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カスタム・クロノグラフの製作

Making of Custom Chronograph

【完成図】

【仕様】
オートマチッククロノグラフ(ETA Valjoux 7750)/25石/30分・12時間積算計/曜日・日付/ねじ込み式リューズ・プッシュボタン/シースルーバック/ステンレスケース/クロコダイル皮ベルト/サイズ40mm×13mm

オリジナルのクロノグラフ

スイス製のパーツを集めて、機械式クロノグラフ腕時計の自作にチャレンジしました。派手さや奇をてらわず、シンプルな機能美を念頭におきました。

パーツと道具

今回、製作するクロノグラフのパーツです。海外オークションやパーツショップで一流品を集めてみました。

文字盤の足位置やケース内径は、ムーブメントに合わせなくてはいけません。同様に、針を装着する軸も、バルジュー7750はクロノ針0.25mm、分針1.20mm、時針2.00mm、秒針、積算針0.18〜0.22mmと仕様が決まっています。

この制約の中で、好みのデザインを考えながらパーツを探しました。現在、ブライトリングやオメガ等の中堅から、高級ブランドにいたるまでバルジュー7750を採用しているので、選択の幅は広いと思います。

ムーブメント
ETA製バルジュー7750(分解・組立)。信頼性と汎用性に優れ、ほとんどの一流ブランドが採用しています。非常にレアな全身ブルーの特別仕様を入手。25石。
文字盤(ダイヤル)
IWC純正のシンプルな文字盤。インデックスはルミナス(蛍光)。90年代製。
ステンレスケース
裏側からムーブメントが見えるシースルーバック。リューズ、プッシュボタンともに、こだわりのねじ込み式のロック機能付きで耐水性に優れています。ストレートなラグが上品。
針(ハンド)
オメガ純正スピマスの針。文字盤に合わせて、時針、分針もホワイトルミナス。
ベルト
個人的に革ベルトが好みなので、汗に強いクロコダイルで、クロノに合う厚みのあるボンベ仕様。カルティエ等の高級宝飾ブランドにも採用されるフランスのカミーユ・フォルネ製。同社独自のアビエシステムで着脱が容易。
工具
今回のために新たに便利な工具を用意。ムーブメントホルダー、ケースホルダー、ハンドプレス

この他に時計専用の工具は必須です。

文字盤と針の取り付け

まず、自動巻きローターを外したキャリバー7750を、AFスイスのムーブメントホルダーに固定します。文字盤や針の取り付け、稼動確認テストには必需品です。

0時で針を付けるため、カレンダー日付が変わる状態まで、時刻合せリューズを回しておきます。

AF SwitzerlandのCal.7750用ホルダー
文字盤の取り付けからクロノの稼動確認まで重宝

日付変更時点の爪の位置

文字盤を取り付けます。とても繊細なものなので、キズや汚れが付かないように注意します。

文字盤を取り付けたところ

続いて、針を取り付けます。ここはクロノグラフの組み立ての難所です。

写真のHOROTEC社のハンドプレスは、針を文字盤と正確に平行に、正しい深さに付けることができます。針が多いクロノグラフには便利です。

様々な針のサイズに対応できるよう、豊富なアタッチメントを備えるHOROTECのハンドプレス

12時間積算計のアップ

針は深すぎず浅すぎず、適度なすきまを調節します。浅いと針同士がぶつかり、深いと文字盤との摩擦で動かなくなります。1本でも動かないとすべてが連動している時計全体が止まってしまいます。

また、12時に正しく時針と分針が重なるように、ストップウォッチが正確にリセットするように、正確に12時方向に取り付けなくてはいけません。

針を上からプレスするところ

微妙な針の重なり

針をすべて取り付けると、クロノグラフの精悍な顔になります。

すべての針を付け終えたところ

ゼンマイを巻き、クロノグラフをスタートさせた状態でのランニングテスト中。

テスト中風景

ケーシング

いよいよケースにムーブメントを収めます。

まずは、セルベットやベンジン、ブロア、ロディコを使ってケース内の汚れやチリを落とし、クリーンな状態にします。特にガラスは光に当てて汚れを念入りにチェックします。

文字盤にベンジンは厳禁です。ロディコで丹念に汚れを吸い付けます。

うらぶた、Oリング、外装ケース本体、リューズ

練り消しのようなロディコ、ベンジン、ブロア(ちり吹き)

リューズは付け根にあるボタンを爪楊枝で押して取り外します。

リューズを取り外したムーブメントをケースの裏側から収めます。テンプに触れないように、また裏側の文字盤や針を傷つけないよう注意します。

ムーブメントは上下2箇所のツメをネジ止めしてケース内に固定します。

ムーブメントを収納したところ

ムーブメントをケース内壁に固定するツメ

続いて、巻き芯の長さを調整します。四つ割りで真をしっかり掴んで、リューズを付け替えます。

四つ割り

巻き真とリューズ

出荷時のムーブメントの巻き真は長すぎるので、一旦、本体に装着して余分の長さを確認した後、ニッパーで余分の長さを切断します。短く切断しすぎると取り返しがつかないので、徐々に長さを調節していきます。

写真の赤い部分はねじ込み式リューズの伸縮部分なので、この分は残します。

巻き真の長さを調節する前の状態

左から、ロック状態、ゼンマイ巻上げ、カレンダー調整、時刻合せの4ポジションのリューズ

ケースに正しく収まった状態

自動巻きのローターを中央のネジで取り付けます。

コート・ド・ジュネーブ装飾のキレイなローター

ゴムのOリングと裏蓋を取り付けます。裏蓋はスクリューバック式なので、ケースオープナーでしっかりとねじ込みます。ケースオープナーのツメはエッジが鋭いので、ケースを傷つけないようにビニールの上から挟み込みます。

明工舎(MKS)のケースオープナー

すき間がないようしっかりと締めます

ベルトの装着

革ベルトを装着します。このケースはバネ棒ではなくビス留め式なので、せっかくのカミーユ・フォルネのアビエ仕様は使えませんでした。とはいえ、ばね棒式よりもネジ固定の方が丈夫ですし、見た目も大きめのラグが高級感を出しています。

ラグにビス留めする方式

バネ棒は不要

尾錠の付いた方のベルトを時計の上側に付けます。ラグの両側からマイナスドライバーで締めるので、ケースがキズをつけないよう注意して取り付けます。

尾錠のある方が上に装着

ベルトの装着が完了

完成

出来上がりました。視認性の高い文字盤、針の色からボタン形状にいたるまで、すべては機能美を追求したデザイン(良くいえば)。

飾りのないシンプルな全体像。ドイツ時計の雰囲気。

シースルーバックから見える美しいムーブメント

精悍な黒文字盤。インデックスと時針、分針は蛍光。

調整

当初、やや遅れ気味の日差-10秒程度でしたが、緩急針で「+」に調整し、現在の歩度は+10秒に持ち直しております。

精度が良いとはいえないですが、日常使用にはまったく問題ないレベルです。

to be continued...