人気職業「声優」 技量や人気でギャラ決まる実力世界
日経エンタテインメント!
一昔前までは、「顔は出ないが芝居ができる」こともあり、劇団所属の役者が副業としてやることが多かった声のお仕事。2000年代に入り、多数のアニメ作品が制作され、洋画の字幕離れが進み吹き替え版が増える中、"声優"は若者の間で定番の人気職業となっている。村上龍の著書から立ち上がった「13歳のハローワーク公式サイト」の人気職業ランキングでも、マンガ家やアナウンサーを上回り、スポーツ選手、パティシエなどに続く第6位だった(2014年2月1~28日調査)。
洋画や海外ドラマ(業界用語で「外画」という)の吹き替え、アニメキャラクターボイス、ナレーションの3つをバランスよくこなすのが、人気者の王道という。そのギャラの仕組みはどうなっているのか。
新人のギャラは「1本1万5000円」に決まっている
声優になるには、中学・高校を卒業してから、もしくは並行して専門学校や養成所に通い、事務所の預かりか所属となった後にデビューするのが一般的。事務所に入り、俳優が加入する協同組合日本俳優連合(以下、日俳連)に「新人登録」されリストに載ることで、作品出演への俎上(そじょう)に上るというわけだ。
新人は「ジュニア」と呼ばれ、30分のテレビアニメだろうが、2時間の長尺だろうが、1本あたりのギャランティは1万5000円と決まっている(CS放送は除く)。
この「基本料金」はランク化されており、新人扱い(ジュニア)は3年間で、以降、「ランク15」(1万5000円)、「ランク16」(1万6000円)と、技量やキャリア、人気の度合いで数字が増えていく。
ランク15以降は、作品の長さに比例する「時間割増率」、2次利用時の「転用料率」が、基本料金に対して規定のパーセンテージで掛けられ、数万円単位のギャラとなる。なお、リストはアニメと外画で分かれて用意されており、外画ではランク15だがアニメではランク16という場合もある。
若くて上手、引っ張りだこになる条件
制作費の圧縮など予算管理が厳しいなか、プロデューサーや演出家は、1本あたりの制作費を見渡して、オーディションに呼ぶ、または一本釣りで起用する声優を選んでいく。声優のギャラは、ランク化&リスト化されているため、ある意味選びやすいといえる。
こうした中、外画で重宝されているのが、「ランクはジュニアながら、フケ役、大柄な黒人や太った白人といったゴツめ、ダブリ(兼役)ができる人」なのだとか。最近では30代や40代から声優を始める人も少なくないため一概には言えないが、基本料金は経験値の高い人、つまり年齢が上の人ほど高くなる傾向にある。前出の役は脇役のことが多く、出演料を抑えたいところ。また、1作品で複数の役をこなせる人がいれば、出演者の人数を減らせる。"若くて上手"に越したことはないというわけだ。
そうした声優たちは、通称「スーパージュニア」と呼ばれる。彼らは月~金曜まで毎日2~3本、週末は長尺の劇場版といった具合にぎっしりスケジュールが詰まっていて、「どの現場にもいる」状態なのだとか。
劇場未公開のDVD、最近ではBSやCSなど予算が少ないところで番組数は増えており、若手が重宝される状況は続きそうだ。一方で、ジュニアからランクがついた途端、仕事が激減する人も少なくない。アニメが特にそうだが、主要キャストは声や芝居がキャラクターにマッチすることが第一なので、大物・新人に関係なくオーディションが主流。結局生き残るのは、「ジュニア時代からうまくて数をこなしてきた人」なのだ。
(日経エンタテインメント!編集部)
[日経エンタテインメント! 2014年5月号の記事を基に再構成]
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