携帯電話のネットサービスへの注目が急速に高まっている。3G携帯が普及して通信速度が向上し、「モバゲータウン」など携帯向けSNSユーザーも急増中。PC向けネットサービス各社も、携帯対応に注力している。
ただ携帯ネットはこれまで、10代中心に盛り上がってきた世界。PCネットをヘビーに使う人ほど携帯ネットは使わない傾向にあり、20代以上のPCユーザーにとっては未知の部分も大きい。
月間120万人が利用する携帯検索ポータル「F★ROUTE」を展開するビットレイティングスの佐藤崇社長に、携帯ネットの特徴を聞いてみた。するとPCネット界の常識では考えられないような事実――「“つまんない”“ヒマ”が頻出検索ワード」「検索ボタンには『検索』ではなく『Go!』と書く」「逆ザヤ広告を出してでも、公式サイトの掲載順アップを狙う」「サービス名に“★”マークでアクセスアップ」「100万ユーザーまでは増えるが、それ以上が難しい」など――が飛び出した。
「検索ボタンに『検索』って書いたら、押してもらえないんですよ」と佐藤社長は笑う。シンプルに「検索」と書くより、「Go!」などと書いた方がクリックされやすくなるそうだ。F★ROUTEの検索ボタンは「検索」という文字の隣に、動きを強調するような絵文字を付けている。
検索ワードには「暇」「つまんない」など“感情語”を入れる人が多いという。「携帯ネットユーザーは、暇つぶしのために携帯ネットを使うことが多いことが原因では」と佐藤社長は分析する。確かに、携帯向けSNS「モバゲータウン」の新着日記にも「暇」という文字が頻出。暇つぶしで利用するユーザーは多そうだ。
検索窓にURLを直打ちする人も多いという。携帯ブラウザはURL入力欄が表示されないため、ユーザーは検索から目的のサイトにたどり着こうとするようだ。「CMなどでURLを告知してネットキャンペーンを展開する企業が増えており、検索窓にURLを直打ちするユーザーも増えている」
公式サイトのトラフィックは、公式メニューの上位に表示されるかどうかで大きく変わるため、各社はランクアップに知恵を絞る。佐藤社長によると「順位が1つ上がるとアクセスが3倍になる」という。
表示順は、クリックの多い順や登録ユーザーの多い順などキャリアによってさまざま。ランクアップを狙って逆ザヤ広告を出す業者が急増したことも、以前はあったという。月額315円の公式サイトの広告を出稿し、1000円や1500円の成果報酬を出すことで強引にユーザーを集め、公式サイトの掲載順を上げる、という手法だ。掲載順が上がればユーザーが集まり、広告費もペイするという計算だったようだ。
サイトの名称もクリック率を左右する。同社が検索サービス名を「F★ROUTE」にしたのは、キャッチーな文字列によるアクセスアップを狙ったためだ。「携帯サイトの公式メニューは、解説文なしでサイト名だけが列挙される。ここでいかに目立つかが勝負。“★”マークは目を引きやすい」。同社がサービスインして以降、サービス名に「★」を付ける企業が増えた、と佐藤社長は笑う。
ブランド力だけでアクセスを集めるのは難しいという。「ドワンゴやMUSIC.JPのように、テレビCMなどの効果でブランド認知が高いサービスでも、『dwango.jp [うた]』『MUSIC.JP 超高音質』など目を引くキーワードや解説を入れてクリックを誘おうと腐心している」。また「無料」という文字もクリックされやすいため、無料でなくても「無料」と書いてクリックを誘う業者も少なくないという。
ユーザーは、公式サイトへは公式メニューからアクセスするが、非公式サイト(勝手サイト)にはどのようにしてたどりついているのだろうか。佐藤社長によると、これまでの主な導線はランキングサイトや、友人紹介にインセンティブを支払うことによる口コミ、メールマガジンなど。最近は検索が伸びてきたという。
ランキングサイトはその名の通り、サービス分野別に人気サイトをランキング表示したもの。運営者がランキングサイトに登録し、ランキングサイト上でのクリック数などで順位が決まる仕組みだ。10代女性に人気の「AWALKER」が代表例で、同社も「F★ROUTEランキング」を運営している。
ただ、ここ最近はランキングサイトの人気は下火。検索サイトの利用が増えてきたためで、「携帯サイト運営者も、携帯SEO(検索エンジン最適化)に力を注ぎ始めている」という。
「ランキングサイトは、携帯で暇つぶしする若年層に人気。例えば人気ゲームの新作が発売されると攻略サイトが一斉にでき、攻略サイトをまとめたランキングサイトができたりする。だが、目的意識があって携帯を使うような大人は、ランキングサイトではなく検索を利用する」
「携帯ユーザーは煽ると検索する」と佐藤社長は言う。同社が発行しているメールマガジンに「○○を検索してみよう」と書くと、多くのユーザーが素直にそれを検索するのだという。
「例えば金曜日の午後7時ごろに『8時からのミュージックステーションに出演するアーティストを検索してみよう』と送ると、メールが届いた直後ではなく、その後の放映時中、8時から9時の間に検索される。歌番組はお気に入りのアーティストが出ていない間は暇だから、その間に検索しているようだ」
携帯検索は身近で手軽なので、タイムリーな話題さえ提供してやれば、ユーザーは気軽に検索してくれるようだ。
携帯サイトが最も利用されているのは、午後9時から午後12時の深夜の時間帯。「外出先で利用するより、家の中でテレビを見ながらとか、寝る前にベッドで利用している人が多いようだ」
PC向けWebは、首都圏のユーザーが圧倒的に多いが、携帯ユーザーは地方にも多く、地方のユーザーのほうがより活発に利用している傾向があるという。
「テレビの視聴率によく似た現象では。当社のサービスは、東北地方のユーザーがかなり多いという特徴的な偏差も出ている」
「携帯にはまだまだサービスが足りない。ちゃんとしたものを出せば、100万人までは簡単に増える」――PC向けネットサービスで100万ユーザーを獲得するのは難しいが、携帯ネットはまだまだ、需要が供給を上回っているようで、いいサービスを出せばユーザーは増えるようだ。
だが、100万ユーザー以上に成長するのが難しいという。「無料着メロサイトとして人気の『ゴルゴンゾーラ』も、100万ユーザーから増えも減りもしないと聞く」
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