小池水音「あなたの名」(220枚)
日比野コレコ「愛すのぢゃーにぃ」(200枚)
対談 東 浩紀+先崎彰容「本居宣長とルソー――文学の価値を再定義する」
新潮 2024年12月号
(毎月7日発行)
発売日 | 2024/11/07 |
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JANコード | 4910049011249 |
定価 | 1,200円(税込) |
◆あなたの名[二二〇枚]/小池水音
余命宣告を受けたわたしは、AIに自分の人生を《記録》する。娘とお腹の命に何を遺せるか。大切な景色を手繰り寄せる、最期のドラマ。
◆愛すのぢゃーにぃ[二〇〇枚]/日比野コレコ
容姿に屈託を抱えるまつりと、社会から疎外されたハルタ。革命が不可能な世界を「箱舟」で渡ろうとする若者たちの超現実的冒険譚!
◆デヴァターとアープ/高山羽根子
内戦でシステムが破壊された国カンボジアで、東洋のモナ・リザと女性のお化けが交差する。
■■ 連載小説 ■■
◆Ifの総て(六)/島田雅彦
◆湾(七)/宮本 輝
◆荒れ野にて(八十)/重松 清
【祝・ノーベル文学賞!】
◆物語の中で木と鳥が人を見ている――ハン・ガンの世界を歩く/斎藤真理子
作中に頻出するモチーフが象徴するもの――翻訳者による、愛に満ちた決定版作家紹介!
【リレーコラム】街の気分と思考(34)
◆どこかわからないここで/村田沙耶香
◆頭上の影/伊藤亜紗
■■ 新潮 ■■
◆「三島由紀夫生誕100年祭」について/井上隆史
◆文学から漫画を立ち上げるには――歴史・実践・腰砕け/川勝徳重
◆namelessかおり/市街地ギャオ
◆雨は上がって/新庄 耕
第57回《新潮新人賞》応募規定 [ウェブ応募受付中!]
【選考委員】上田岳弘/大澤信亮/小山田浩子/金原ひとみ/又吉直樹
◆【対談】本居宣長とルソー――文学の価値を再定義する/東 浩紀 先崎彰容
十八世紀に生き、共通点の多い二人の思想家を通して家族の概念や沈黙の意味を捉え直す。
【ロングインタビュー】
◆失われた日本を求めて/水村美苗(聞き手・鴻巣友季子)
十二年ぶりの大作『大使とその妻』。翻訳の困難の果てに、世界文学の可能性が見えてくる。
追悼・福田和也
◆特異批評家、身罷る/島田雅彦
◆隔たりと瘢痕/柳美里
◆福田和也先生と私/大澤信亮
◆雅とまねび――日本クラシック音楽史(二)/片山杜秀
◆触れるポートフォリオ――第六回 あなたの顔は(後編)/島本理生
◆小林秀雄(一一二)/大澤信亮
◆料理の人類学のかたわらで/藤田 周
第六回・レフェルヴェソンス、失われることのない感覚と景
◆見えない音、聴こえない絵/大竹伸朗
第二三二回・人類最古のコラージュ
【私の書棚の現在地】
◆ステファン・テメルソン『缶詰サーディンの謎』、ローレンス・ハウスマン『中国のフェアリー・テール』/【書評委員】市川沙央
◆エマヌエーレ・コッチャ『家の哲学 家空間と幸福』/【書評委員】古川真人
■■ 本 ■■
◆平野啓一郎『富士山』/上田岳弘
◆今福龍太『霧のコミューン』/木村友祐
◆小池水音『あのころの僕は』/向坂くじら
◆星野智幸『ひとでなし』/豊崎由美
◆福尾 匠『非美学 ジル・ドゥルーズの言葉と物』/星野 太
◆島田雅彦『大転生時代』/渡辺祐真
この号の誌面
立ち読み
編集長から
小池水音「あなたの名」
真の「保守」のあり方
◎小池水音氏はデビュー作以来、喪失のトラウマを抱えた家族の物語を描き続けてきた。だが最新中篇「あなたの名」ではカメラの位置が切り替わり、病により死にゆくのは語り手の「わたし」となる。血の繋がらない娘は《記録》なるAIサービスで生前の母の保存を試み、間もなく生まれる子どもの名付け親になってほしいとも頼む……虚構の果ての真実を追い求める作家の挑戦と死生観の深化を、読者に確かめていただきたい◎東浩紀氏と先崎彰容氏の対談では、本居宣長の「もののあはれ」論の読解を通して現代の文学者たちへの問題提起がなされ、『大使とその妻』をめぐる水村美苗氏のロングインタビューでは、作品に込められた「失われた日本」への憧憬が留学時代の甘美な記憶も交えて語られた。一方、大澤信亮氏による「福田和也先生と私」は、先ごろ他界した恩師に対する渾身の応答=批評文である。図らずも真の「保守」のあり方や、今この国で文芸に関わることの意味を問い直す号となった。
編集長・杉山達哉
バックナンバー
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雑誌から生まれた本
新潮とは?
文学の最前線はここにある!
人間の想像力を革新し続ける月刊誌。
■「新潮」とはどのような雑誌?
「新潮」は日露戦争の年(1904年)に創刊された、百歳を超える文芸誌です。現役の商業文芸誌としては世界一古いという説があります(ただし第二次大戦中は紙不足のため数号、関東大震災のときは1号だけ休刊)。その歴史の一端は小誌サイト内にある〈表紙と目次で見る「新潮」110年〉でご覧ください。
■革新し続ける文学の遺伝子
もちろん古いことと古臭いことはまったく別です。百余年にわたり、たえず革新を続けてきたことこそが「新潮」の伝統であり、その遺伝子は現編集部にも確実に引き継がれています。ケータイ小説やブログ、あるいは電子配信、電子読書端末まで、いまだかつてない〈環境変動〉がわたしたちの生に及びつつある今、時代精神を繊細に敏感に感じ取った小説家、批評家たちが毎月、原稿用紙にして計1000枚以上(単行本にして数冊分)の最新作を「新潮」を舞台に発信し続けています。
■日本語で表現されたあらゆる言葉=思考のために
デビュー間もない20代の新人からノーベル賞受賞作家までの最新作がひとつの誌面にひしめきあうのが「新潮」の誌面です。また、文芸の同時代の友人である音楽、映画、ダンス、建築、写真、絵画などの領域からも、トップクラスの書き手、アーティストが刺激的な原稿を毎号寄せています。文芸を中心にしっかりと据えながら、日本語で表現されたあらゆる言葉=思考の力を誌面に結集させたい――それが「新潮」という雑誌の願いです。