【地球科学】南極マクマードドライバレーの奥底にあるもの
Nature Communications
2015年4月29日
南極のマクマードドライバレーの地下に存在する大規模な海水塊に微生物が生息している可能性が明らかになった。今回の研究では、マクマードドライバレーの表面に点在する凍結湖が広範囲に及ぶ地下水網によってつながっていることが初めて明らかになった。この研究の詳細を報告する論文が、今週掲載される。
マクマードドライバレーは、南極で氷のない最も広大な地域で、かなり異質な地形を有し、氷河、孤立湖、凍土が存在している。特に奇妙な地形的特徴が「血の滝」で、高塩分の赤い雪解け水がテイラー氷河からボニー湖へ注ぎ込んでいる。この塩水には、多様な微生物群集が含まれていることが明らかになっており、より深い場所に塩水生態系が存在していることを示すものと考えられている。しかし、この地域に関する知識は、地表のものに限られており、マクマードドライバレーの薄い永久凍土層の下は氷で固められた土壌が多くを占めているというのが通説的理解だ。
今回、Jill Mikuckiたちは、ヘリコプターに搭載した電磁センサーを用いて、マクマードドライバレーの地下に存在する物質の温度と水分含量のマップを作成した。その結果、マクマードドライバレーは氷で固められているのではなく、氷点よりかなり低いが、微生物の生息に適した温度の塩水による地下水網を有していることが明らかになった。
この新知見は、この地中深くの塩水の地下水系がマクマードドライバレーの複数の湖を結ぶ水路になっており、テイラー氷河の突端部から流れ出す真紅の塩水の水源である可能性を示しているが、地中深くに塩水生態系が存在しているのかどうかを判断するにはさらなる証拠が必要だ。
doi:10.1038/ncomms7831
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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