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Research Press Release

疫学:英国におけるSARS-CoV-2院内感染の評価

Nature

2023年10月19日

英国では、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の「第2波」が発生した2020年6月から2021年3月までに、国民保健サービス(NHS)の病院で入院患者9万5000~16万7000人が入院中に重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)に感染したという推定結果が得られたことを報告する論文が、Natureに掲載される。この知見は、SARS-CoV-2の院内伝播の規模を明らかにし、個室の少なさなどの要因を明確に示している。

SARS-CoV-2の院内伝播が起こると、臨床的に脆弱な人々がリスクにさらされ、医療従事者に悪影響が及び、市中感染が起こりやすくなる可能性がある。しかし、院内伝播の程度と要因を定量化する試みは行われてこなかった。Ben Cooperらは、こうした知識の空白に取り組むため、英国内のNHS急性期病院トラスト(145組織単位)のデータを評価した。これらのトラストには、356の病院の合計約10万床の病床が含まれる。また、このデータには、SARS-CoV-2の院内感染者数、SARS-CoV-2を原因とするスタッフの欠員数、想定感染源の分類が含まれていた。

このデータでは、2020年6月10日から2021年2月17日までにSARS-CoV-2に院内感染した入院患者数について、医療関連の感染であることが確定した人が合計1万6950人、医療関連の感染である可能性が非常に高い人が合計1万9355人と分類されていた。Cooperらは、このデータにおいて院内感染者の分類に用いられた定義では、病院内でSARS-CoV-2に感染した人の約26%しか捕捉できない可能性があると推定した(例えば、多くの患者が検査で陽性となる前に退院している可能性がある)。そのため、Cooperらは、報告された感染者数と上記の分類システムによって捕捉されなかった研究対象期間中の感染者数の比率を考慮に入れて計算し、研究対象期間中の院内感染者数の推定値は9万5000~16万7000人という結果を得た。つまり、全入院患者の1~2%がSARS-CoV-2に感染していたことになる。

Cooperらは、ゲノムデータがないために院内感染が起こったことを断定できないが、今回の知見は、ゲノムデータが利用可能な地域レベルの観察結果と一致していることを指摘している。SARS-CoV-2の病院関連感染率にはかなりのばらつきが見られ、北西部地域で最も高く、南西部地域とロンドン地域で最も低かった。感染率が高いことに関連する要因としては、個室の設置数や病棟内の暖房の少なさがあった。医療従事者のワクチン接種は、感染率が低いことと関連していた。Cooperらは、これらの知見を考慮に入れることは、院内感染を減らすための対策を立てる上で有益であり、そうした対策が、臨床的に脆弱な人々や医療従事者を守るだけでなく、市中感染を減らせる可能性があると結論付けている。

doi:10.1038/s41586-023-06634-z

「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。

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