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Research Press Release

生態学:アカトビに一生残る干ばつの影響

Nature Communications

2022年9月28日

スペインのアカトビの個体群に関する研究から、干ばつの時期に生まれたアカトビ(Milvus milvus)は一生にわたって不利な状態に置かれることが明らかになった。アカトビの個体数は、一部の地域で減少しているが、アカトビの寿命が最長30年であるため、今回の知見は、極端な気候現象の影響が長期にわたって残るケースになり得ることを示唆している。この研究について報告する論文が、Nature Communications に掲載される。

極端な気候現象が、野生生物の群集に影響を与えており、この現象の発生頻度は、気候変動のために高くなってきている。しかし、生物の幼少期に起こった極端な気候現象の長期的影響は、気候変動の影響予測において見過ごされることが多かった。生物の個体が、成長初期にストレスの多い条件下に置かれると、生存能力や生殖能力とその後のストレスの多い時期に対するレジリエンス(回復力)に永続的な影響が及ぶ場合がある。

今回、Fabrizio Sergioたちは、スペインのドニャーナ国立公園に生息するアカトビの長期研究個体群を対象として、干ばつの影響を調べた。その結果、入手できる餌の量と親が雛に与える餌の量の両方が干ばつによって減少するため、渇水年には雛が痩せて、成鳥に達する雛の数が少なくなることが明らかになった。また、干ばつの時期に雛であった個体は、その後の干ばつの時期に生き延びるうえで有利にならなかったことも判明した。たとえ雛が干ばつを生き延びたとしても、その後の生存確率は、典型的な降水量の年に生まれたアカトビよりも低いという見解をSergioたちは示している。今回の研究では、干ばつの長期的影響が個体群予測モデルに組み込まれ、干ばつの長期的影響によって個体群サイズの予測値が40%減少し、絶滅待ち時間 が21%短くなることが分かった。

Sergioたちは、極端な気候現象の発生頻度が高まっていることの影響が、現在認識されている以上に大きく、個体数を減少させる勢いも現在の認識を上回っている可能性があると結論付けている。

doi:10.1038/s41467-022-33011-7

「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。

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