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エクアトゥール/麻布十番

L'equateur。食べログ4.63で全国トップ50入り。エクアトゥールとはゼロ地点(赤道)という意味らしく、なんとも意味深な店名です。
特筆すべきは予約の取り辛さ。マンションの1室にある小さなお店で、シェフとマダムのふたりで運営しているためどうしても客数が限られるのです。私はお邪魔する数ヶ月前になんとか予約を入れることができました。
予約システムも面白い。webからの事前決済制度で、キャンセルなどは一切不可。行けなくなったのであれば、知人にその権利を譲るという仕組みです。
この考え方には大賛成。世の中には飲食店と歯医者と美容院の予約を甘く見ている輩が多すぎる。窃盗よりもタチが悪い。刑事罰にしても良いぐらいです。

海外のopentableは事前にクレジットカードを登録しておき、ドタキャン客からも問答無用で代金を引き落とすのが普通なので、是非日本でもそのようなルールを導入して欲しいところ。
乾杯はドラピエ。ミレジム(優れた収穫年にのみ限定で生産される)で行きます最高か。

泡は繊細で控えめ。複雑性を帯びた花やジャムの香り。ボリューム感とコクを楽しむシャンパーニュ。
キンカンをくり抜き、フォアグラのムースを詰めてキャラメリゼしたもの。アミューズでこの手の込みよう。フォアグラのコクとキャラメルの香ばしさが先のシャンパーニュと一致団結。
香箱ガニにコンソメのジュレ、甲殻類のソース。まず、ソースが旨い。コンソメが旨い。こういうベーシックな部分に心から信頼を寄せることができる店は中々無い。繊細かつ大胆。当店のシェフの実力は本物です。賭けてもいい。
ナッツをたっぷりと湛えたパン。ううむ、ここ数年で食べたパンで最も美味しいです。こんなに美味しいパンはロブション以来か。
サーロインに牡蠣、キャビアに自家製のメンマ。メンマ?と思わず聞き返してしまいましたが、間違いなくメンマでした。

この豪華食材のオンパレードはトゥ・ラ・ジョアを彷彿とさせますが、完成度は全く別物。調和しているんです、完璧に。メンマのシャキシャキとした歯ごたえも堪らない。これは紛れも無くセンスであり、努力してどうにかなる料理じゃないと得心しました。
オーセイ・デュレスの78。私の姉の生まれ年です。さすがに枯れた色かつマイルドなタンニン。泡の次がいきなりの古酒で面食らいましたが、これがまた先の皿にぴったりなんだな。
こちらのパンは標準的。最初のパンが美味し過ぎたのかもしれません。
白トリュフにフカヒレ、オマール海老。思わず口笛を吹きたくなる組み合わせです。たきやを想起させる贅沢さ。白トリュフの香りやエキスにくびったけ。フカヒレに相好を崩し、スケールの大きいオマールに全面幸福。
96。すごいなあこんなに古酒ばっかり。円やかな樽を感じ、優しくバターやハチミツが香ります。白トリュフの香りを柔らかく受け止め口の中で新しいソースを作り出す。
エビのフリットにフグの白子、アオサノリのソースに柚子でアクセントを乗せています。サクサクと軽いエビが心地よい。フグの白子はP系で官能的。見栄えもグロかわいくうっとり魅入ってしまう。アオサのソースもお見事。これは日本人にしか作れない料理ですね。控えめに言って傑作です。
シャキシャキとして直線的なシャブリ。程よく華やかで率直。酸もしっかりです。
ブイヤベースのエクアトゥール風?キンキンに冷えたカッペリーニにカンパチ、タコのラグー。これもすごくいい。タコのラグーの旨味の強さをカンパチの歯ごたえが包み込む。髪の毛のように細い1本1本の麺にソースが絡みつき、ここまで上質なパスタはイタリア料理専門店でも中々ありません。
キンキンに冷えた微発泡。食べる前に一口飲んだ際は冷やしすぎだと思いましたが、カッペリーニと合わせて食べればその冷たさに絶妙でした。全てが完璧に設計されている。恐れ入りました。
メインは鳩。余計なガルニチュール(付け合わせ)などはなく肉1本で勝負と潔い。シェフの食材に対する偏執的なまでの愛情を感じます。

筋肉質で食べ応えのある鳩。サルミソース(内臓のソース)も伝統的で、こういうことが要するにフランス料理だ、と主張する料理でした。
合わせるワインはカロンセギュールと気前が良い。チョコレートのような濃厚な風味が迫り来る。サルミソースと一緒に飲み込みバッチグー。それにしても、このワインを飲むたびに中村マリアとのピルエットでのトラブルを思い出す。
連れのメインは鹿。こちらも鳩と同じく割り切ったプレゼンテーションです。
ややベリーの香りがするピンク色のパン。席数を可能な限り抑えているのにパンのレパートリーが幅広い。大変な企業努力だと思います。
デザートはフォンダンマロンにラム酒とラムレーズンのアイスクリーム。ナイフを入れると流れ出る濃厚なクリのソース。アイスクリームとも見事なハーモニー。最後の最後まで完璧でした。
コーヒーも完璧。カヌレがカリカリとクランチーな食感で斬新でした。

この記事には何度『完璧』という単語を用いたことでしょう。それほどまでに無謬性の高い料理たちであり、どの皿も完璧に美味しかった。あ、また使っちゃった、『完璧』。

ベクトルとしてはナリサワフロリレージュレフェルヴェソンスのような前衛的なフレンチでしょうか。しかし時には龍吟的でありたきや的でもある。正統的なフランス料理に見え隠れする和のエスプリ。天才によって創られる唯一無二の饗宴です。

マダムの付かず離れずのサービスもすごく好き。余計なおしゃべりなどせず、良い意味で客を放っておいてくれます。かといってぶっきらぼうというわけでなく、用事が済めば笑顔だけ残して去っていき、必要な時にはそこにいるという感覚。居心地が凄く良かった。

年の瀬が迫ったところで今年のベストレストランに巡り遭う事ができました。今年もシア充な一年でした。



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麻布十番にはフランス料理屋がたくさんあるのですが、残念ながら割高でハズレなお店も多い。外さない安定したお店は下記の通り。
  • エクアトゥール ←天才によって創られる唯一無二の料理。
  • ALLIE ←ワインという食事の知的部分を担うソムリエの重要性を再認識させてくれるお店。
  • ラリューン ←クラシックな調理で正統派。むちゃ穴場です。
  • 麻布れとろ ←ここで合コンすれば幹事がモテる(と信じている)。
  • RRR ←ワインが割安。飲みまくれ!
  • ルバーラヴァン52 ←全般的に安い。2時間で追い出されるのが玉に瑕。
  • ブラッセリートモ ←和魂仏才、リーズナブル!
  • タストゥー ←トリュフを使ったデザートに身悶え。
  • 麻布十番グルメまとめ ←ほぼ毎日、麻布十番で外食しています。その経験をオススメ店と共に大公開!
東京カレンダーの麻布十番特集に載っているお店は片っ端から行くようにしています。麻布十番ラヴァーの方は是非とも一家に一冊。Kindleだとスマホで読めるので便利です。


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