Qualcommが、3月22日に中国・北京で「Snapdragon 835 Benchmarking Workshop Beijing」を開催した。Benchmarking Workshopは、Qualcommが定期的に開催しているイベントで、その時点で最新となるモバイルプロセッサのベンチマークテストを行ったり、新プロセッサがもたらす機能のデモを体験したりできる。
まずはSnapdragon 835についておさらいしておこう。835は、現在提供されているSnapdragon 820シリーズに続く、ハイエンドのプロセッサ。モバイル向けプロセッサとしては初めて10nm FinFETプロセスで製造されており、820と比べてパッケージサイズが35%小型化した。
CPUはQualcommが開発した「Kryo 280」を搭載しており、最大2.45GHz駆動のパフォーマンスコア(4コア)と最大1.9GHz駆動の高効率コア(4コア)で構成される。アプリの起動やWebブラウジング、VRアプリの利用といった比較的高い負荷の求められるシーンではパフォーマンスコアを、負荷の少ないシーンでは高効率コアが使われる。
Snapdragon 820シリーズから25%の低消費電力を実現したほか、15分の充電で50%の充電が可能な急速充電の新規格「Quick Charge 4.0」にも対応する。
新しいLTEモデム「Snapdragon X16」を内蔵しており、20MHzの周波数帯を4つ束ねる「キャリアアグリゲーション」、基地局と端末側に4つのアンテナを搭載する「4×4 MIMO」、情報密度を高めて一度に転送できるデータ量を増やす「256QAM」をサポート。理論値で下り最大1Gbpsの通信に対応する(820は下り最大600Mbps)のが大きな特徴だ。
現在のモバイル市場を見ると、ハイエンドスマートフォンの多くが「Snapdragon 820」シリーズを搭載しており、その数は200機種を超える。ちなみにSnapdragon 835の前製品は「Snapdragon 821」で、“Snapdragon 830”という製品は存在しない。バージョンアップの幅が大きいと考えたのか、型番は830を越えて835となった。
Snapdragon 835を搭載したスマートフォンは、ソニーモバイルコミュニケーションズが「Xperia XZ Premium」を発表しており、2017年春以降の発売を予定している(恐らく日本でも発売されるだろう)。他にZTEやMotorolaも、Snapdragon 835を搭載し、理論値で下り最大1Gbpsの通信を実現するスマートフォンの投入を予定しているが、具体的な製品が判明しているのは現時点でXperia XZ Premiumのみ。また、Snapdragon 835はVR/ARデバイスへの搭載も見込んでいる。
イベントでは、Snapdragon 835を搭載したQualcommのレファレンス機にインストールされたベンチマークアプリを試せた。今回試したのは「AnTuTu Benchmark v6.2.7」「3D Mark」「PCMark」「Geekbench 4」「GFXBench GL」の5つ。比較対象として、「Snapdragon 820」を搭載した「Galaxy S7 edge SCV33」(Android 6.0)でも同じテストを実施した。なお、時間が限られていたため、テストは各アプリ1回しか行っていない。
まずはAnTuTu Benchmarkから。レファレンス機のスコアは184034で、93932のGalaxy S7 edgeとほぼ2倍の差をつけた。RAM(メモリの速度)の項目は大差なかったが、3D(3Dゲームの動作)、UX(データセキュリティ、画像処理、データの読み書きなど)、CPU(大容量アプリやマルチタスクなど)のスコアはレファレンス機が高得点だった。
ちなみにiPhone 7 PlusでもAnTuTu Benchmarkを走らせたところ、総合スコアは182893で、Snapdragon 835と互角。3DはSnapdragon 835の方が高いが、UX、CPU、RAMはiPhone 7 Plusの方が高かった。
3D Markは、本来なら最も高負荷の「Sling Shot Exream」を試したかったが、レファレンス機にインストールされていたものが「Sling Shot OpenGL ES 3.0」だったため、Galaxy S7 edgeでも同じテストを実行した。総合スコアはレファレンス機が4627、Galaxy S7 edgeが2756で、グラフィックとCPUのテストいずれも大きな差をつけた。
Geekbench 4のスコア(シングルコア/マルチコア)は、レファレンス機が2055/6495、Galaxy S7 edgeが1471/3823だった。
GFXBench GLでは、1080×1920ピクセルや1440×2560ピクセル(レファレンス機は1440×2392)の動画をひたすら描画していく。「高レベル」と「低レベル」のいずれのテストも、レファレンス機の方がGalaxy S7 edgeよりも描画数が多く、高いフレームレート(FPS)を記録した。例えば高レベルの動画では、Galaxy S7 edgeは7〜8FPSだったところ、レファレンス機は40〜43FPSと差をつけていた。
Snapdragon 820から大きく性能アップしていることが分かったSnapdragon 835。もちろん計測中にレファレンス機のボディーが熱くなることもなく、CPUの放熱対策も行われていることが分かる(放熱性能はボディーの構造やサイズにもよるが)。今回試したベンチマークテストはCPU、GPU、メモリの性能を測るもので、これでSnapdragon 835の全てが分かるわけではない。重要なのは、835でどんなモバイル体験ができるようになるかという点。ベンチマークテスト後にデモを体験してきたので、別途紹介する。
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