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政治家と有権者の新たなコミュニケーション

 平沢勝栄・衆議院議員のミクシィ・オフ会「平沢勝栄・ミクシィ会員懇親会」が2008年7月23日、「かつしかシンフォニーヒルズ」(東京都葛飾区)にて開催された。平沢議員はSNSサイト「ミクシィ」の会員であり、マイミクも300人を超える。

 オフ会は平沢議員自らがミクシィ上で呼びかけることで実現した。オフ会に参加したのは60名程度である。参加者の大半は平沢議員の選挙区である東京17区(葛飾区、江戸川区小岩地域)の住民である。

 オフ会では冒頭で発案者の御堂岡啓昭氏が挨拶した。御堂岡氏は特に若年層の有権者と政治家のコミュニケーションの起点として、人と人との繋がりを促進するSNSに着目し、ミクシィ上でのオフ会開催を平沢議員に提案したという。

 続いて作家の村野まさよし氏が「今日は平沢先生が帰りたくなるような厳しい意見をぶつけて欲しい」と挨拶した。

 平沢議員の挨拶では選挙や政局、外交問題など幅広い話題について深い指摘がなされた。特に印象を受けたのは政治家の心構えについてである。平沢議員は、政治家の問題として、特定の人の意見ばかり聞いているから間違えると指摘した。

 招待された会合に行き、床の間に座って心地よい意見ばかり聞いていたらダメと言う。苦言を呈する人の声に耳を傾けなければならないとする。普段、接する有権者は年齢の高い世代に偏りがちのため、本日のオフ会で忌憚のない意見を聞きたいとした。

 時間の関係で最後まで回らなかったものの、参加者からは1人ずつ自己紹介と議員への質問を行った。

 参加者の大半がハンドルネームで自己紹介したところに、オフ会らしさがある。質問では格差社会や竹島問題、投票率低下、食料自給率、後期高齢者など様々なテーマから出された。参加者の政治意識の高さをうかがわせるオフ会であった。

 記者は過去記事でも度々言及している不動産トラブル経験に関連して(参照:東急不動産の遅過ぎたお詫び)、「困っている状況に置かれた人には自民党は敷居が高いのではないか。格差社会が深刻化する中で他党に遅れをとるのではないか」と指摘した。

 これに対し、平沢議員は議員として多くの陳情や相談を受けていると説明した上で、格差の固定化は回避しなければならないと回答した。また、格差社会のセーフティーネットとなる社会保障制度では、たとえば医療制度の国民皆保険・フリーアクセスは外国に誇れる内容であり、維持しなければならないと主張した。

 平沢議員は著書『政治家は楽な商売じゃない』の章題に「勝栄流・ドブ板選挙」とあるとおり、ステレオタイプ的な分類をするならば徹底したドブ板選挙を行っていた政治家である。その平沢議員がオフ会を行ったことは興味深い。

 別記事「「ネット選挙運動」シンポに参加して(上)」で紹介したシンポジウムでは旧来型のドブ板選挙と新しい形態であるネット選挙運動を対比させる傾向にあった。

 これに対し、平沢議員の場合は前者を徹底させた上で、後者も追求する。ドブ板かネット選挙かという二者択一の選択ではなく、両者ともに積極的であることを示している。

 従来型の個人後援会では、地域共同体や職能団体と関係の薄い新住民、とりわけ若年層を組織化することには限界があった。彼らとコミュニケーションを深めることは政治家にとっても、地域政治から疎外される傾向にある彼ら自身にとっても大きなメリットがある。

 そして彼らとの接点としてインターネットは有効なコミュニケーション手段となる。平沢議員は2回目、3回目と会を重ねたいとしている。有権者と政治家の新たなコミュニケーションを構築する試みに期待したい。