【量子物理学】量子力学では巨視的な系を矛盾なく記述できない
Nature Communications
2018年9月19日
複数のエージェントが量子力学を用いてお互いの観測結果を予測しようとすると、常に矛盾した結果になることを明らかにした思考実験について報告する論文が、今週掲載される。この新知見は、量子論の現在の解釈を巨視的な(肉眼で見える程度に大きな)複雑系に外挿した場合に、それを矛盾なく記述できないことを示唆している。
さまざまな状態の粒子が同時に「重なり合って」存在する微視的世界は、量子力学を使うとうまく記述できる。しかし、量子論が普遍的妥当性を備えるには、量子論を使っているエージェント自身を含む複雑系をモデル化できることが原理的に望ましい。このことと、科学者が実験室環境で重ね合わせ状態の1つを測定するたびに単一の特定の値を経験するという事実を両立させる方法は、解明されていない。現在、この問題に対する解を与えるための量子力学の解釈が数多く存在している。
今回、Renato RennerとDaniela Frauchigerは、複数の観測者が関与する状況において、これらの量子力学の解釈の多くが現実を矛盾なく記述できないことを明らかにした。今回の研究で行われた思考実験では、4人の異なるエージェントが関与し、それぞれ異なる数量の測定を行った。全てのエージェントが量子論を使って自らの観測結果のモデル化をし、それぞれの観測者が単一の測定結果を得ると仮定した上でお互いの観測結果を予測すると、それぞれの観測者の観測結果は、他の観測者の予測と反対の結果になった。
この結果は、量子論を拡張して巨視的な系を対象に含めることは、これまで考えられていた以上に一筋縄ではいかないものであり、理論のさらなる発展が必要なことを示唆している。
doi:10.1038/s41467-018-05739-8
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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