惑星科学:探査機ドーンによるケレスの近接観測
Nature Astronomy
2020年8月11日
ケレスに関する探査機ドーンの2回目の延長ミッションの観測結果について報告する7編の論文が、Nature Astronomy、Nature Geoscience、Nature Communications に掲載される。一連の知見は、ケレスが海を持つ天体であり、最近まで地質学的に活発であった可能性のあることを示唆しており、この準惑星の歴史と形成にさらなる光を当てている。
探査機ドーンは、準惑星であり既知の小惑星帯天体として最大のものであるケレスを、2015年から2018年に燃料が尽きるまで周回していた。その最終段階で、探査機ドーンは、ケレス表面の上空わずか35キロメートルを軌道運動した。これは、2000万年前にできたオッカトル・クレーターに注目したものだった。このクレーターは、内部を起源とする塩水による明るい堆積物を示すことが、ドーンの初期のミッションで明らかにされていた。
今回Nature Astronomy に掲載される論文では、Carol Raymondたちが、ドーンからの高解像度の重力データと画像を解析し、オッカトル・クレーターの地下深くに大規模な塩水のリザーバーが存在することを明らかにしている。Raymondたちは、このリザーバーは、クレーターを形成した衝突によって地表へと噴出するようになった可能性があり、これがケレス表面の明るい塩の堆積物の形成に寄与したと示唆している。別の論文では、Maria Cristina De Sanctisたちが、オッカトル・クレーターの中心の最も明るい領域であるケレアリア・ファキュラの中心部に、塩化物塩水和物が存在することを報告している。塩化物塩水和物は急速に水分を失うことから、De Sanctisらは、塩水が現在も噴出している可能性があり、ケレス内部には塩を含んだ液体が今も存在している可能性があるとを示唆している。さらに別の論文では、Ryan Parkたちが、ケレスの地殻構造を調査した結果について、そして、Andreas Nathuesたちが、ケレスでは約900万年前に始まった低温火山活動の期間があり、これがつい最近まで続いていたことを報告している。
Nature Geoscience に掲載される論文では、Britney Schmidtたちが、オッカトル・クレーターの丘状の地形は、衝突によって生じた水の流れが凍ったときに形成された可能性があることを明らかにしている。これは、低温水文学的過程が地球や火星を超えて広がっていて、ケレスでは地質学的に最近まで活発であったことを示唆している。
Nature Communications に掲載される別々の2編の論文では、Paul Schenkたちが、水と塩が豊富なケレスの泥状の衝突溶融地形は、火星のものとは異なっていて火星よりも広範ではないことを示唆しており、Jennifer Scullyたちが、オッカトル・クレーター内の多様な明るい堆積物は異なる起源を持つ可能性のあることを示している。
出版後、これらの論文は、関連するNews & Viewsと共に、以下のURLに掲載されます。
https://www.nature.com/natastron/collections/dawnxm2
doi:10.1038/s41550-020-1168-2
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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