「新聞の作り手が『読まれている』と思っている記事と、ネットでページビューを稼ぐ記事は、かくも違うのか」――産経新聞社のデジタル部門を分社化した産経デジタルの阿部雅美社長は、ネット記事の読まれ方に驚いたと語る。
産経デジタルは、昨年11月に設立した新会社。「Sankei Web」「ZAKZAK」「SANSPO.COM」「フジサンケイ・ビジネスアイ」のサイトや、記事ごとにトラックバックを受け付ける新コンセプトのニュースサイト「iza!」を運営している。
これらのサイトでよく読まれる記事は、産経新聞の“常識”とはかけ離れていた――産経新聞東京本社の社会部長などを歴任した阿部社長は、このほど都内で開いた説明会でこう明かした。
「私がやってきたような(堅い)記事が読まれるだろうと思っていたのだが、実際に読まれるのは柔らかめの記事や、ちょっとした話題。IT関係もよく読まれており、トラックバックが多く付く。いわゆる“産経っぽいコラム”はあまり読まれない」
この結果は「新聞を作っている側からするとショック」で、産経新聞社内でこの結果を示した時は「みんな驚いた」という。だが「ネットで読まれる記事ばかりを集めて新聞にしても売れない」とも語り、新聞に期待されるパッケージング――記事の選び方や並べ方――と、ネットに期待されるパッケージングは異なるという考えだ。
新サイト「iza!」は、ネットのパッケージングに特化した作り。ネットユーザーに受ける記事や、トラックバックしたいと思ってもらえる記事を前面に押し出して掲載していく。
iza!は、各記事に自由にトラックバックが打てるほか、サイト内にブログスペースを設置。メールアドレスさえ登録すれば、ユーザーは無料でブログを開設できる。
「ユーザーのプロファイルをきちんと取ったり、内容を事前にチェックしておかないと、ブログに不適切な内容が書かれたり“炎上”してしまう危険性があるのでは」――説明会ではこんな質問が相次いだ。
阿部社長は「ブログサービスは、炎上や訴訟などいろいろな問題に見舞われており、それらを精査した上で対応ルールを決めた」という。具体的には「ブログやトラックバックの事前検閲は行わない。問題が起きた場合は事後に対処する」としている。オープンから半月経ったが、ブログの炎上など問題は起きていないという。
サイト上では、産経新聞社の記者62人がブログを公開している。「記者個人がブログを書くことは、チームの力で正確な記事を書く、という新聞の強みを捨てることになるのでは」という質問が出たが、阿部社長は「記者個人も、コンテンツとして成り立ちうると思っている。それだけの物を書けないと、記者はこれからやっていけないだろう」と語った。
産経デジタルの主な事業は、「Sankei Web」「iza!」などWebの無料媒体の運営や、携帯サイトの運営、コンテンツの有料販売など。収益は広告と携帯サイトの利用料で得ており、iza!など新事業への投資分を除けば黒字というが、「いつまでも広告頼みでいられない。別の収益源を模索したい」としている。
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