Popular Science:アマチュアによるバイオテクノロジーの黎明期から、ハッカーたちはリバースエンジニアリングを駆使し、安価な実験装置をDIYしてきました。その金字塔のひとつといえるのが「OpenPCR」。

分子生物学の研究室ならどこにでも置いてある高価な「DNA増幅装置」のいわば廉価版です。ほかにも様々なハック装置が産み出されましたが、「遠心分離機」のDIY版だけはなかなか登場しませんでした。

混合液から、細胞、DNA、タンパク質などを分離するには、高速回転する遠心分離器が必要です。これまでDIYされた装置は、使いものにならないものばかり。ところが、ついに美しく洗練されたDIY版の遠心分離機が登場したのです! 作ったのはなんと17歳の高校生、Karlin Yeh君です

研究室でも使えるレベル、だけど価格は1/5

Yeh君は、友人の壊れたリモコンヘリコプターと、父親のレーザーカッターを使って、遠心分離機「OpenFuge」を製作しました。「DIYのバイオハッカーたちが、自前の遠心分離器を持てるようにしたかったんだ」とYeh君は言います。

OpenFugeは回転数9000rpm、遠心力6000Gを実現しています。これは研究室でも使えるレベルです。専門家向けの装置が1000ドル以上するのに対し、OpenFugeはわずか200ドルで製作できます。Yeh君はDIY製品販売サイト「Tindie」で、OpenFuge製作キットを260ドルで販売しており、すでに売り切れ状態。また、自作したい人向けに詳しい製作ガイドもアップしています。

「みんなが参加できれば、バイオテクノロジーはもっと進歩する」

「今までのDIY遠心分離器は、穴の空いた2x4の厚い板に過ぎませんでした」とYeh君。「本物の研究室で使えるものを作りたかったのです」

OpenFugeは昨年の秋、「Genspace」のワークショップで生まれました。Yeh君は15歳のときから学校帰りにブルックリンにあるこのハッカーラボに通っていたそうです。

完成品ができるまでに、5つのプロトタイプを製作したとのこと。速度調整や、ケースの製作、騒音問題の解決に時間がかかったそうです。「最初のバージョンはジェット機が離陸するみたいな音がしたよ」と、Genspaceのエグゼクティブ・ディレクターEllen Jorgensen氏が語っています。

「みんなが参加できれば、バイオテクノロジーはもっと進歩する。だから誰でもが自宅で使えるバイオラボが必要なんだ。」とYeh君。だそうです。頼もしいですね!

GenspaceでOpenFugeをテストするYeh君

The 9,000 RPM Revolutionary | Popular Science

Nona Griffin(訳:伊藤貴之)