Exchange Serverのない環境でウェブを歩き回るとき、GmailGoogleカレンダーなどのオンライン・アプリを利用しますね。でも、OutlookユーザがGmailに乗り換えても安全なんでしょうか? そのあたりのことについてゲスト寄稿者J・ゴラルニック氏がレポートします。

Gmailがサービスを開始したのは2004年。以来、年々改良されています。でも、一番人気のメール・クライアントといえば、やはりなんと言ってもマイクロソフトOutlook(とExchangeの併用)でしょう。それではGmailOutlookを比較してみましょう。乗り換えどきかどうかが見えてくるかも、です。

なお、以下の比較は、マイクロソフトOffice Outlook 2007とマイクロソフトExchange Server 2003、そしてGoogle Apps(無料版)で行っています。

ふたつの製品には設定方法や使用手順などの点で大きな違いがありますね。以下で、私は両者を比較し、違いを際立たせながらレポートしていきます。そして、最後に全体を見渡しつつ、いくつかの推奨のポイントを総括してみました。

■検索■

Outlook 2007の検索機能はかなりよくなりましたね。以前のOutlookでは、検索にやたらと時間ばかりかかってましたが、Windows Desktop Searchが強化されてサクサク動くようになりました。

でも、Gmailはもっと全然速いです。Outlookでは、検索結果がハズレると設定画面に行ってもう一度やり直さなければならないというのも、イラっとしますね。

Outlookの強みは、添付ファイルの検索です。Googleだって、Google Desktop Searchを利用し、メーラーを別々に使用するのであれば(Outlookとか!)添付ファイルの検索をやれないこともありません。でも、ウェブ・インタフェースでGmailをふつうに使おうとすると、添付ファイルは検索できないのです。まぁ、添付ファイルの検索ができないといっても、Gmail検索は速いし正確ですからね、目くじらを立てるほどではないかもしれません。

●検索機能対決の軍配:

速くて安定した検索機能でGmailの勝ち。添付ファイル検索をもってしてもOutlookは一歩及ばず。

まだまだ始まったばかりの、徹底比較! 気になる勝負の行方は以下にて。

 ■フォルダ vs ラベル:メッセージの管理方法■

Gmailでは「ラベル」が使えるんですね。「ラベル」というのは、まぁタグですよ。「ラベル」の何がイカすかっていうと、ひとつのメッセージにいくつものラベルを貼りつけられるってこと(要は、別々のフォルダっぽく見える)。たとえば、あるメッセージが「家族」にも「仕事」にも関係あるとするじゃないですか。そしたら、両方のラベルをつけておけばいいのです。するとあ~らフシギ、このメールが「家族」ラベルにも「仕事」ラベルにもいてくれるわけなのです。ふつうの階層フォルダだと、整理するフォルダってひとつしか選べないですよね(コピーするという手もありますが...)。

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Outlookには分類というのがありました。ラベルと似てます。Outlook 2007からですが、色や名前をつけられる「分類」や「検索フォルダ」というのがあって、Gmailのラベルとほぼ同じ働きをしてくれます。これ、みんなあまり気づいてないみたい。目立たないんですね。いろいろ設定も必要ですし。でも、例の階層フォルダが不要になるわけではないんですね。メールを納めているフォルダと分類との連携が今ひとつかな。

表面上、ラベルは階層フォルダよりイカしてるように見えます。結局、今どきのウェブにはタグという発想のほうがハマルんでしょう。でも、ラベルにも問題はあります。

  • 「サブラベル」みたいなものがないので、階層フォルダみたいな感じでGmailを整理しようとすると「あらら、階層はないわけね」ってことになってしまう。
  • Gmailのウェブ・インタフェースには、ドラッグ&ドロップ機能がない(ラベルを移動させる必要がないから、ってことですかね)。
  • Gmailのラベルは、IMAP完全対応ではない。かなり対応はしてますけど、私みたいに同期でズッコケる人もいるでしょうね。
こんな問題もありますが、階層構造を避けたGoogleは賢かったのではないでしょうか。Gmailの検索は結構速いですから、メールを探しやすくするためにフォルダに整理しておく必要性は、それほどないってことでしょう。

Outlookにも一応ラベルっぽい機能もあることはあります。が、なじみにくいですね。フィルタ機能のほかにも整理するための機能があるんですが、ソフトフェアひとつにそんな膨大な時間と労力をかけてもいられないでしょう。Outolookを使うかぎりは、結局階層フォルダを使わなきゃならないのです。

●フォルダvsラベル 対決結果:

シンプルでフレキシブルな使い勝手で、Gmailの勝ち。

■ルールvsフィルタ メールの自動処理■

Gmailに比べるとOutlookには、メッセージの仕分け方法がたくさんある、というか、たくさんある印象です。以下の画像を見比べてください(上がGmail、下がOutlook)。

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一見するとOutlookにはたくさんのオプションが用意されているように見えますが、実際のところは、簡単に絞り込みができるGmailが優れてますね。それに、Gmailはフィルタの働き方を事前にテストすることだってできるのです。

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Outlookは右クリックして「ルールの作成」を選べば、迷わずに設定できます。関連する情報がパッと見渡せるようになっているところもなかなかです。でも、Gmailの設定やテストなんかに比べると、やっぱりまだまだ面倒なところがありますね。

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(注意:単体でOutlookを使用しているユーザはともかく、マイクロソフトのExchangeと合わせて使用しているユーザなら、ルールは便利に使えるかもしれませんね。でもGmailって、サーバ側で動作するツールですから、フィルタはどこでアクセスするかに関係なく働いてくれるわけです。マイクロソフトのExchangeを使用していないユーザがOutlookを起動させていないとすると、ルールって、当たり前ですけど、働いてくれないんですよ。外出先からメールをチェックするときなんかは、結構ストレスがたまります。)

またもや同じような特徴の違いが見えてきましたね。Gmailはすぐ設定できるし、テストも簡単。一方、Outlookは機能が豊富です。

クライアントや同僚たちと話していて感じるのですが、Gmailフィルタを使って膨大なメールを整理している人は大勢いますが、Outlookのルールを使いこなしている人というのはあまりいないのではないでしょうか。Outlookのルールというのは、ちょっとわずらわしいのかな、と思います。

●ルールとフィルタ対決の軍配:
シンプルで使いやすいインタフェースで、Googleの勝ち。

■連絡先■

連絡先は、メールソフトの大事な機能。GmailもOutlookもなかなかよくできています。大きな違いといえば、Gmailはメールを送ったりすると自動的に連絡先を作ってくれるのに対して、Outlookでは連絡先を自分の手作業で作らなければならないことです。

アドレス帳をもっていないし、これからもつ予定もないのでしたら、Gmailの連絡先は役に立ちます。わざわざ連絡先を立ち上げなくても使えてしまうのですから。要は、メールのやりとりをした後もずっとメール情報を覚えていてくれる、というわけです。

(実をいうとOutlookもメールした人のアドレスを記憶してくれます。でも、アドレスの保存先はハードディスクなんです(NK2ファイルと呼ばれてます)。これ、バックアップし忘れるんですよね。ワークステーションを取り替えたり、Windowsを再インストールしたときなんかに、保存したつもりになっていたメール情報が保存されてなかった、なんてことにもなるわけです。)

連絡先のニーズがメールアドレスだけということでしたら、GmailもOutlookも大差はありません。

でも、ニーズによっては、結構違ってきます。

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  • 最新のウェブ・アプリを使うケースでは、連絡先はだいたいGmailから直接インポートできます(Outlookの連絡先からインポートするより全然速い)。
  • お客様とのメールの履歴を見たいと思ったら、Gmailの「最近の会話」ビュー(右の画像の赤枠)で見られます。Outlookではやはり使えません。「履歴」がその役割を果たすのでしょうが、遅いし正確とはいえません。(マイクロソフトは、Business Contact ManagerかCRMを推奨していますね。どちらもお気楽なツールでは全然ありませんが、使いこなせれば相当にクールです。)
  • ワード上でメールマージをよく行うとか、Windows上で連絡先データに関する処理を行うのであれば、Outlookの連絡先が最善の選択になるでしょう。
  • モバイル・デバイスと同期をとる場合、Outlookは最善の選択です。USB経由でもネット経由でも、ほとんどすべてのPDA (BlackBerry, PalmOne, Windows Mobile, the iPhone, iPods, etc.)で動作しますから。
  • オフィスでExchangeを使用している場合は、連絡先が他の端末と共有できてとっても便利です。
  • 連絡先がたくさんある場合、Outlookには整理したり見渡したりする機能が山ほどあります。フォルダとかフラグとか分類とか「最近追加したアイテム」とか。それに、設定すれば、共有する連絡先と個人用の連絡先を分けることもできます。

ネットにつながっていて、メールのやりとり中心に一人で仕事をしている場合は、Gmailの連絡先がOutlookと同等かそれ以上の働きをしてくれるでしょう。これに対して、ビジネス志向の機能を多用する場合や細かい設定をしたいケースではOutlookが強いでしょう。

●連絡先対決の軍配:

引き分け。ビジネス環境では、Outlookが勝ちですかね。それ以外ではどっちもどっちでしょう。

■スパム・フィルタ■

Gmailのスパム・フィルタは最高レベルですが、Outlookではそうはいきません。そもそもビジネス環境では、Outlookのスパム・フィルタを初期設定のまま使ったりしません。これに対して、Gmailユーザはだいたい初期設定のまま使ってますね。

Gmailのスパム・フィルタで気になることがふたつほどあります。

  • あからさまなスパムメールでも徹底的にやっつけるのは、Gmailでも無理です。Postiniを購入すれば多少改善も見られるとは思います。でも、1日500件もあるスパムメールをサッと取り除くなんてそもそも無理な相談です。
  • 誤認(スパムじゃないのにスパムフォルダに入れられてしまう)もポツポツあります。スパムフォルダも見るようにしましょうね。

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Outookのスパム・フィルタは単体だとまるでダメ。端末にプログラムを入れるとか、GoogleのPostiniとかMX LogicのEmail Defense(私、これ使ってます)などのサーバ・ソリューションを組み込まないとダメです。信頼できるはずのメールがスパム扱いされてしまうこともあります(が、多少の誤認は仕方がないですね)。

インストールの必要がまったくないという意味では、Gmailの勝ちですね。ビジネスの場合や、ホスト側から更新データを受けとれるケースでは、商業ベースのアンチ・スパム・サービスがいいに決まってます(ちなみに、この手のアンチ・スパム・ソリューションは、GoogleアプリでもExchangeでも簡単に使えます。)

(注:上図のスパム件数はジョークです。悪しからず)

●スパム・フィルタ対決の軍配:

インストール不要でちゃんと仕事してくれるGmailの勝ち。

半分が終わったところで、Gmailの4勝1分け。Gmailが優勢のようですが、結果はどうなることやら。後編に続きます

Jared Goralnick(原文/訳:ココ・カチョル)

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