不思議の国のアリスと言えば、誰もが一度は聞いたこと・見たこと・読んだことがある、1865年に出版された児童文学。アリスがここまで世界的に有名になったのは、その物語の素晴らしさもさることながら、物語の中の挿絵の美しさやユニークさもあってこそ。挿絵(つまりアートワーク)は、版によって、時代によって、また国によって様々に違う人が描いたアリス本が出版されています。 一番有名なのは、初版の挿絵を手がけたジョン・テニエルだと思いますが、現在では、飛び出す絵本で有名なロバート・サブダが最も人気。そのサブダの人気を脅かすこと間違いなしの一冊が、今回ご紹介する草間彌生がアートワークを手がけたアリス本です。
イギリスの作家Lewis Carroll(ルイス・キャロル)の名作を草間彌生の挿画で装飾した「不思議の国のアリス With artwork by 草間彌生」は、昨年イギリス版が刊行され、楠本君恵が翻訳を担当した日本語版。これまでの作品概念にとらわれない自由な着想のアートを通じて、解放感や楽しさを感じさせる全194ページの愛蔵版に仕上がっています。 アリスが不思議の国に落ちていく場面では、皆さんご存知の「Down, down, down」の言葉に添えられた、落ちたら二度と戻って来れそうにないドットのアートワーク。文字と水玉の配置のバランスにもうなってしまいます。
アリスが不思議の国で伸び縮みする場面では、大小の文字を組み合わせたタイポグラフィーを採用。
挿絵として使われている草間作品を堪能できるのはもちろん、物語の場面にあわせてユニークなデザインで文章を読ませる工夫が至るところにしてあります。優れたグラフィックデザイン本としても楽しめるのも注目すべきところです。 日本語版にのみ「わたくし草間は今を生きるワンダーランドのアリスです」と、草間彌生のあとがきが掲載されています。価格は2,500円(税別)。ポップ&ちょっとダークで、かつスタイリッシュなアリス本を、皆さんもぜひ手にとってみてください。 Penguin Classicsにより製作された、「Alice’s Adventures in Wonderland」の紹介Youtube動画も素敵ですのでぜひチェックしてみてくださいね。