親はいつも忍耐づよく子を育て、子はいつも協力的でスマートに行動する――そんな世界があったらいいなとは思いますが、現実はそうではありません。だから私たち親は、耐え忍ぶには長すぎる1日でも、あらゆる策を講じて自分の正気を保とうとします。
いえ、決して、我が子を思い通りに操る子育てを推奨しているわけではありません。それでは子供に永遠の傷を与えてしまいますから。ここではあくまでも、どうしても辛い日に言われる「でもやりたくないもん!」や「何でやんなきゃダメなの?」をかわすためのショートカットとして、「操る」という行為に注目したいのです。
もっと思いやりのある直接的な子育てがいいのはもちろんです。でも、親だって人間だもの。どうしても辛い日ってありますからね。
悪い選択肢を挙げる
私の母は小児科医。幼いころの私やきょうだいは、母によくこう言われたものです。「注射1本にする? それとも2本?」。これは古くからある心理学的トリックで、母は病院に訪れる子供たちにもよく使っていました。必要だけどやりたくないこと(注射や苦い薬など)をやらせるために、2つの悪い選択肢のうちマシな方を選択させるのです。
ただ、最初のうちは効果があるのですが、すぐに使えなくなってしまいます。それに、大きい子(または賢い子)には、簡単にバレてしまいます。
同じように、あなたにとって都合のいい選択肢を2つ提示するという方法があります。例えば、「パーティまでにいっぱいやることがあるんだけど、部屋の掃除と皿洗い、どっちやってくれる?」という具合に。狭い範囲の選択肢を与えつつ、子供に「自分で選んだ」という感覚を持たせるのです。
そして、心を操る究極の方法は、以前も紹介した「あなたの自由です」テクニック。あなたの望む選択肢を強く勧めながら、子供に判断を委ねるのです。ただし、子供が選んだ選択肢は絶対に否定しないこと。これは他のテクニックでも同様です。
好きなものに嫌いなものを隠す
好き嫌いの多い子には、好きな食べ物にヘルシーな材料を混ぜ込むという方法があります。例えばほうれん草が嫌いなら、ブラウニーに混ぜてしまうのです(ジェシカ・サインフェルドさんが、この手のレシピを集めた本を書いています)。また、秘密の食材を本人に入れさせるという方法もあります。
いずれにしても、子供の協力を仰ぐために、「これはいいものである」という事実を隠さなければならないことがあります。これは食べ物に限らず、子育て全般にいえることではないでしょうか。すべてをゲームにしてみたり、毎日の雑用をエンターテイメントにしてみたり。親は、あらゆる手段を駆使して、クリエイティブになる必要があるのです。
テクノロジーを人質にとる
テレビの時間とは別に、テックデバイスやインターネットを使う時間は、親がコントロールできます。やることを終えるまで、Wi-Fiのパスワードを教えないのです。同じように、監視していることを知らせるだけで、間違った行動をとらなくなるでしょう。
大げさに褒めて勝負に勝たせる
褒めることは操ることとは無縁のようですが、応援団になったり、家族間の健全な競争(親がしてほしいことをすると子供の勝ち)を促すことで、反抗的な子供であっても、やる気を引き出すことができます。例えば、朝いちばん早く着替えた人に朝食を選ばせる(ヘルシーなものしか用意しない)という古典的な方法も、ある意味「操作」といえますが、皆にとって楽しいものです。
子供だって人間だから、達成感やスペシャル感を感じていたいもの。その欲求をうまく利用するのです。過去の行為を褒めることで、また同じことをしようという気になるはずですよ。弱点や恐怖心を利用する
人を操ることとはすなわち、相手が何によって動くかを知り、それを利用すること。子育ても同じです。ただし、あなたと子供の双方にとって有益な場合だけにしなければなりません。例えば、我が子があるテレビ番組を好きな場合、「○○が始まるから起きて!」というだけで、ベッドから飛び出してくるでしょう。私の娘の場合、私がやってほしいこと(歯磨き、宿題、早寝など)を、娘からぬいぐるみに伝えさせるのが効果的。ぬいぐるみを説得しながら、娘自身もその行為をしてしまうから驚きです。
大人にも効くような、もっと高度なテクニックもあります。例えば逆心理を利用する、罪悪感を感じさせる、おびえさせるなどの方法ですが、子供には使わない方が無難でしょう。できることなら、無理に子供を変えようとするのではなく、自然体で見守りたいものです。
MELANIE PINOLA(原文/訳:堀込泰三)