気候変動:気候温暖化によって、アルプス前地での地すべりハザードの増加が見込まれる
Communications Earth & Environment
2022年4月8日
オーストリアのアルプス前地では、地球温暖化によって気温が現在より4℃上昇すると、極端な降雨による地すべりの影響を受ける地域の面積が45%増加する可能性がある。このことを報告する論文が、Communications Earth & Environment に掲載される。温暖化を抑制することで、地すべりの影響を受ける地域の範囲を縮小でき、植林によって気候変動に強い森林を作り出すことで、増加した地すべりハザードをさらに緩和できるかもしれない。
地すべりは、大きな自然災害であり、気候温暖化による地すべりの発生については不確かな点が多い。2009年6月にオーストリアのアルプス前地で発生した豪雨は、3000件以上の地すべりを引き起こし、家屋からの避難を必要とする地域的非常事態に発展し、同国スティリア州に1300万ユーロ(約17億円)以上の損害を与えた。気候変動は、アルプス山脈の降水量を増加させると予測されており、将来の地すべりハザードを増加させる可能性が高い。
今回、Douglas Maraunたちは、2009年にオーストリアで発生した地すべりと類似した極端な地すべり事象が、気候温暖化と土地利用の変化という条件下でどのように展開し得るのかを調べるために、オーストリア南東部におけるさまざまな気候温暖化シナリオの下で、さまざまな降水量レベルのシミュレーションを行った。その結果、地球温暖化によって気温が現在より4℃上昇すると、この地域で地すべりの影響を受ける地域の面積が45%増加する可能性のあることが判明した。また、気温の上昇をパリ協定で定められているように1.5℃以下に抑えれば、影響を受ける面積は最大10%しか増加しない可能性があり、危機的な地域の農地やトウヒ林を気候変動に強い森林に置き換えれば、地すべりハザードの増加分が十分に相殺され得ることも明らかになった。
今回の知見は、気候変動緩和策の妥当性をはっきりと示し、森林を気候変動に適応させ、地すべりハザードを小さくするための積極的な土地管理の利点を強調している。
doi:10.1038/s43247-022-00408-7
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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