前回(20代女性の入居者インタビュー)に引き続き、最近、ライフスタイルの選択肢のひとつとして浸透しているシェアハウスの実態をリポートしたいと思います。

今回も実際にシェアハウスに住む人へのインタビューを通じて、シェアハウスに住む目的をはじめ、メリットやデメリット、実際の生活でのエピソードをお聞きしました。

入居審査不要。手軽にトランクひとつで入居できるシェアハウス

今回、インタビューにご協力いただいたのは、芸人でシンガーソングライターの武内剛さん(32歳)。

名古屋で生まれ育った武内さんは、2004年24歳のとき、単身渡米。ニューヨークの演劇学校HB studioに入学し、3年間あらゆるパフォーマンスを学びました。渡米してから8年後の2012年に帰国し、上京します。タレント業を中心に活動を開始しますが、このとき、現在の東京都内のシェアハウスに入居しました。

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武内さんの住むシェアハウスは、都心までのアクセスが30分以内の東京都内にあります。物件自体は最寄駅から徒歩5分程度で、閑静な住宅地に立地しています。トイレやシャワールームは共用タイプ。他に共用のダイニングキッチンが完備されており、6帖の個室には独立した玄関とミニキッチンが付き、冷蔵庫、エアコン、デスクやベッドといった生活家電や家具が備え付けになっていて、家賃は光熱費込みで5万6000円です。

── シェアハウスに入居したきっかけは何だったのですか?

武内剛さん(以下、武内さん):入居審査の様なものもとくにないですし、家具や家電も付いていて、トランク一つで気軽に引っ越しができるという点に尽きます。後は、所属している芸能事務所(ソニーミュージックアーティスト)が運営している劇場まで自転車で行ける利便性ですね。

入居者同士の交流のないシェアハウス

── 部屋を選ぶうえで、こだわった点はありますか?

武内さん:共用キッチンタイプは嫌だったので、個室にキッチンが付いている部屋にこだわりました。

── どうして共用キッチンは嫌だったのですか?

武内さん:だって毎日、他の入居者と顔を合わせることになるでしょ? 学生時代だったら、他の入居者との交流も楽しかったんでしょうけど...。

── なるほど。シェアハウスを選ぶ人は、基本的に他入居者との交流を目的にしていると思っていたので、意外でした。

武内さん:ニューヨークに8年間住んでいたので、異文化交流とかシェアハウスというスタイルにまったく抵抗はないんですけど、今は、むしろ面倒くさい(笑)。このシェアハウスでも、共用ダイニングに人がいるのを見たことがないし、ここに住む人は基本的にそういうものを求めてはいないと思います。

── 立派な炊飯ジャーが共用ダイニングに設置されているようでしたけど、そういう備品を使ったりすることは?

武内さん:(即答)ないですね。なんというか、人が使ったものって気持ち悪いじゃないですか(笑)。

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── 分からないでもないですが...。廊下などで他の入居者に会ったら挨拶とかするんですか?

武内さん:僕は挨拶ぐらいはしますけど、挨拶しても返ってこないことすらありますよ。

── 交流どころか、わりと殺伐としてますね。ここではキッチンはともかく、シャワールームやトイレも共用ですけど、そのあたりにストレスを感じることはありますか?

武内さん:僕は芸人をしているので、一般の会社員の人と生活スタイルが違うせいか、シャワーの順番待ちに遭ったこともないですし、その点ではまったく問題ないです。

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シェアハウスでのトラブル

── シェアハウスに入居してから起きた事件などはありますか?

武内さん:この物件に住む前の話ですが。当時、小さな木造アパートのシェアハウスに住んでいたんですが、そこはとにかく壁が薄くて、隣室のドイツ人らしき男性がバカでかい声で歌っているのが聞こえてきたりして。とにかく迷惑でしたね(笑)。

── それは実際、イヤですね。客観的に見ている分には、おもしろい話ですけど(笑)。

武内さん:そう(笑)。それである日、法則に気づいたんです。その頃僕は、夜の決まった時間にエレキのガットギターをアンプに繋がずに(※)ギターの練習をしてたんですけど、そのタイミングでかならずそのドイツ人が歌いだすっていうことが分かってきたんですよ。(※エレキギターはアンプに繋がずに生音だけで弾いている分には、それほど音は出ない。)

── 明らかに「反応」してますよね。

武内さん:そう(笑)。なので試しにパターンを変えて、練習するのを朝にしてみたら、やはり向こうも朝からバカでかい声で歌いだしたんです。

── 武内さんのギターに「乗ってる」ってことですか?

武内さん:結果、分かったのが、どうやら僕のギターに対する野次というか、苦情のためのアドリブソングだったんです(笑)。それに気づくまで1カ月ぐらいかかりましたけど。

それからこんな話も。別のアジア人の入居者がいて、その人が国際電話をかけると話の内容が丸わかりなぐらい聞こえてくるんです。しかも、廊下をはさんで向かい側の部屋なのに。それで今のところに引っ越して来ました。

── 他に珍事件などはありました?

武内さん:ある日、廊下を歩いていたら、わりと高齢のおじいちゃんがパンツ一丁で行き倒れるように倒れていたことがありましたね。

── なんと。「パンイチ」で!

武内さん:しかも、そのパンツが普通のブリーフやトランクスじゃなくて、なんかイヤらしい通販で買ったような、派手すぎるパンツだったんですよ(笑)。パンツの柄はともかくびっくりして、「大丈夫ですか?」と声をかけたんですけど、酔っぱらって寝てしまってるのか、とくに反応がなくて。そのとき、他の男性の入居者が通りすがったので、「この方が倒れていたんですよ。大丈夫ですかね?」と話しかけたら、その人は冷めた口調で「放っておけばいいんじゃないですか」と言って、すぐに部屋に引っ込んでしまったんです。

── ますます殺伐としてますね。

武内さん:本当ですよね。たぶん、みんな他人に関わりたくないんだと思います。その後、結局そのおじいちゃんも退去してしまったみたいですが。

シェアハウス退去後のライフスタイルの選択

── 先ほど、騒音トラブルですぐに引っ越したということでしたが、シェアハウスからシェアハウスへ気軽に引っ越しできるのはいいですね。今後、引っ越すとしたら、シェアハウスに住みたいですか?

武内:もともと長く住むつもりは全然なく、今のシェアハウスもできるだけ早く引っ越して、より良い部屋に移りたいですね。

── なるほど。それでは、最後に今後のライフワークや目標について教えてください。

武内:僕はもともと漫画家になりたかったんです。物語を作ったりするのが好きで。その流れもあり、今やっているお笑いのネタの構成を考えたりするようになりました。目標は、事務所の先輩でもあるAMEMIYAさん。ギター漫談で笑いをとりたいですね。それから、僕なりの夢としては、エディ・マーフィー主演の『星の王子 ニューヨークへ行く』の日本版の映画の主役を演じることです。キャラクター的にぴったりだと思いませんか?

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── 確かに適役かもしれませんね(笑)。明確な目標設定をお話しいただき、ありがとうございました。近い将来、現在のシェアハウスを飛び出し、さらに飛躍されることを期待してます。

2012年に上京し、タレント活動を始めたばかりの新人芸人の武内さん。それだけに、光熱費込みで相場から比べても割安な家賃で、家具・家電付きの利便性のいい部屋は日々のタレント活動をフットワーク軽くこなすのに、一番重要な要素なのでしょう。

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武内さんは1980年名古屋生まれ。父カメルーン人、母日本人のハーフ。2004年にN.Y.に渡り、HB studioで演劇とパフォーマンスを学ぶ。ソニーミュージックアーティスト所属。武内さんのホームページ

シェアハウスに入居するにあたって、年齢・性別・国籍問わず入居でき、また、通常の賃貸契約には不可欠な保証人や保証会社を立てる必要がないケースもあるようです。

さらに賃貸契約とは異なり、敷金、礼金、仲介料、更新料も不要なため、初期費用を安く抑えられるメリットがあります。実際、引っ越しもトラックではなくトランクひとつで手軽に引っ越しが完了する入居者も多いそうです。ただし、管理会社によってその基準は異なるので、事前にシステムを確認する必要があります。

(庄司真美)