環境:米国内での大気汚染への曝露の格差を評価する
Nature Communications
2022年11月2日
米国内で居住地域が分離された特定の人種・民族集団は、既知の有毒金属と発がん性金属の質量割合が3倍高い大気汚染にさらされていることが研究によって示唆された。この知見は、一部の人口集団が、過度の大気汚染の負荷に直面していることを示しており、大気汚染への曝露を減らすための規制を策定する際に役立つ情報となる可能性がある。今回の研究について報告する論文が、Nature Communicationsに掲載される。
人種による居住地域の分離は、人口集団が人種や民族によって分離されることを意味し、1つの居住地域に暮らす特定の人種や民族の割合が、もっと広い地域の人口集団において占めると予想される割合を上回っている。微小粒子状物質(PM2.5)は、直径が2.5マイクロメートル未満の化学的粒子からなる大気汚染の一種だ。先行研究によると、米国の人口集団の一部において、特にPM2.5への曝露による大気汚染への過度な曝露が見られる。しかし、M2.5に含まれる特定の有毒な化学元素への曝露が、人種によって分離された居住地域にどのように分布しているのかという点は、ほとんど解明されていない。
今回、John Kodrosたちは、2014〜2019年の大気汚染観測データとAmerican Community Surveyのデータを合わせて、アメリカ全土での大気汚染への曝露を評価した。その結果、人種による分離度の高い居住地域では、住民が曝露した粒子状物質の総量の濃度が2倍高く、人為的に生成された金属の濃度が10倍以上高いことが分かった。また、Kodrosたちは、これらの居住地域が、既知の有毒金属と発がん性金属(鉛、ニッケル、クロムなど)の質量割合が3倍高く、毒性がさらに高い大気汚染にさらされていたという見解を示している。
Kodrosたちは、規制措置によって過度の曝露を減らすことができることを示す証拠を発見したと述べ、最近の船舶用燃料油に対する規制によってバナジウムの濃度が低下し、人種によって分離された居住地域が直面する大気汚染リスクが軽減されたことを強調している。またKodrosたちは、この規制は、特にバナジウムを狙い撃ちしたものではなかったが、結果的に人為的な金属の排出に対する規制が大気汚染への曝露の格差を縮める可能性を示していると主張している。
doi:10.1038/s41467-022-33372-z
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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