人類の農耕のはるか以前にアリは植物を栽培していた
Nature Plants
2016年11月22日
能動的に植物を栽培し、身を守るためにそれに住み着くフィジーのアリが、今週の掲載論文で報告されている。今回の研究で行われたこの行動に関する進化的解析からは、そのアリが数百万年にわたって植物を栽培しており、人類による農耕をはるかにさかのぼることが示唆されている。
菌類を栽培するハキリアリや甲虫類など、複数種の動物は、他の生物を世話して育てる、すなわち栽培する互恵関係を発達させた。
Guillaume ChomickiとSusanne Rennerは今回、フィジーの島々で、Philidris nagasauというアリが少なくとも6種のSquamellaria属植物(体を支えるためにほかの植物や樹木に付着して地上で生育し、栄養素を求めて地面まで伸びることのない着生植物)を能動的に栽培していることを明らかにした。著者は、この昆虫がその植物の果実から種子を収集し、それを宿主樹木の割れ目に挿入することを発見した。割れ目の実生は中空の小室を形成してアリが絶えずそこを訪れ、幼植物体はアリが小室内で排泄を行うおかげで栄養素を得ることができるため、下界の豊かな熱帯土壌から離れたままで生育することができる。小室は成長し、一時的に訪れる働きアリおよび定住するアリのコロニーに営巣の場および身の安全を提供する。著者はこの相互作用について、既知のアリ・植物間の相利共生と異なり、条件的ではなく絶対的なものであることを指摘している。そのアリと植物は相互に依存しており、互いの存在なしには生存することができないのである。単独で栽培されたその植物は、支持体となった樹木の上でアリの道が交互に行き交う営巣ネットワークを形成し、その中心部に女王アリが鎮座することが分かった。
最後に、著者はアリと植物の両方に関する進化史を推測している。それによれば、この栽培行動は、植物が樹皮に着生するための特別な適応を発達させアリが播種行動を開始するという共進化により、約300万年前に生じたのではないかということである。
doi:10.1038/nplants.2016.181
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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