農業:持続可能な方法で飢餓を終わらせるための解決策のエビデンス評価
Nature Machine Intelligence
2020年10月13日
飢餓を終わらせるための持続可能な解決策を見いだすための取り組みに役立つ効果的な農業介入を明らかにした8編の論文が、今週、Nature Food、Nature Plants、Nature Sustainability に掲載される。Ceres2030の研究チームが、これまでに出版された50万編以上の論文と灰色文献を機械学習ツールを使って分析した結果、さらなる研究が緊急に必要とされる重要な分野が明らかになり、農業介入への支出の優先順位の決定に役立つ推奨事項が示された。
世界では、飢餓の影響を受けるようになった人が過去5年間で6000万人も増加し、今回のCOVID-19により、さらに1億3000万人が飢餓の危機に瀕している。国連の持続可能な開発目標の目標2(SDG2)は、2030年までに飢餓を終わらせ、食糧安全保障および栄養改善を実現し、持続可能な農業を推進するとしている。
23か国の78人の研究者からなる学際的なネットワークであるCeres2030チームは、農場レベルでの介入から、食料貯蔵を改善するための市場システムへの投資や、持続可能性を促進するための取り組みまで、食料システムの主要なトピックに関する現在の知見をまとめて8編の論文として報告している。著者たちはNature Machine Intelligence のPerspectiveで、機械学習モデルを用いて、50万編以上の学術論文や灰色文献を分析し、さらなる研究の対象となる論文を1週間以内という短期間で正確に決定した。システマティック・レビューを完了させるには通常は18か月から3年かかるが、機械学習を使用することで、全プロセスを数か月以内に完了させることができた。その結果、このアプローチはより時宜にかなったものとなり、緊急の危機に直面する政策立案者にとって有用なものとなった。
主な知見の1つに、低・中所得国の小規模農場の76.7%が水不足地域にあり、灌漑システムがあるのはそのうちの3分の1にすぎないという事実がある。家畜やデジタル技術の使用などの潜在的な解決策は、まだ評価されていない。著者たちはまた、農業従事者が気候変動への対応法に関する研修や助言サービスを受けることで、気候変動に強い作物を採用する可能性が高くなることも明らかにしている。その他の効果的な介入としては農民組織への加入が挙げられ、57%の事例で収入にプラスの効果をもたらしている。一方、若者に複数のスキルの訓練を提供するプログラムは、雇用水準と賃金を向上させた。
Nature Plants のEditorialは、「情報に基づいて体系的で合理的な意思決定を行う能力は、飢餓の悲劇との戦いに不可欠である」「これは必要かつ緊急であるだけでなく、Ceres2030が実証したように、達成できることでもある」と主張している。
本コレクションには、SDG2の盲点の潜在的なエビデンスを浮き彫りにするNature Plants のPerspective、COVID-19がアフリカの食糧安全保障に及ぼす影響に関するNature のNews Feature、そしてNature のEditorialも含まれる。
一連の論文は、解禁後に以下のリンクから閲覧することができる。 https://www.nature.com/collections/end-hunger
doi:10.1038/s42256-020-00235-5
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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