自らを「ファイナンシャル・ライフ・プランニング・アドバイザー」と名付け、著書などを通じながら20年以上にわたってコーチングを行ってきたChristine Mathieuさん。今回は自身の失敗を踏まえながら、「お金」に関する価値を見つめ、大人として健全なファイナンスを築くための第一歩を教えてくれました。

子どものころ、裁縫の達人である祖母が、いつも私の服を作ってくれました。私はお金を一円も払わずに美しい服を手に入れていました。ところが成長すると、服の趣味は変わらないのに、お金を払って服を買わなければいけなくなりました。そのことに私はショックを受けました。母が言った言葉を今でも覚えています。「あなたはビールの値段でシャンパンを飲もうとしているのよ」。

本当は、この言葉を「自分の予算以上のものを欲しがってはいけない」という警告として聴くべきでした。しかし私は、「もはや自分には良いものに見合うだけの価値がないのだ」と受け取り、自尊心を傷つけてしまったのです。そして、浪費の泥沼に落ち込んでいきました。結果は...気がつけば、8000USドルのクレジットカード負債を抱えていました。落胆、怒り、自責の念とともに...。

私たちは子ども時代に、両親や祖父母、社会から影響を受けながら、お金についての信念や態度を形作ります。私は、ファイナンシャル・ライフ・プランニング・アドバイザーの仕事において、この信念や態度を「お金の記憶」と呼んでいます。「お金の記憶」が教えてくれるもの

お金の記憶を掘り下げることで、自分が持つお金についての考えや感じ方に、何が影響を与えてきたかがわかってきます。

大人として健全なファイナンスを築きながら人生を進んでいくためには、過去を振り返る必要があります。結局、信念とは繰り返し教え込まれた考えにすぎないのです。それでは、自分に次の7つの質問をして、自己探求を始めましょう。現在のあなたがお金をどう扱っているかもわかるでしょう。

1. 一番古いお金の記憶はなんですか?

私の最初の記憶はお小遣いに関するものです。私と姉は家事を手伝い、お小遣いをもらっていました。ところが、ある時からお金をもらえなくなりました。今まで通り手伝っているのに、支払いだけ止められてしまったのです。何年か後で、私が定職につかずパートタイムの仕事ばかりをして、安定収入もないのは、この子ども時代の体験の影響があると気づきました。私は、自分はお金をもらい続けるのに足る仕事をしていないのだと考えていました。そして、それをさほど重要視もしていませんでした。

最初のお金の記憶から何が学べるでしょうか?  その記憶と現在の振る舞いのあいだに、何か関連性があるでしょうか?

2. あなたの家族はお金をどのように扱っていましたか?

お金は主に何のために用いられましたか? 報酬、罰、サバイバル、印象づけ、支配、他者への援助、お楽しみ、愛を買う、目標の達成、などなど。私のクライアントのひとりは、子どものころから、お金についてはポジティブな経験しかしていないそうです。お小遣いをもらっていて(それでアイスクリームを買いにいったり!)、両親は教会と地域にいつも寄付をしていたそうです。子どものころにお金の苦労をしなかったため、お金に関してポジティブで建設的な感覚を持っていました。そして、確かな富の基盤を築いていました。

3. 家族の財務状況はどうですか?

あなたの家族はお金持ちですか、それとも貧乏ですか。そう思うのはなぜですか。これに答えたら、次の質問は「お金持ちや貧乏はあなたにとって何を意味しますか?」です。この質問はあなたにとって「真の豊かさ」とは何かを教えてくれます。お金がたくさんあることが豊かさですか? 豊かさと幸福は同義語ですか?

4. 両親はどんなお金の使い方をしていましたか?

子どものころ、母は決して自分のためにお金を使いませんでした。いつも自分より他人を優先させていました。今になって思えば、母の自己犠牲を見ることで、私自身の自己評価も下げていたように思います。母に価値がないのなら、私にもないのです。そして、私は真逆のことを試みました。自分に価値があることを証明するために、衝動買いを続けたのです。

家族のお金の使い方は、大きな影響をもたらします。私たちは、両親から植え込まれたお金に関する信念を、長きにわたって持ち歩きます。

5. 自分でお金を稼ぎ始めたのはいつですか?

自分でお金を稼ぎ始めた時、「独立している感じ」や「権力を持った感覚」がありましたか。それとも「居心地が悪かった」ですか。現在、お金を稼ぐことについてどう感じていますか。子ども時代にお金をもらい始めた時と比べて違いはありますか。

私のクライアントの多くは、独立して力を与えられたと感じたそうです。はじめて選択の自由を手に入れたわけです。これはお金ではなく感情の問題です。多くの人が、いくら稼いでいるかで自己の価値が決まると感じています。しかし、私たちが子どもだった頃、現金がそれほど大事なものだったでしょうか。あなたが自分の収入に満足しているとしたら、それはすごいこと! しかし、もしそうでないなら、どうすれば満たされた気分になれますか?

6. キャリアについてどんなメッセージを受け取りましたか?

子どもの頃、将来の職業について考えるとき、大きな夢を持つように励まされましたか。それとも安全な道を選ぶように言われましたか。

私のクライアントにも何人かアーティストがいますが、その多くが富や名声が得られるのは死後のことかもしれないと悩んでいます(ゴッホやゴーギャンのように)。そして、生きているあいだは貧しさに苦しむのではと恐れています。あなたのキャリアや職業はどのように評価されていますか?

7. お金に何を期待していますか?

私は「好きなときに好きなことができるだけのお金が欲しい!」とはっきり言えます。お金は選択の自由を与えてくれます。それがあって初めて、他のこともうまくいきます。

もし、お金の問題なければ、あなたは人生で何をしますか。いったんお金の問題を置いておくことで、自分が心から望んでいることがわかります。そして、どうやって実現すればいいかもわかるでしょう。

7 Ways Money Memories Can Affect Your Finances | LearnVest

Christine Mathieu(原文/訳:伊藤貴之)