健康:高齢男性が大気汚染に短期間さらされることと認知機能障害との関連性
Nature Aging
2021年5月4日
高齢男性の場合、高レベルの大気汚染に短期間(最大28日間)さらされることが認知機能の低下に関連していることを明らかにした論文が、Nature Aging に掲載される。また、この論文は、一般的な鎮痛薬を処方されている被験者では、大気汚染への短期曝露による悪影響が軽減されたことを示唆している。
認知機能の低下は、高齢者によく見られるが、空気中の粒径2.5マイクロメートル以下の微小粒子状物質(PM2.5)への曝露などの環境要因によって加速されることがある。しかし、高齢者の認知機能に対する大気汚染への短期曝露の影響を検討する研究は不足している。過去の研究では、認知障害と認知症の治療法候補として非ステロイド系抗炎症薬(NSAID;アスピリンなどの、疼痛と炎症の軽減を目的とした薬剤群)の使用も検討された。しかし、NSAIDを使用して、大気汚染が認知上の健康に及ぼす影響を抑えるための介入を行うことは、これまで検討されていなかった。
今回、Xu Gaoたちのチームは、米退役軍人局標準的加齢研究に参加した米国の大ボストン地域に居住する高齢の白人男性計954人(平均年齢70歳)のコホートを対象とした研究を行った。Gaoたちは、被験者を複数回訪問し、全体的な認知機能とミニメンタルステート検査のスコアを用いて、被験者の認知能力を測定した上で、この測定結果を、各訪問日の大ボストン地域の大気中PM2.5濃度と各訪問日の1~4週間前の大気中PM2.5濃度の平均値と比較した。その結果、検査28日前までに大気中PM2.5濃度が上昇していた場合には、たとえ通常有害とされる濃度(10マイクログラム/立方メートル程度)を下回っていても、被験者の全体的な認知機能スコアの低下と関連していることが明らかになった。また、NSAIDを処方されている被験者は、大気汚染への短期曝露による有害作用の影響を受けにくいことも分かった。
Gaoたちは、今回明らかになった大気汚染への曝露と認知機能の関係やNSAIDの修飾作用の可能性を検証するためには、より詳細なNSAID使用情報が得られる大型コホートに基づいた集学的研究が必要だと結論付けている。
doi:10.1038/s43587-021-00060-4
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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