「ビジネスで成功するためには、成功者からそのノウハウを学べばよい」(「はじめに」より)というわけで、お笑いタレント、司会者、俳優、歌手と多方面で活躍する明石家さんまに学ぼうと提案するのが『なぜ、明石家さんまは「場を盛り上げる」のがうまいのか?』(内藤誼人著、大和書房)。

  • どうも職場で人気がいまひとつで困っている
  • どうも初対面の人とうまく打ち解けることができない
  • がんばっているのに彼女ができない
  • 仕事のやり方がわからない

というような悩みはみんな「さんまさんが解決してくれる」と、心理学者である著者はいいます。第3章「さんま流『自分を伸ばす仕事術』」から要点を引き出してみましょう。

ダメだったら3打数1安打でいいよと開き直るか、きょうは客が"重い"と人のせい。

(『ザ・テレビジョン』1990年7月13日号での発言。88ページより)

笑ってもらえなかったら、お客に責任転嫁してしまえという大胆な発想。そのくらい割り切って考えないと、ヘコんでしまうばかりで益はないというわけです。むしろよくないのは、失敗を気にして「次の力」が沸いてこなくなること。どうしようもないときは、どうしようもないと割り切ることも大切なのですね。

追い詰められなきゃダメなんですよ、なんでも仕事は。ゆっくりやるとロクなことないですね。

(『レプリーク』2000年9月号での発言。95ページより)

この発言から学べるのは、「『追い詰められている』状態をうまく楽しむ」ということ。著者も、仕事がキツいくらいの方が、かえって自分を成長させられると主張しています。その点でさんまさんは、自分を追い詰め、成長させることが楽しくて仕方ないように見えるとも。

事実、著者によればコロンビア大学で組織心理学を教えているアンジェラ・シューという方も、「プレッシャーを乗り越えることによって、人は自信を持てるようになり、プレッシャーのある状況でうまく時間をやりくりするから、時間の使い方がうまくなるのだ」と指摘しているのだとか。

オレは何言われても平気。ひがんどると思うもん。

(『MORE』1989年10月号での発言。98ページより)

つまり、陰口をいわれることは成功の証だということですね。「ひがんでるんだな」と思えばいいし、他人の悪口を気にしていたら、本気で仕事はできません。仕事に全力で取り組むことの方が大切だから、業績を上げて周囲から悪口を言われるようになっても、全然気にしなければいいというわけです。

人間の限界ちゅうのがどんなもんかやってみようということで、わざと週に14本レギュラーやってた。

(『JUNON』1988年12月号での発言。103ページより)

この発言にあるとおり、若いうちは倒れるほどに仕事し、自分の限界を見ておくべき。その経験が、自分を伸ばすコツになると著者もいっています。人間は本当の限界のかなり手前のところに自分の限界を設けているものなので、成長するためには、自分にある程度大きな負荷をかけなければならないとのこと。

バラエティをやりながらドラマをやるのは、正直言うとメチャクチャしんどいんです。でもね、何かいいものをつくろうとする人たちが向かっていくエネルギーは非常に見てて気持ちいい。

(『ザ・テレビジョン』2002年4月19日号での発言。88ページより)

いうまでもなく、ここから学ぶべきは、エネルギッシュな人たちと一緒に仕事することの重要性です。著者も、仕事を楽しむコツは、一生懸命に仕事をしている人と一緒に仕事することの効能を説いています。そうすることで、こちらまでエネルギーが沸いてくるというわけです。

逆に、やる気のない人や会社の悪口ばかりいっている人と仕事すると、自分のやる気まで失われるため注意が必要だそうです。

本書のポイントは、上にあるとおり、本人の発言を引用している点。具体的だから理解しやすく、言葉を実感できるわけです。というわけで、ファンならずとも読んでみる価値はありそうです。

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(印南敦史)