自宅の売却も余儀なくされ、男は妻と別居することにした。だが一人暮らしを数カ月続けたころ、妻から食事の誘いのメールが届き、23年9月ごろから同居生活を再開。2人は事件現場となるマンションに引っ越した。
正月やゴールデンウイークは、妻がビデオ店で映画のDVDを10~20枚借り、鑑賞する日々が続いた。男は「勘弁してくれと思った。でも、けんかを避けたかったので口には出さなかった」と打ち明けた。
切れた「糸」
そして事件当日の昨年5月17日も、男は妻と映画のDVDを見てから寝た。だが欲情して目が覚める。隣で寝ている妻を誘ったが、妻は「手も洗っていないし、(アダルト)ビデオも見てないやんか」と拒んだ。
この一言が引き金となった。「また、そんなこと言ってと思って…。今まで我慢していたけれど、このときは、ずっと張り詰めた糸が切れた」。法廷で声を震わせ、当時を振り返った。
男は妻の体に馬乗りになり、両手で数分間にわたり首を絞めた。妻の胸に耳をあて、ゴクンと息が止まる音を聞いた。自分のしたことが怖くなった男は犯行の隠蔽を図った。
翌18日未明に遺体に布団を巻き、破れないよう布団袋を二重にして梱包(こんぽう)。遺体を車で勤務先の駐車場に運び、目撃されないよう警戒しながら穴を掘って埋めた。
遺体の腐敗により遺棄現場が沈下し発覚するのを防ぐため、セメントをまいて固めた。さらに妻の勤務先に電話し、「鬱病で出社できない」と伝えた。
不審に思った勤務先の関係者が大阪府警に通報。男は任意の事情聴取を受けた後に逃亡して九州や四国を転々とし、5月28日に徳島県で身柄を確保された。
「ばかだった」と謝罪
「妻は、これからしたいことがいっぱいあったと思う。その思いを一生忘れずに死ぬまで償いたい。遺族にはつらく悲しい思いをさせ、私はばかでした。すみませんでした」