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仮想化ベンダは、別々の道を目指す

2010年3月5日

シトリックスとヴイエムウェアという2つの仮想化ベンダが、国内でほぼ同時に今後の戦略を発表しています。両社の戦略を見ると、仮想化ソフトウェアの機能競争は終わり、仮想化ソフトウェアを使って何をするのかという、仮想化を基盤としたアプリケーションの競争へ入ったことが明確に分かります。

VMwareはクラウドとSaaS、シトリックスは仮想デスクトップ

ヴイエムウェアは3月3日、米VMwareの社長兼CEO ポール・マリッツ氏が来日し直々に戦略を発表。戦略の柱となるのは、パブリッククラウドおよびプライベートクラウドを構築する基盤ソフトウェアとしてvSphereを推進していくこと、および、SaaSアプリケーション基盤としてZimbraを、クラウド向け開発環境としてSpring Frameworkを推進していくことを明らかにしています。

一方のシトリックス・システムズ・ジャパンは2月24日、2010年の戦略発表会を開催。米Citrix Systems CEOのMark Templeton氏はビデオメッセージの中で「仮想化を利用して、ITをオンデマンドサービスとして提供する」ことにフォーカスすると発言。具体的には、同社が先駆者として開拓し続けてきたデスクトップ仮想化を、市場のメインストリームテクノロジとして推進することに注力することを表明しています。

それ以外の仮想化ベンダを見てみると、マイクロソフトはWindows Server 2008 R2に組み込まれた「Hyper-V 2.0」で、機能的な面で先行してきたVMwareをほぼキャッチアップし、今後はWindows Server 2008 R2の主要な機能の1つとしての利用を推進。サン・マイクロシステムズを買収したことでOracle VMとxVMなど複数の仮想化製品を保有するに至ったオラクルからは、特に仮想化に関して目立った動きは感じられません。

仮想化の上でどんなソリューションが展開できるかが焦点

仮想化を実現するハイパーバイザーは、かつては値段の高い特別なソフトウェアでしたが、機能での差別化は徐々に薄れ、無料で配布する動きも重なったことでコモディティ化してきました。その過程でベンダの数も減ってきました。

そしてヴイエムウェアとシトリックスの戦略に特に表れているように、「仮想化があるのは前提で、その上でどんなソリューションが展開できるか」が今後の焦点になっています。その1つがヴイエムウェアが注力するクラウドであり、SaaSであり、シトリックスが注力する仮想デスクトップです。しかもシトリックスは「ハイパーバイザーには依存しない」としており、競合他社のハイパーバイザーにも対応する姿勢を見せています。

マイクロソフトは仮想化をOSの機能強化に使い、オラクルは垂直統合の一部として仮想化を組み入れています。

仮想化ベンダは、それぞれが得意とする分野へと別々の道を進むソフトウェアベンダへと変わっていこうとしています(もともとシトリックスはXenSourceを買収することで仮想化ベンダになったわけで、先祖返りともいえますが)。この先、両社を「仮想化ベンダ」とくくることよりも、ハイパーバイザーも提供しているソリューションベンダ、アプリケーションベンダとして見ることの方が自然になるのでしょう。

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Junichi Niino(jniino)
IT系の雑誌編集者、オンラインメディア発行人を経て独立。2009年にPublickeyを開始しました。
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