Research Press Release
SOD1を折りたたむ
Nature Neuroscience
2010年10月18日
筋萎縮性側索硬化症(ALS)、別名ルー・ゲーリック病は運動ニューロンの進行性細胞死が特徴で、確実に死に至る。ALS患者の少数はスー パーオキシドジスムターゼ1(SOD1)というタンパク質を指令する遺伝子に遺伝性の変異をもち、そのためタンパク質に立体構造変化が生じて 正常に機能しなくなる。しかしALSの90%以上は散発性で、関連の明らかな危険因子や遺伝要因はない。今回Nature Neuroscience(電子版)に発表される研究によると、散発性ALS患者のSOD1にも類似の構造変化があり、遺伝性ALSの一部にみられる SOD1変異体と同様に運動ニューロンの細胞死をまねく可能性がある。
D Bosco、R Brownらは変異SOD1、遺伝子に変異のないALS患者のSOD1、酸化による損傷(一般に細胞ストレスで生じ、ALSの一因と思われる)を受けた正常SOD1を調べ、3つのタンパク質がどれも同じ特異的な形に変化していることを見いだした。SOD1が正常に折りたたまれないと、運動 ニューロンは軸索輸送に支障を来し、死に至る。
これらの発見により、SOD1の特徴的な形の変化は、ほとんどの型のALSで細胞死の一般的な原因となることが示唆される。したがって遺伝性 ALSはモデルマウスを作製しやすいので、これを調べれば今後あらゆるALS患者に有効な治療法が発見できるかもしれない。
doi:10.1038/nn.2660
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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