ができない。「LINEを使ってるかどうか分からない」という関係には戻れないのである。ブロックはできるが、こちらがLINEを使っているということは相手には分かってしまう。一方的に相手がこちらを友だち認定している状況が続くと、何かと不都合も出てくる。
この連載はだいたい1つのテーマを2回に分けてお送りしているが、LINEに関しては、さらに研究を進めていく予定だ。しばらくはこのお話にお付き合い願いたい。
映像系エンジニア/アナリスト。テレビ番組の編集者としてバラエティ、報道、コマーシャルなどを手がけたのち、CGアーティストとして独立。そのユニークな文章と鋭いツッコミが人気を博し、さまざまな媒体で執筆活動を行っている。最新著作は、ITmedia Mobileでの連載「ケータイの力学」と、「もっとグッドタイムス」掲載のインタビュー記事を再構成して加筆・修正を行ない、注釈・資料を追加した「子供がケータイを持ってはいけないか?」(ポット出版)(amazon.co.jpで購入)。
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