農薬を減らしても作物は育つ
Nature Plants
2017年2月28日
耕地の多くは低農薬にしても生産性や収益性がほとんど低下しないという報告が、今週のオンライン版に掲載される。この研究結果は、生産現場の多くで低農薬がすでに農家にとって受け入れ可能であることを示唆しており、環境保護や人間の健康にとって朗報である。
農薬使用量の削減は、増加する世界人口に食料を供給しながら持続可能な作物生産を達成するための鍵となる要件である。これまでの研究では、新しい生産戦略の採用が農薬使用量削減の一助となる可能性が示唆されている。しかし、作物の生産性および収益性に悪影響を及ぼすことなく大幅な削減を行うことができるのかどうかについては議論が続いている。
Martin Lechenetたちは、フランスの非有機耕地946カ所から得たデータを利用して、農薬削減と生産性、収益性との背反性を調べた。対象としたのは、広範囲にわたる生産現場および異なる農薬使用量をカバーする大規模で代表的な農地群のサンプルである。研究の結果、農地の77%では低農薬と生産性または収益性との間に全く背反性が認められず、背反性が認められた23%の農地は、主として農薬の使用に高度に依存する工業用作物と関係していることが分かった。
研究チームはその結果から、フランスの全農地の59%では、生産性や収益性に悪影響を与えることなく、農薬使用量を42%削減することができると推算した。これは、除草剤では37%、殺カビ剤では47%、殺虫剤では60%の使用量削減に相当する。
今回の研究は、農家および政策立案者に対し、環境の安全および社会の持続可能性のための適切な農薬使用量を知らせるための有用なデータを提供するものである。
doi:10.1038/nplants.2017.8
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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