旅行系アグリゲーションサイトが増えたおかげで、航空券や宿泊費の比較が簡単にできるようになりました。でも、1つのサイトだけで満足してはいけません。ほんのちょっとの努力で、数万円もの差が出ることもあるのです。そこで、職業が旅人のMatthew Kepnes氏が、彼なりのトラベルハックについてつづった記事を紹介しましょう。Kepnes氏は、5年前にボストンでの退屈なサラリーマン生活を飛び出して以来、ずっと旅を続けている男性で、「 Nomadic Matt(ノマドのMatt)」の愛称で知られています。基本的にアメリカ人向けの記事ですが、世界を旅するなら、参考にできる部分は多いと思います。

最近、トラベルハックという言葉をよく見かけるようになりました。特に、"トラベル・ニンジャ"や"アルティメット・トラベラー"になる方法を説明する旅行系サイトに多く見られます。そのようなサイトを参考にしながら、日々マイルやポイント、エリートステータスを得るための努力を惜しまない人たちは、トラベルハッカーと呼ばれます。マイレージやポイントシステムをうまく利用するためであれば、どんな努力も惜しまない人たちです。

トラベルハッカーは、ポイントやステータスの獲得を名誉の印だと思っています。エリートステータスを得るために必要であれば、30日間で16回のフライトだって飛んじゃいます。新規就航路線に乗ればマイル3倍になると聞けば、明日にでも乗りに行きます。カードに契約すれば、このフォームに入力すれば、このコンテストに参加すればホテルポイントを5,000点もらえるなんてのは、おやすい御用なのです。このような話を聞くと、映画『マイレージ、マイライフ』の主人公の「マイルが貯まらないことは何もしない」というセリフを思い出します。

でも、私にとってのトラベルハックという言葉の意味はちょっと違います。それは、旅のコストを限りなくゼロに近付けること。どんな手を使ってでも100マイル多く稼ぐことに執着する人は別として、このガイドは、普通の旅行者のために書いています。リサーチにあまり時間をかけたくない。でも旅行には安く行きたい。そんなあなたのためのガイドです。

フライトをハックする

誰もが最初に探すのが航空券ではないでしょうか。そこで、このガイドでは、フライトハックを最初に取り上げます。安いフライトを探す方法は、年々簡単になっています。私のオススメは「Airfarewatchdog」。登録しておけば、自分のエリアで安価な航空券が出たときに知らせてくれます。安いフライトを見つけるうえで重要なのは、柔軟性。たった1日の違いで、数万円もの差が出ることだってあるのです。とはいえ、特定の日に飛ぶ必要があるのなら、少しだけ工夫が必要になります。

例をあげて説明しましょう。10月17日にニューヨークからロンドンに飛び、10月27日に戻ってくるとします。この路線は人気路線のため、多くのエアラインが就航しています。

ステップ1:基準として、最初は人気サイト「Kayak」を使ってみましょう。Kayakは、同時に複数のサイトを検索してくれるので、比較がかんたん。選択した日付の前後数日分の料金を表示してくれるのも便利です。アメリカのサイトでは「Travelocity」もオススメですが、世界中に、同様のすばらしいアグリゲーションサイトがたくさんあります。

さて、Kayakの検索結果が表示されました。

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ステップ2:Skyscanner」や「Momondo」など、グローバルなアグリゲーションサイトでもクロスチェックをしておきましょう。この2つは、より広範囲のサイトを調べてくれるので気に入っています。私は、これらのサイトを見ずに予約をすることはありません(もう1つ、「Mobissimo」もオススメです)。

Skyscannerの結果が出ました。

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Momondoの結果はこちら。

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ステップ3:ここまでで見つけた最安値の航空券について、その航空会社のサイトで料金をチェックします。航空会社としては直で予約してほしいので、アグリゲーションサイトよりも安い料金を提示していることがあるのです。上で見たように、ここまでの再安値はマンダリン航空の592.19ドルでした。そこでリンクをクリックしてみたところ、アストライオス航空のサイトが開きましたが、直接の予約はできないようでした。次に安かったのがアイスランド・エクスプレスの676ドル。こちらは、航空会社のサイトで直接確認したところ、同じ料金が表示されました。

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ステップ4:次に、同じ航空会社の海外サイトに行って、違う通貨での料金をチェックします(例えば、britishairways.comの代わりにbritishairways.co.ukをチェック)。通貨によっては、為替レートの違いを利用して節約できることがあるのです。アメリカからイギリスに飛ぶ今回の例では、英ポンドでの料金が米ドルより高かったため、この方法はうまくいきませんでした。アイスランドの通貨、クローナでも同じでした。でも、逆であれば、これを利用しない手はありません。私はよく、ニュージーランドに行くときにこの手を使っています。

ステップ5:別のルートをチェックします。メジャーな空港はたいてい、手数料や税金が高く取られます。ですから、ほかの空港に飛んで、そこから格安フライトを使うというルートもチェックしておくといいでしょう。特に、ヨーロッパには非常に多くの航空会社があるため、この方法が効果的です。今回の例では、ロンドンに直接飛ばずに、ダブリンに飛んで、そこからライアンエアーでロンドンに飛ぶというルートが考えられます(今回のケースでは安くなりませんでした)。

ステップ6:目的地の空港に乗り入れている航空会社をチェックする。これは、すべての航空会社を調べられたかどうかを判断するための最終チェック。乗り入れている航空会社を空港のサイトでチェックすると、アグリゲーションサイトには登場しない航空会社が見つかることがあるのです。今回のケースでは、そのような航空会社は見つかりませんでした。

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以上のステップを経て、最終的にどれがいちばん安いのかを比較します。私の場合、数値にあまりにも差があるときは、さらにいくつかのサイトを検索することもあります。さらに、日程を少し前後させてみるのもいいでしょう。ほんの数日早く旅立つだけで、料金が大きく異なることだってあるのです。今回のケースでは、あまり大きな違いは見られませんでした。

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まとめると、アストライオス航空の593ドルが再安値で、多くの主要航空会社より200ドル以上、アイスランド・エクスプレスより100ドルも安くなることがわかりました。注目すべきは、アストライオスの結果は、1つのサイトでしか現れなかったこと。しかも、そのサイトはアメリカのサイトではありませんでした。だから私は、世界中のサイトをチェックすることを勧めています。すべてのサイトが、すべての航空会社を網羅しているわけではありませんから。なお、ここまでにかかった時間は、約45分でした。

おことわり:ここに書いたテクニックは、ある程度の経験者であれば常套手段であることは承知しています。でも、ここで紹介した海外のサイトを知らない人や、航空会社の海外サイトから予約ができることを知らない人は意外と多いのです。確かに、200ドルではあまり大きな差ではないかもしれませんが、あくまでも初心者向けに書いたものですのでご了承ください。なお、執筆時に想定した読者は、私の両親です。両親の旅行者としての経験は非常に乏しいので、そのレベルに合わせて書きました。

宿をハックする

フライトが決まったら、次に予約するのが宿ではないでしょうか。ご安心ください。宿を安く予約するのは、とっても簡単なんです。

  • 無料で民泊:「カウチサーフィン」「Global Freeloaders」「Hospitality Club」などのサイトでは、あなたを泊めてくれる地元の人を探すことができます。無料で宿泊できるだけでなく、観光のお手伝いをしてもらえたり、地元のカルチャーを学ばせてもらえるかもしれません。その町を知るには、ホテルに泊まるよりもずっと効果的です。私は特にカウチサーフィンのファンで、しょっちゅうお世話になっています。
  • 住み込みで働く:世界中の多くのホステルが、住み込みで働く人を受け入れています。仕事は毎朝数時間の掃除だけ。あとはすべて、あなたの時間です。ホステルと言えばシングル向けのパーティーの場だと思っている人も多いかもしれませんが、実際はさまざまな年齢向けのさまざまなホステルがあります。「もう学生じゃないから」という理由で自らを遠ざけてしまうのはもったいないですよ。
  • 留守番:ホステルに住み込みで働くのが向いてないと思ったら、留守番という手もあります。家人の留守中、家の番と掃除をする代わりに、宿泊させてもらうのです。留守番マッチングサイトとしては、「Mind My House」「House Carers」「Luxury House Sitting」などがあります。
  • 庭でキャンプ:コンセプトはいたってシンプル。庭を解放している人がいて、そこでキャンプをさせてもらうというものです。お邪魔できる範囲はさまざまで、基本的には「ココだけ」と指定されていることがほとんどですが、ときには「家も使っていいよ」という寛大な貸主さんもいます。このようなキャンプは、イギリスでは人気があるのですが、ほかの場所では世界でも数カ所でしか行なわれていません。最近、ヨーロッパでは少しずつ人気が出てきているようです。気になる人は「Camp in my Garden」をチェックしてみてください。
  • ウーファーになる:住み込みで働くためのポピュラーな方法です。WWOOF(World Wide Opportunities on Organic Farms)は、旅人と美食家、農家、その他労働力が必要な有機農場で働きたい人をつなぐ国際組織。農場で数時間働く代わりに、食事と宿泊場所が与えられます。長期の場合は給料が出ることもあるようですが、一般的にはお金のやり取りはありません。特に人気があるのはニュージーランドとオーストラリアですが、世界中のいたるところで実施されています(例えば、私のある友達は、アルゼンチンのワイナリーで働いていました)。詳しく知りたい方は、WWOOFのページをどうぞ。

アトラクションをハックする

フライトと宿泊でかなりの額を節約できたはずですが、コストゼロの旅を目指すには、アトラクションの費用も節約しなければなりません。

  • 市発行のツーリストカード:お金はかかりますが、たくさんのアトラクションに足を運びたいあなたにとっては、かなりの節約になります。多少の差はありますが、博物館や史跡などにひとつひとつ入場料を払うことを考えると、半額ぐらいで済むことが多いでしょう。
  • 無料デーを見つける:多くの美術館が、特別割引やフリーナイトなどを実施しています。どこに行くにしても、出発前に必ずウェブサイトをチェックする癖をつけておきましょう。ルーブルやグッゲンハイムなどの有名な美術館でも、無料の時間帯を用意しています。

学割などの割引も必ずチェックしましょう。もちろん、割引を受けるためには証明書を忘れずに! え、学生じゃないから証明書がないって? だったら、アジアのいたるところで作ってくれるのであなたもぜひ1枚......いえ、ちょっと言ってみただけです。

食事をハックする

詳しくはこちらの記事(英語)を読んでいただきたいのですが、中でも選りすぐりのアドバイスをいくつか紹介します。

  • 露店:ホットドッグ、ソーセージ、サンドイッチなどを早く安く手に入れるにはもってこいです。スウェーデンでは、ソーセージが4ドルで食べられる露店に頼って生きていました。アムステルダムでは、FEBOというお店とそのコロッケが私のお腹を満たしてくれました。コスタリカでは、エンパナーダの露店で1ドルも出せばお腹いっぱいになれました。これらの露店がミシュランの星を獲得することはありませんが、財布を空にせずお腹をいっぱいにしてくれるので貴重な存在だと思います。
  • 屋台:露店と似て非なるもの。露店は恒久的な店舗も含まれますが、屋台は移動可能なものを指します。世界中いたるところ(特にアジア)に、屋台街が存在します。路上で料理が行なわれていて、小さなプラスチックのイスに座って、美味しい料理を楽しむことができます。こうした屋台で味わうストリートフードは、世界でも最高の食事ではないでしょうか。多くの場合、1ドルもかからずに、本当の地元の味を堪能できるのです。例えばタイから屋台がなくなったら、まったく違う雰囲気になってしまうでしょう。
  • ランチスペシャル:多くのレストラン(特にヨーロッパ)が、ランチタイムには、ディナータイムのメニューを大幅に値下げして提供しています。わずか3~4割程度の出費で、同じ食事が楽しめるのです。私はこれを利用して、「ナイスな食事」はなるべく昼に食べることにしています。
  • ビュッフェ:内容は必ずしも最高とはいえませんが、どれだけ食べても値段が変わらない点で、ビュッフェもお得です。1回の食事で1日分を済ませてしまいましょう(私は1日もたせることはできませんが、1日の大半をもたせることはできます)。料金はだいたい15ドル程度です。

交通費をハックする

最後に、交通費をハックする方法を紹介します。

  • ツーリストカード:ツーリストカードは、アトラクションの割引だけでなく、市内交通が無料になるものも多いです。その場合、バス、フェリー、トラム、電車が無料になります。もう1つ、市内交通を安くあげる方法は、ひたすら歩くこと。2本の足で歩いている限り、どこまで行っても無料ですよ。
  • カーシェア:誰かのクルマに同乗すれば(または誰かに同乗してもらえば)、大幅にコストを下げられます。シェア相手を見つけるには、「Gumtree」や「Craigslist」がオススメ。旅行系サイトのフォーラムなどでも、ホステルの掲示板と同じように旅仲間を見つけられるかもしれません。
  • 人のクルマを運転してお金をもらう:北米では、クルマをA地点からB地点まで運転するとお金をもらえる仕組みがあります。引っ越しなのかもしれませんし、誰かがオンラインでそのクルマを買ったのかもしれません。でも、理由はどうでもいいのです。仲介業者のところに行くと、クルマと納期、そしてガソリン代を渡されます。あとはただ、納期までに着くよう、クルマを走らせるだけ。これがなかなか、長距離旅行にはいいんです。カナダでは「hittheroad.ca」というサイトが有名です。アメリカでは、全国的なものは見つかりませんが、「Autodriveaway」がよさようです。

当然のことながら、旅のコストがゼロになることはありません。それでも、目標達成に向けて努力することで、クリエイティブな旅が可能になります。通常の旅費から50から75%も節約できたなら、それはもう、トラベルハックと呼んでいいのではないでしょうか。トラベルハックは、マイレージやポイントを集めることだけではなく、エコノミークラスの予算でファーストクラスに乗る方法を見つけることだと私は思うのです。

The Ultimate Travel Hacking Guide|Nomadic Matt

Matthew Kepnes(原文/訳:堀込泰三)