忙しくて瞑想なんてする時間がない? よくわかります。この現代において時間が余っている人などそうはいないでしょう。ですが、ライフハッカーでもお伝えしてきたように、瞑想は本当に多くの効用があるのです。気分をリフレッシュし、感性を高め、人をより賢く優しくし、情報過剰な現代社会にうまく対処するのを助けてくれます。
CEOたちを対象とした戦略アドバイザーで、著書『最高の人生と仕事をつかむ18分の法則』もあるピーター・ブレグマン(Peter Bregman)氏も「忙しいビジネスマンこそ瞑想すべし」と勧めるひとり。その理由を聞いてみましょう。
瞑想なんて、ビジネスに役立たないから意味がない? ならばこう言いましょう。瞑想はあなたの生産性をアップさせます。
どうやって? 「衝動を抑える能力」を高めることによって。■瞑想で得られるスキル
ある研究によると、衝動を抑える能力は、人間関係を良くし、信頼性を高め、パフォーマンスを向上させるそうです。衝動を抑えられれば、より適切で思慮深い意思決定が行えます。自分が何を話しているか、どのように話しているかについて意識的になれます。自分の行動がどんな結果につながるかを前もって考えられるようになります。
衝動を抑える能力は、古い習慣を変え、新しい行動様式を学ぶ際にも重要です。個人の成長にとって最も重要なスキルと言ってもいいでしょう。瞑想が教えてくれることのひとつは、この「衝動への抵抗」です。 ■すべきでないことをしてしまう方が問題私は今朝、いつものように瞑想を始めました。吐く息とともに体をリラックスさせ、心配事を一つひとつ手放していきました。さっきまで悩みごとでいっぱいだった心は完全に空っぽになりました。ただ呼吸だけが続いていきます。体は喜びにあふれ、心は平和で満たされていました。
4秒くらいの間は...。
実際のところ、呼吸を2回するころにはさまざまな思考が押し寄せてきました。顔がかゆくてかきたくなります。次に書くべき本のタイトルが突然ひらめき、忘れないうちにメモしたくなります。しなければならない電話が4件ほどあったことを思い出します。夕方に予定している「難しいミーティング」のことが気になりだします。今日は執筆の時間が2〜3時間しかとれないことに気づいて不安になりました...こんなところに座り込んで一体何をやっているんだ? 私は直ちに目を開き、あと何分で瞑想の時間が終わるか知りたくなりました。あぁ、隣の部屋から子どもたちがケンカする声が聞こえてきます。仲直りさせなければ...。
ここが重要なポイントです。私はさまざまなことをやりたくなりましたが、どれもしませんでした。なにもせず、頭の中に考えが浮かぶたびに呼吸へ意識を戻しました。時には、本当にしたほうが良い事もあるかもしれません。しかし多くの場合、すべきでないことをしてしまう方が問題なのです。黙って聴くべき時に口を出してしまったり、率直に話すべき時に余計な策を弄したりなどです。
瞑想はこうした非生産的な行為への衝動に、いかに抵抗するかを教えてくれます。 ■瞑想は「衝動を飼いならす訓練」になる以前、目標を達成するには意志の力に頼るより環境を整える方が効果的だとお話しました(英文)。しかし、意識の力でコントロールしなければならない場面も当然あります。
例えばこんなことはありませんか? 部下や同僚がミスをして、本当は冷静に質問したり話し合ったりすべきだとわかっているのに、思わず怒鳴りつけてしまった。会議中、黙って相手の話を聞いておくべき時に、つい口を出してしまった。株の売り買いをする時、感情にまかせて合理的でない決断をしてしまった。タスクに集中すべき時なのに、3分おきにメールをチェックしてしまうことも。
瞑想を日課にすれば意志力も鍛えられます。衝動をなくすことは不可能です。しかし、衝動にうまく対処することはできます。瞑想を続けていれば、いつの日か衝動は単なるサインにすぎないことがわかるでしょう。そして、自己コントロールは可能であると知るのです。
衝動はすべて無視すべきでしょうか? もちろん違います。衝動は有益な情報源でもあります。例えば空腹は、いま何か食べる必要があることを教えてくれます。また、退屈していることや、難しいタスクに苦しんでいるサインでもあります。同じように、瞑想は衝動を飼いならす訓練になります。どの衝動に従い、どの衝動を無視するのか意図的に選択できるようになるのです。
では、瞑想のやり方は?
■瞑想を始めたばかりならシンプルに背筋を伸ばして、楽に呼吸ができるようにします。椅子に腰掛けても、床にクッションを置いて座ってもいいでしょう。タイマーを好きな時間にセットします。タイマーをスタートしたら、目を閉じ、リラックスして、呼吸以外の動作を止めます。そして、呼吸に意識を向けます。考えや衝動が浮かんできたら、それに気づき、呼吸に意識を戻すようにします。
これだけです。シンプルですが、なかなかのチャレンジですよ。今日、取りあえず5分間だけ瞑想してみてください。そして明日もトライしてみましょう。
私は今朝、瞑想した後、執筆のために書斎へ向かいました。数分後に、7歳になる娘のソフィアが部屋に入ってきて「キッチンが水浸しだ!」と言いました。5歳のダニエルが水を飲んだ後で蛇口を閉め忘れたにちがいありません。ああ、なんてことをしてくれたんだ...。
瞬間的に、ソフィアとダニエルに向かって怒鳴りたくなりました。しかし、瞑想の実践がその衝動を抑えてくれました。私はゆっくり呼吸をしました。それから子供たちと一緒に行動に移りました。家中のタオルと毛布を何枚か持ってきて、床にこぼれた水を全て拭き取りました。その間、私たちはクスクス笑っていました。水を拭き終わってから、私たちは起きた事について話し合いました。そして、下の階に住む隣人に水漏れの件を謝りにいき、何か手伝うことがないかと尋ねました。
この一件で、私は執筆の時間を1時間ほどロスしました。締め切りに間に合うためには「超生産的」になる必要がありました。私は軽食をとり、一切の些事を忘れて2時間ほど仕事に没頭しました。メールにも、電話にも、Youtubeにも気をとられませんでした。そして、締め切りまで30分を残して執筆を終えました。
いかがですか。これでも瞑想は時間の無駄だと思いますか?
If You're Too Busy to Meditate, Read This | Harvard Business Review
Peter Bregman(原文/訳:伊藤貴之)
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