アメリカ人は、炭酸水に年間15億ドルを費やしていますが、この泡の出る水に関しては、よくある誤解がいくつか存在します。骨に悪い、歯を溶かす、脱水症状を引き起こすことさえある、と言う人がいるのです。自分の好きな炭酸飲料も、もしかして体に悪いのでは......と心配な人は、この真実を知って、すっきりさっぱりしてください。

炭酸水が骨からカルシウムを溶出させることはない

炭酸水も、さまざまな飲料に含まれている炭酸ガスも、あなたの骨を弱くするようなことはありません。この誤解がどこで生じたのかは誰も知らないようですが、炭酸ガスによって骨からカルシウムが溶け出し、骨粗しょう症のリスクが上がる、という考えがいつの間にか広まったようです。この説を裏付ける証拠はありません。しかしあえて言うなら、コーラ飲料に含まれるほかの成分に、そうした作用があるという証拠がいくつか存在します。ハーバード・メディカル・スクールで医学博士のDouglas Kielが率いたある研究報告が『American Journal of Clinical Nutrition(アメリカ臨床栄養学誌)』に掲載されていますが、そこでは、(炭酸水を含む)さまざまな炭酸飲料のなかで、コーラ飲料のみが、高齢女性の低骨塩密度に関係するとされているのです。一方、男性被験者には、違いが見られなかったそうです。

また、こちらも『American Journal of Clinical Nutrition(アメリカ臨床栄養学誌)』掲載のものですが、クレイトン大学医学部のRobert Heaney医学博士が率いた別の研究で、同じことが示唆されているようです。つまり、骨からカルシウムを溶出させるのは、炭酸ガスのしわざではないということです。この研究チームは、問題の原因は、コーラに含まれるカフェインとリン酸であることを示唆していますが、この2つは、炭酸水には含まれていない成分です。炭酸があなたの美しい骨の構造に害を及ぼすことはないのです。

炭酸水が脱水症状を招くことはない

この誤解は本当に不可解ですが、ともかく炭酸水が脱水症状を招くようなことはありません。そのような証拠が存在しない(そもそもどういう理屈だかわかりません)ばかりか、実際は、正反対の効果があるのです(驚きですね!)。ジョンズ・ホプキンス大学公衆衛生大学院の公共政策学凖教授、Sarah Bleich 博士によれば、炭酸水を飲むのは、水を飲むのと同等の水分補給になるということです。唯一の小さなデメリットは、炭酸水のほうが水よりもお腹を膨らませるので、一度に飲める量が少なく、全体的な水分摂取量が減ってしまう可能性がある点です。ですから、のどが渇いたときに炭酸水を1杯飲むのはいいのですが、本当に水分補給をしようと思ったら、自分が飲みたいと感じるよりも多めに飲む必要がある、ということだけ覚えていてください。

逆に、減量のために食べ過ぎに注意している人には、炭酸水の満腹感が役に立つでしょう。食事と一緒に(あるいは食前に)炭酸水を1杯飲めば、満腹感が感じられ、食べる量が少なくなるのです。砂糖やカロリーを余計に摂らずに楽しめるさわやかな飲みもの――という、そもそものメリットももちろんあります。

炭酸水が酸蝕歯を引き起こす可能性はあるが、心配するほどではない

炭酸水が歯のエナメル質を浸食することは可能ですが、現実には、それほど心配する必要はありません。歯にダメージを与える主犯は、炭酸化の課程で生じる副産物です。水をオシャレな炭酸水に変えるには、冷たくした水に、炭酸ガスを高圧力で注入して溶け込ませるのですが、そのときにできるのが炭酸です。大半の炭酸水は、普通の水道水よりpH値が低い、弱酸性です。

炭酸水の酸性度も酸蝕性も、炭酸清涼飲料水(コーラなどの甘い炭酸飲料)には及びませんが、フレーバー付きの炭酸水には、フルーツ果汁と同じくらい酸性度の強いものもあります。『International Journal of Pediatric Dentistry(国際小児歯科学誌)』に掲載された、バーミンガム大学の研究者Catriona Brown氏率いる研究では、フレーバー付きの炭酸水が歯を浸食する作用は、(歯のエナメル質を弱くすることで知られる)オレンジジュースと同程度であることが示されています。その実験では、もっとも酸蝕性が高いのは、レモン、ライム、グレープフルーツのフレーバーであることがわかりました。それは、すでに炭酸が含まれているうえに、風味付けのためにクエン酸が添加されているからです。

『ジャーナル・オブ・オーラル・リハビリテーション』誌掲載の別の研究では、普通のミネラルウォーターやフレーバーの付いていない大半の炭酸水なら、歯へのダメージが非常に少ないことがわかっています。つまり、炭酸水が歯に影響を与える可能性はあっても、その悪影響は、最悪の場合でもフルーツ果汁(から砂糖の悪影響を差し引いた)程度だということです。バーミンガム大学歯学部のDamien Walmsley教授が『アトランティック』誌で説明しているように、炭酸水には、酸蝕歯を引き起こす、理論上のリスクはありますが、長期にわたって飲まなければ、実際にそこまで大きな影響を及ぼすことはありません。実験室の制御された環境ではたしかに酸蝕歯が発生するのですが、現実の世界で、本当にそのような被害が生じるほどの量を飲むことはないでしょう。歯を適切にケアしていれば、あまり心配は要りません。

炭酸水を楽しむための原則

以下のわずかな原則を守りさえすれば、炭酸水はまったく安全な飲みものです。

  • 過敏性腸症候群(IBS)を患っている人は、炭酸水(またはいかなる炭酸飲料)を飲まないこと。炭酸ガスの作用で、症状が悪化したり、お腹が異常に張って苦しくなったりする可能性がある。
  • 成分表示を読み、砂糖や人工甘味料が添加されている炭酸水は避けること――と勧めるのは、ニューヨーク大学ランゴーン医療センターの管理栄養士、Despina Hyde氏。 トニックウォーターなどの炭酸飲料やフレーバー付き炭酸水には、たとえカロリーゼロとうたわれていても、隠れた成分が含まれているので、十分注意する。
  • 風味付けにクエン酸が多く含まれた炭酸水を飲み過ぎないようにすること。前述のとおり、もっとも酸性が強い傾向にあるのはシトラス風味の炭酸水。
  • 酸性の強い炭酸水は食事のときに飲み、それ以外は、普通の水(もしくはプレーンな炭酸水)に――と言うのは、バーミンガム大学歯学部のDamien Walmsley教授。

結論的には、ごく普通の水にしておけば、いつでも安全確実ということです。とは言え、炭酸水は、ほかの炭酸飲料や加糖飲料の代わりに飲むには賢明な選択肢です。のどが渇いたときに飲む分にはかまいませんが、一生涯それしか飲まないというのはよくありません。

Patrick Allan(原文/訳:和田美樹)

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