ブログやSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)など、ユーザーが情報発信するCGM(Consumer Generated Media)を、商品やサービスのマーケティングに活用しようとする企業が増えてきています。各企業は、CGMで発信される口コミが購買行動に与える影響が見逃せない威力をもっていると気付き始めたのでしょう。
CGMで発信される情報は、個人の体験や発見に基づいたものです。Amazonのレビューのように、ユーザーが商品に対して投票し、感想を書くなどしたできたCGMは、特定の発信者の意図が顕著には現れない、公平で信頼できるメディアであると言えるでしょう。私はこのようなメディアを「体験共有型メディア」と呼んでいます(関連記事参照)。
オプトとクロス・マーケティングが行った調査によると、「ブログやSNSの書き込みに内容に信頼性があると思うか」という問いに対して、ブログで83.7%、SNSで89.4%が「あると思う」と回答しました(調査結果PDF)。
ブログに信頼性があると思う根拠としては、55.4%が「知り合いが書いているから」と答えています。知り合いのレベルにはさまざまあると思いますが、ブログから発信される「体験共有」を取り入れ、影響を受けている人が多いことが分かります。
Amazonは、ECとCGMプラットフォームの側面を持った機能をもつことによってこの特性を利用し、売り上げをもっとも伸ばしている企業なのではないかと思います。
ブログやSNSなど、消費者間で双方向に配信されるCGMを「Web2.0型メディア」、テレビや新聞など、運営者から消費者へ一方的に配信されるメディアを1.0型メディアと呼ぶことがあります(関連記事参照)。
Web2.0型メディアと1.0型メディアの決定的な違いは、Web2.0型メディアは批判的な意見を排除することができないということです。Web2.0型メディアのお金を払って広告を出稿したとしても、商品やサービスが100%肯定される世界はではないのです。
例えば、1.0型メディアであるテレビで出演者がスポンサー(広告主)の悪口を言えば、出演者が交代させられるぐらいの大問題になるかもしれません。1.0型メディアでのマーケティング活動は、スポンサーに対する批判的な意見がない状態であるといえます。
しかし、Web2.0型メディアでは、企業からだけでなく、ユーザーからも情報発信されるため、スポンサーのサービスや商品、あるいはスポンサー企業そのものに対してまで、肯定的な意見だけでなく、批判的な意見が発信される可能性があります。それは、従来のマーケティング担当者があまり経験したことがない世界でしょう。
Web2.0型メディアを利用したマーケティングで、批判的な意見を100%排除することは難しいでしょう。批判的な意見はすぐに削除するなどして強引に排除し、100%肯定的な内容にしたとしても、それは嘘臭く、信用されないメディアとなってしまうでしょう。
もし批判的な意見を一切受け入れたくないと考えるならば、CGMをマーケティングに利用することは、やめたほうがいいと言えます。どんなことでも、すべての人が賛成することはないからです。
私もライブドアで、CGMを利用したマーケティングをいくつも見てきましたが、そこでは現実の世界と同じように、肯定的な意見がある中で、批判的な意見も存在します。しかしその方が消費者はリアリティーを感じ、それぞれの意見を自分なりに解釈し、対象となる商品やサービスの価値を自分で判断します。
その結果、良いと判断されたものは、従来からある1.0型メディアの一方的な宣伝文句によって得たロイヤリティーよりも、更に高いロイヤリティーを持ってもらえる可能性があります。つまり、CGMの世界では、少しの批判が逆に消費者から信頼を高める重要な要素であるということです。
マーケティングの世界では「2:8の法則」などと言われる理論がありますが、CGMを利用したマーケティングにおいても、批判的な意見が2に対して肯定の意見が8程度のバランスの方が、むしろ消費者のロイヤリティーを向上させる、という「CGMにおける2:8の法則」が存在するかもしれません。
企業の代表や責任者(店長や担当者)がブログを運営し、日々の活動を発信することで、消費者に親近感を持ってもらうとともに、自社のサービスや商品をPRします。社長が自らブログを書いて会社のPRやIRに貢献する、いわゆる社長ブログも、最近はよく見受けられるようになりました。
トラックバックは、他人のブログの記事へ、自身のブログのリンクを張る機能です。トラックバックされると同時にリンクが貼られる(相互リンクとなる)ことが多く、トラックバックの数だけ広告掲載されているのと同じような効果が期待できます。
例えば、自身のブログに20個のトラックバックが入っていたならば、20個のサイトでそのブログの紹介文とリンクが掲載されていると考えられ、それをたどって、自身のブログにより多くの人が訪れると期待できます。
また、多くのサイトからリンクされることで、Googleのページランク(検索結果の上位に表示するための1つの指標)が上昇し、検索結果画面の上位に表示されることにより、Googleからのアクセス数が増えることが期待できます。
この特性を狙い、トラックバックを集めるためのキャンペーンを行う例もあります。例えば、プレゼントキャンペーンを行う際に、特定のブログへトラックバックすることで応募とたこととします。これにより大量のトラックバックが集まったブログが誕生し、検索エンジンで上位に表示されたり、トラックバック先のブログにキャンペーンの紹介文を書いてもらうことで、口コミ的にキャンペーンの認知をしてもらうことができます。
企業の担当者が自社製品に関する記事をブログに投稿するなど、何らかアクションを起こした直後に、ブログのコメント欄や、トラックバックの先の記事を読むことで、消費者の声をリアルタイムに直接聞くことが出来ます。
個々の意見を参考にするだけでなく、全体を1つの意見ととらえることで、雰囲気(場の空気)を感じることもできます。
ほとんどのブログサービスには、記事が更新されるとRSSフィードする機能が付いています。RSSフィードすれば、ブログをRSSリーダーに登録しているユーザーに向けて、電子メールのようにプッシュ型の情報配信ができます。また、RSSリーダーのユーザーは、ブログをいちいち巡回しなくても、更新情報を得ることができます。この結果、「見せたい人」と「見たい人」のつながりを強くすることが期待できます。
次世代ブラウザ「Internet Explorer 7」にはRSSフィードを読み込む機能が搭載されます。これにより、RSSフォードはさらに利用される可能性があり、RSSを利用したマーケティングの重要性は増すことが予想されます。
――ブログは、HTMLの知識がなくてもWebサイトを作成できるCMS(コンテンツマネジメントシステム)としての特性だけでなく、コメントやトラックバックにより、リアルタイムに直接ユーザーの声を聞くことができる仕組みや、リンクを増やしてページランクを上げる仕組み、RSSフィードにより、更新情報をより多くの人に伝える仕組みがあります。
企業サイトを作成する場合、あまりコストをかけることができないなら、Webサイトを作るよりはブログを立ち上げた方がより効果的なマーケティングができると言えるでしょう。
ブログパーツとは、ユーザーがブログに貼り付けるアクセサリーのようなもので、さまざまなデザイン・機能があります。ユーザーはパーツを張ることで、ブログの見た目を良くすることもできますし、何らかの報酬がもらえることもあります。アフィリエイトバナーに近いものではありますが、張ることで報酬を得ようとするのではなく、そのブログの魅力をアップすることを目的としている点が異なります。
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