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復活カセットテープ 低迷期も作り続けた米カセットメーカー ナショナル・オーディオ・カンパニーのストーリーを特集

2024/04/23 18:49掲載
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Cassette Tapes
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かつては音楽の遺物と見なされていたカセットテープが、CDやストリーミングの時代を乗り越え、新しい世代の音楽愛好家たちを魅了し、米国ではこの10年で売上が440%以上増加しています。それは低迷期も逆境に負けずに作り続けたカセット・メーカーのおかげでもあります。そのひとつ、米国のナショナル・オーディオ・カンパニーのストーリーを米ラジオ局KCURが特集しています。

ナショナル・オーディオ・カンパニーは、米ミズーリ州スプリングフィールドにあります。同社は現在、年間約3000万本のカセットを生産しています。

同社は1968年、現在のオーナーであるスティーヴ・ステップと、彼の父親ウォーレン・ステップによって設立されました。当初は放送用カートリッジを製造し、ブランク・テープを全米のラジオ局やレコーディング・スタジオに販売していました。父親のウォーレン・ステップは1994年に他界し、スティーヴがそれ以来会社を経営しています。

スティーヴは最初オーディオ・カセットを見たとき、大したことは無いだろうと思い、参入しませんでした。しかし、その後、1970年代にはラジカセが人気を博し、そして1979年にはソニーがウォークマンを発売して、カセットテープは急速にオーディオ市場を支配しました。

ナショナル・オーディオ・カンパニーはカセット・ブームの絶頂期に参入しました。この頃は、カセット・テープのダビングや配給事業を手がける数多くの企業のひとつに過ぎませんでした。

絶頂期、顧客からの需要に追いつくことができない状況だったという。同社はカセット・ローディング・マシンを購入しましたが、「あれは1時間に2,000本のカセットを作ることができた。もう2台目は必要ないだろうと思ったんだけど、1年も経たないうちに、もう2台買ったよ(笑)」。1980年代半ばまでに、カセットの売り上げはレコードの売り上げを上回りました。

その後、CDが登場。1991年までに音楽CDの売上はレコードとカセットテープを上回りました。多くのカセット・メーカーにとって恐ろしい時代でしたが、ナショナル・オーディオ・カンパニーは過度に心配することはなかったという。

当時、同社は音楽カセットの複製を作るビジネスをしていませんでした。音声化された書籍コンテンツを耳で聴く「オーディオブック」などの録音を手がけていました。「CDはカセットを音楽業界から駆逐したけど、オーディオカセットや録音図書のビジネスなどには手を出さなかった。だから、僕たちはダメージを受けることはなかったんだ」

その後、カセット・ミュージック・ビジネスの競合他社がこのフォーマットに見切りをつけ始めたとき、ナショナル・オーディオ・カンパニーは好機と見て、彼らの不要になった機器の買収を始めたという。「みんな僕たちのことをクレイジーだと思っていた。今でもそうだ。今でもみんな、僕たちのことをクレイジーだと思っているんだ」

2000年代初頭、ダウンロードの時代がやってきます。ナショナル・オーディオ・カンパニーはパール・ジャムが企画したアニヴァーサリー・ボックスセットの中のカセットテープの制作を手伝ったことで注目されるようになりました。

またこの頃、ナショナル・オーディオ・カンパニーはインディーズ・ミュージシャン向けの音楽カセットの制作にも力を入れるようになりました。カセットはCDと並んで、DIYミュージシャンが自分たちのやり方で少量ずつ音楽をリリースするための手頃な選択肢でした。ナショナル・オーディオ・カンパニーは現在、年間5,000以上のインディーズレーベルと取引しています。

2000年代から2010年代にかけて、ナショナル・オーディオ・カンパニーは音楽用カセットテープの世界で重要な位置を占めるようになりました。しかし、彼らの世界ではカセットは健在であったにもかかわらず、他社は「カセットは死んだ」というシナリオを信じ込んでしまい、それによって残念な波及効果を引き起こしました。

ナショナル・オーディオ・カンパニーは、カセットテープのすべての部分を自社で作っていたわけではなく、カートリッジの中に入っているテープも含めて、製造の一部は他社から調達していました。

2010年代までに、重要な部品を製造していたほとんどの大手企業は、カセットテープの製造から撤退しました。ナショナル・オーディオ・カンパニーはあちこちを探し回り、最終的に韓国のSaehanという会社がまだテープを生産しているのを見つけます。しかし、その後、そのSaehanもテープの生産を終了しました。Saehanから最後に調達した在庫で3年ほど持つと考えたオーナーのスティーヴは「2つの選択肢がある。3年で廃業するか、テープを作るか」とスタッフと話し合い、同社はテープの生産を自社でやることを選びます。

より質の高いテープを作るために改良を重ね、試行錯誤の末、ついに2019年、彼らはテープの生産を開始しました。それは同社にとって極めて重要な瞬間だったと振り返っています。

最後に、会社やカセットテープが今後数十年でどうなるかを予測してほしいと頼まれたスティーヴはこう答えています。

「今、テープは本当に人気がある。しばらくの間、この状態が続くといいね。最終的にはテープを凌駕するようなフォーマットが登場することはわかっていることだけど、でもね、テープが人気で売れていて、人々がそれを欲しがっている限り、僕らはそれをやるつもりだよ」