天文学:初期の火星はメタン生成微生物が生存可能な環境だった可能性が高い
Nature Astronomy
2022年10月7日
初期の火星の地表下は、水素を餌にしてメタンを生産する微生物が生息できる環境だった可能性が高いと考えられることを示したモデル化研究がNature Astronomy に掲載される。予測されたバイオマス生産量は、地球初期の海洋のバイオマス生産量に匹敵し、火星の初期の気候に全球規模の冷却効果をもたらした可能性がある。
37億年以上前の初期の火星における生命存在の可能性は、これまで多くの議論がなされてきた。赤い惑星は少なくともその歴史の一部で、生命の誕生に適した条件を備えていた可能性のあることを示す証拠があるが、このようなシナリオの可能性が定量的に評価されたことはほとんどなかった。
Boris Sautereyたちは、火星の初期環境と、地球上で最も古い生命体の1つと考えられているメタンを生成するハイドロゲノトロフ(水素を消費してメタンを生成することで生き延びる微生物)の生態系との間の相互作用をモデル化した。著者たちのシミュレーションから、火星の地殻はこの生態系にとって生存できる場所であり(ただし表面が氷で完全に覆われていない条件で)、地球の初期の海洋のバイオマスに似たものを生成した可能性があることと予測された。研究チームは、この生態系が火星の気候にフィードバック現象を引き起こし、火星全体を40 Kまで冷却し、表面に近いほど生存しにくい状況を作り出したと予測する。このことは、微生物が火星の地殻のより深いところへの移動を余儀なくさせたと考えられる。
今後のこととして、著者たちは、ヘラス平原、イシディス盆地、ジェゼロ・クレーターの3か所を、火星表面付近でこの初期のメタン生成生命体の痕跡を探すために最適な場所として特定した。
doi:10.1038/s41550-022-01786-w
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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