パスワード管理ツールの選択肢はいくらでもありますが、なにぶんセキュリティに関わること。まして仕事で使うのならば、手に入る最良のツールを選びたいですよね。この記事では、特に人気の高いパスワード管理ツールをピックアップして、項目ごとに徹底比較しました。ニーズに合ったツールを見つける上で、お役に立つと思います。
パスワード管理ツールには高いセキュリティが求められますが、その割に選択肢は豊富にあります。米ライフハッカー編集部では、あらゆるツールを一通りは試したあとで、ベスト5を次のように選出しました。どれも、信頼性、機能性、セキュリティとサポートのバランスが良いものばかりです。ちなみに、今回選んだ5つは、先日米LHが行った読者投票で人気の高かった5つとまったく同じ結果になったのですが、それも当然だと思います。とは言うものの、この記事の最後では、惜しくもベスト5を逃したツールについてもいくつか取り上げます。まずは今回ご紹介するベスト5のサービスをご紹介します。
LastPass
Dashlane
KeePass
1Password
RoboForm
重要なのは機能性だけではありません。ユーザビリティ、サポート、セキュリティなども気になるポイントですよね。そこで、今回取り上げるすべてのパスワード管理ツールに備わっている基本の機能については、最初にまとめて説明してしまいます。
- パスワードの生成:安全と言えるパスワードは、自分でも覚えられないものだけ。さらに、使用するあらゆるサイトのあらゆるアカウントごとに、違ったパスワードを使うべきです。だからこそ、パスワード生成ツールの出番というわけ。今回取り上げるパスワード管理ツールには、どれもこの機能が備わっていて、ユーザーがウェブサイトに新しくアカウントを作るたびに、この作業を肩代わりしてくれます。
- フォームの自動入力:今回取り上げるパスワード管理ツールはどれも、氏名や住所などの個人情報をさまざまなサイトに自動で入力してくれます。パスワード管理という本来の目的には直結しない機能ですが、便利ですよね。
- パスワードの安全な共有:今回のパスワード管理ツールはどれも、パスワードをほかのユーザーに安全に送る方法を用意しています。ただし、方法はそれぞれ少しずつ違います。同僚や家族にパスワードを渡す必要があるなら、こうした機能を使うのが簡単で、しかも安全です。
- 安全なメモ領域:Wi-Fiネットワークのパスワードや、個人情報などを保存しておきたい場合に備えて、今回取り上げるパスワード管理ツールはどれも、セキュリティの高いメモ領域を用意しています。
では次に、それぞれのパスワード管理ツールの相違点を見ていきましょう。自分に合ったものを見つける参考にしてください。
『LastPass』
米LH編集部がもう何年も前から「とにかく入れとけ!」とオススメしているのが、『LastPass』です。これがあなたにとってもベストなツールだとは限りませんが、まずは一通り、特長を見ておきましょう。
- 各種ブラウザ用の機能拡張に加えて、Mac用には単体アプリも:さまざまなブラウザ用の機能拡張が用意されているので、一般的なブラウザならどれを使っていてもLastPassを利用可能で、わざわざ専用アプリをインストールする必要はありません。初期設定を済ませたら、ログインIDとパスワードの情報はLastPassのサーバー上に安全に保存され、どのパソコンからでも(機能拡張のインストールは必要ですが)アクセスできるようになります。Mac向けの単体アプリでは、ブラウザ向け機能拡張にはない特長がいくつか追加されています。検索が高速化されたほか、ウェブブラウザを使わなくてもパスワードの一覧の確認がしやすくなりました。
- モバイルアプリ:携帯電話やタブレットでもよくネットにアクセスするのなら、その場合にもLastPass経由でパスワードにアクセスできるようにしておきましょう。モバイル端末用アプリは無料なのですが、使用にはLastPass Premiumのアカウント登録(使用料は年12ドル)が必要です。AndroidとiOSに対応しているのはもちろん(今回取り上げるツールで、この2つに未対応のものはありません)、LastPassはWindows PhoneとBlackberryでも使えるのが特長です。
- パスワードの安全性チェック:LastPassは、ユーザーのパスワード一覧をスキャンして脆弱なパスワードをチェックし、よりセキュリティの高いパスワードを作るのを支援してくれます。セキュリティ度を採点して表示してくれるので、自分の使っているパスワードが全体的に見てどのくらい安全か一目でわかります。
- パスワードの自動変更:サイトがハッキングされたとわかったら、そこで使用していたパスワードは変更する、というのが一般的なお約束です(そのパスワードをほかのサイトで使い回していたなら、それも変えておくべきです)。LastPassはウェブ上のハッキング情報をデータベース化していて、アカウントを持っているサイトがハッキングされた際には、ユーザーにアラートを出してくれます。しかも、そこからわずかワンクリックでパスワード変更が可能です。
- 2段階認証:LastPassでは、『Google認証システム』 、乱数表を用いたグリッド認証、USBドングルの「YubiKey」をはじめ、さまざまな方法での2段階認証に対応しています。
『Dashlane』
LastPassは基本的なインターフェイスにやや難がありましたが、インターフェイスが実に優れているのが『Dashlane』です。さまざまな機能を盛り込みながら、あまりパソコンに詳しくない人でも、とても簡単に使えます。Dashlaneの特長を挙げていきましょう。
- 各種ブラウザ用の機能拡張と、Windows用、Mac用の単体アプリ:Dashlaneは主にデスクトップアプリで使うものですが、さまざまなブラウザ用の機能拡張も用意されており、デスクトップアプリのデータをブラウザと統合できます。Dashlaneのデータはオンラインに保存して端末間で同期することもできますが、パスワードの漏洩が心配なら、ローカルに保存する設定もできます。LastPassとは違って、ブラウザ機能拡張を使う場合でも、Windows用またはMac用の単体アプリのインストールが必要になります。
- モバイルアプリ:モバイルアプリは無料ですが、端末間の同期にはアカウント登録が必要です。Dashlaneでは年間ほぼ40ドル
かかります。
- パスワードの安全性チェック:Dashlaneの安全性評価画面はとても便利で、脆弱なパスワードや使い回しをチェックできます。ハッキングが報告されれば、ワンクリックでパスワード変更もできます。セキュリティ上の問題が報告されれば、ユーザーにアラートが送られます。
- パスワードの自動変更:Dashlaneを選ぶ決め手になりそうな機能のひとつが「Password Changer」です。Dashlaneアカウントにログインしたら、変更したいパスワードのチェックボックスすべてにチェックを入れるだけ。あとはDashlaneの側で、サイトごとに違ったパスワードをまとめて生成してくれます。
- 2段階認証:DashlaneはGoogle認証システムを使った2段階認証に対応しています。
- デジタル・ウォレット:Dashlaneのデジタル・ウォレットにはクレジットカード情報を登録しておけるうえ、オンライン決済のたびに自動で利用明細を保存し、スクリーンショットを撮っておいてくれます。モバイルアプリを使用している場合は、こうした情報も端末間で共有できます。
『KeePass』
まともに使えるパスワード管理ツールの中で、完全に無料なのはこの『KeePass』だけ。オープンソースなので、それだけで魅力を感じる人も少なくないでしょう。ただし、KeePassは後発のさまざまなツールとはかなり仕組みが違います。パスワードの保存先はローカルのみで、端末間の同期サービスはありません(一応、『Dropbox』経由でパスワードを同期するプラグインは存在します)。そのほかにも、KeePassの特長を並べると、ほかのツールとはかなり違っています。
- 公式アプリはWindows、Mac、Linuxに対応:正式公開されているアプリにはWindows用、Mac用、Linux用があります。システムに統合され、オンラインに限らずパソコンのあらゆる入力欄でパスワードの自動入力をしてくれます。オリジナル版のルック&フィールを少しだけ変えたクローンの『KeePassX』 もあり、ちょっと違うものを探している人にはこちらもオススメしておきます。
- 非公式ならモバイルバルアプリも:KeePassチームは公式にはモバイルアプリは一切作っていませんが、そこはオープンソース。有志作成のものがあります。iOS用、Android用、Blackberry用などさまざまなものがこちらにまとまっています。ただし、KeePassではモバイル端末への自動同期はしてくれないので、手動で対応する必要があります。
- ポータビリティ:KeePassはシステムにインストールしなくても動くので、USBメモリに入れて持ち運べば、複数のパソコンでの使い回しも簡単です。
- プラグインでさまざまな機能を追加可能:完全無料、オープンソースに加えて、もうひとつKeePassならではの点を挙げると、プラグインに対応していることです。プラグインを使えば、公式アプリの動作を完全に変えてしまうこともできます。例えば、『Google Drive』やDropbox経由でデータを同期できるようにするとか、検索機能をパワフルにするとか、パスワードの安全性レポートを作れるようにするとか。プラグインはここにまとまっています。
『1Password』
『1Password』も、LastPassやDashlaneと同様に、「シンプル・イズ・ベター」の立場に立ったパスワード管理ツールです。見た目の美しさは抜群。少し見た限りでは際立った機能はありませんが、ちょっとしたヒネリが効いていて、一部の人には受けそうです。主な特長を挙げてみましょう。
- Windows用、Mac用の単体アプリに、ブラウザ向け機能拡張を統合:1PasswordもDashlaneと同じで、デスクトップアプリをインストールしないと使えないのですが、『Chrome』『Firefox』『Safari』『Opera』の各ブラウザ向けに機能拡張が用意されていて、簡単に追加できます。1Passwordの良いところは、ローカルのみで使うか、デバイス間で同期できるようにウェブに上げるか、どちらでも選べるところです。同期には『Dropbox』、『iCloud』、Wi-Fi、共有のネットワークフォルダが使えます。デスクトップアプリはダウンロード販売されていて、シングルライセンスで50ドル。ただし、以降の課金はありません。
- モバイルアプリ:1PasswordにはiOS用とAndroid用の無料のモバイルアプリもあります。デスクトップ版を購入しなくても単体で使えるので、本当に無料のまま使えます。ただしその場合、デバイス間の同期は取れません。
- パスワードの安全性チェック:1Passwordでも、既存のすべてのパスワードをチェックして、使い回しや、脆弱なもの、長期間変更していないものを報告してくれます。「Watchtower」というパスワード監視サービスがあり、パスワードをすぐに変更したほうが良いセキュリティ上の問題が発生した場合はアラートを送ってくれます。
- 2段階認証:この記事で取り上げたほかのツールでは、サードパーティによるさまざまなサービスをサポートする形で2段階認証に対応していますが、1Passwordでは独自に認証を行う形で、有償アプリのみの機能です。この機能ではさまざまなサービスにおいて、ワンタイムパスワードを生成して使えるようになります。ただし、1Passwordのアカウント自体には、2段階認証でのアクセスはできません。これはかなりのマイナス要素となりそうです。
- デジタル・ウォレット:1Passwordにはこのほかに、さまざまな個人情報を安全に保存、管理できるデジタル・ウォレットが含まれていて、クレジットカードの情報や身分証のデータや社会保障番号など、必要なものを何でも登録しておけます。
『Roboform』
『Roboform』はかなり古くからあるパスワード管理ツールで、特に革新的なところはないけれど、大事な仕事はきちんとしてくれます。主な特長は以下のとおり。
- Windows用、Mac用、Linux用の単体アプリ:Roboformはこれらの主要プラットフォームで利用可能です。USBメモリでも動くので、複数のパソコン間での使い回しも容易です。『Chrome』、『Firefox』、『Internet Explorer』、『Safari』へも簡単に統合できます。1Passwordと同様に、パスワードをクラウド経由で同期するか、ローカル保存のみにするかを選べます。
- モバイルアプリ:RoboformにはAndroid用、iOS用、Windows Phone用のモバイルアプリがあり、どれも無料です。
- 「Start Page」:毎日のようにログインするサイトがいくつもあるのなら、Roboformの「Start Page」
が便利です。複数のサイトに一発で簡単にログインできます。
知名度ではあと一歩、そのほかの選択肢
記事の最初でも触れたように、パスワード管理ツールにはほかにも数多くの選択肢が存在します。ただ、ほとんどは、上に挙げた5つと機能性において大差はないものの、価格や対応プラットフォームなどの点で見劣りするものばかりです。とはいえ、上の5つではニーズに合わないという人に向けて、一見の価値のありそうなものをピックアップして紹介しましょう。
- 『Password Safe』:『Password Safe』はセキュリティの専門家、Bruce Schneier氏の助言の下に作られているので、手に入る限りのパスワード管理ツールの中で、セキュリティはもっとも堅固だと考えて良いでしょう。ただし、ありがちなことですが、そのぶん利便性は犠牲になっています。無料で使えるPassword SafeはWindows用だけで、Mac用のクローンはありますが、14.99ドルです。ブラウザに統合もできません。そもそも、パスワードの自動生成機能すらないのです。単に保管をしてくれるだけ。ただし、そのセキュリティはたしかに堅固です。
- 『Keeper』:『Keeper』は基本的なパスワード管理ツールの機能に加えて、便利なファイル保管機能も提供してくれます。価格はやや高めで、端末1台での使用だと年間約10ドル、台数無制限プランは年間約30ドルです。
- 『PasswordBox』:『PasswordBox』は無料のパスワード管理ツールで、期待されるような機能はすべて揃っています。ただし、現時点でオススメはしにくいです。というのも、Intel Securityグループに買収されたばかりの転換期にあるからです。発表を読む限り、良いニュースに思われますが、ソフトウェア・サポートが今後どうなるかは予測できません。
まだ迷っている皆さんに、最後のアドバイスを。何を選ぶかは問題ではありません、大事なのはとにかく何かを使うことです。もしパスワード管理ツールを一切使っていないとしたら、それは自分で思っている以上に危険な状態ですよ。
Thorin Klosowski(原文/訳:江藤千夏/ガリレオ)
Photo by Sergay Nivens.