生態学:イタチザメの助けによって作成されたバハマ諸島の海草マップ
Nature Communications
2022年11月2日
海草生態系の一例として世界最大と考えられるバハマ諸島の海草生態系について、その特徴を記述した論文が、Nature Communicationsに掲載される。この知見は、計測機器を装着したイタチザメのデータ、人工衛星の観測データとダイバーの調査データに基づいている。
海草生態系は、炭素隔離、海洋生物多様性と漁業資源を支える重要な役割を果たしている。海草生態系に隔離される炭素は、1年間に海洋堆積物中に隔離される炭素の17%を占めると推定されている。そのため、海草を有効に保全することと、海草が自然に基づく気候変動の解決策となる可能性が、極めて重要になっている。しかし、現在のところ、その実現に対しては、海草生態系の規模と分布が明確になっていないことが障害となっている。
今回、Austin Gallagherたちは、こうした知識の不足に取り組むため、バハマ諸島のバハマ堆全体の海草生態系のマップを作成する革新的な方法を開発した。海草の生息地を好む傾向が強いイタチザメに計測機器を装着し、その位置を追跡しながら、海底の画像を収集したのだ。今回の研究では、15匹のイタチザメが使用された。次に、このデータは、人間のダイバーによる2500件以上の調査と合わせられて、海草の存在の評価が行われ、既存の海草被覆の推定値と統合された。Gallagherたちは、これらのデータに基づいて、バハマ堆の少なくとも6万6000平方キロメートルが海草に覆われており、それが最大9万2000平方キロメートルに達している可能性があるという見解を示し、それを前提として、バハマ堆が現在知られている世界最大の海草生態系になると主張している。またGallagherたちは、以上の推定によって全世界の海草域が約41%拡大することを示し、バハマ堆が地球全体に影響を与える炭素吸収源として重要なことを強調している。
Gallagherたちは、今回の知見は、海洋生態系に関する我々の知識の欠落部分を浮き彫りにしており、海洋の大型動物相を利用して海洋の生息環境の理解を深めることが有益なことを示していると考えている。
doi:10.1038/s41467-022-33926-1
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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