宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、平成24年5月18日1時39分(日本時間)に種子島宇宙センターから打ち上げた第一期水循環変動観測衛星「しずく」(GCOM-W1)が、平成24年6月29日に実施した軌道制御の結果、A-Train軌道の所定の位置に投入されたことを確認しました。
「しずく」の投入位置は、Aqua※1の前方であり、今後参加するOCO-2※2が投入されるまでは、A-Trainの最前方となります。
アメリカ航空宇宙局(NASA)地球科学部長マイケル・フレリック氏より「JAXAが開発した「しずく」をA-Trainのメンバーとして、大歓迎いたします。A-Trainに参加している複数の衛星データの融合、共有により、大気科学の研究は著しく進歩しています。これにAMSR2(アムサー・ツー)のデータセットが加わることで、A-Trainの科学研究の可能性が大いに広がるでしょう。」と、歓迎のメッセージが届いています。
「しずく」は、この後、観測センサであるAMSR2を低速回転から定常観測を行う毎分40回転まで回転数をあげ、観測性能の確認を実施します。
(C)NASA
(A-Trainの概要)
A-Train(A-Train:The Afternoon Constellation)とは、高度約700km、昇交点通過地方平均太陽時13時30分付近を観測軌道とする複数衛星から構成されるNASA主導の地球観測衛星のコンステレーション(衛星群)です。各国の衛星が協力して地球全体を観測するシステムで、現在軌道上でA-Trainに参加している衛星は、Aqua(米NASA)、CloudSat(米NASA)、CALIPSO(米NASA/仏CNES)、Aura(米NASA)であり、日本から初めて「しずく」が参加します。
(A-Trainの特長)
地球観測では、いろいろなセンサで同時に同地点を観測することが非常に効果的です。複数の衛星がほぼ同一軌道に隊列を成して飛行することにより、複数の衛星で地球の同一地点をほぼ同じ時刻(約10分以内)に観測することができます。
各衛星の位置は厳密に管理されており、A-Train軌道に入るには、すでに入っている人工衛星を避けて、決められた位置に入る必要があります。「しずく」は、JAXAが培ったランデブーの技術を活かし、A-Train軌道に入りました。
人工衛星をこのようなコンステレーションに投入し、運用するのは、JAXAとして初めてのことです。
【参考】 ≪A-Train(衛星コンステレーション)参加衛星≫
- Aura NASA(米国) 2004年7月15日 打上げ
地球大気の組成、化学反応、ダイナミクスを解明するための観測データを取得する衛星
- CALIPSO NASA/CNES (米国/フランス)2006年4月28日 打上げ
エアロゾルや雲が地球の気候に与える影響を解明するための観測データを取得する光学ライダー衛星
- CloudSat NASA (米国)2006年4月28日 打上げ
雲が地球の気候に与える影響を解明するための観測データを取得する電波レーダ衛星
- ※1 Aqua NASA (米国)2002年5月4日 打上げ
ラテン語で水(アクア)を意味する。大気中及び海からの水蒸気、雲、降雨、海氷、土壌水分等の様々な地球の水循環に関する観測データを取得する衛星
- ※2 OCO-2 NASA(米国)大気中の二酸化炭素(CO2)量を観測