ロックは米国で2番目に大きなジャンルですが、グラミー賞の授賞式では、最優秀ロック・アルバム賞、最優秀メタル・パフォーマンス賞、最優秀オルタナティブ・ミュージック・アルバム賞などの受賞者は、米国ではテレビ放映されない時間帯に発表され、ロックは影の薄い存在になっていた印象です。なぜか? 米ビルボード誌はその理由をデータから分析しています。
同誌によると、音楽デジタルデータを集計しているLuminateのデータによると、ロック音楽のアルバムの市場シェアは22.3%で2番目に大きなジャンルであり、14.8%のポップミュージックよりも多く、8.3%のラテン音楽のほぼ2.5倍、10.4%のカントリー音楽の2倍強に相当します。最大のジャンルは27.8%のR&B/ヒップホップです。
Luminateは、リリースを2つに分類しています。「最新リリース」は18ヶ月間にリリースされてた楽曲やアルバムが対象で、その期間の全ての販売とストリーミング活動をカウントします。一方、「カタログ」は「最新リリース」以前(18ヶ月以上)のすべての楽曲やアルバムが対象です。
同誌は、ロックの最大の問題のひとつは、この「最新リリース」にあると指摘しています。
「カタログ」で見てみると、ロックの市場シェアは25.5%で業界第2位(1位はR&B/ヒップホップ)ですが、「最新リリース」では、ロックは11.9%で第4位に後退し、R&B/ヒップホップ (27.2%)、ポップ (18.7%)、カントリー (14.8%)に次ぎます。ラテン (10.6%)を辛うじて上回る程度です。
グラミー賞は現在の音楽がすべてです。2025年のグラミー賞では、レコーディング・アカデミーは2023年9月16日から2024年8月20日までにリリースされた音源のみを考慮しました。数学的に言えば、グラミー賞の受賞資格を満たし資格のあるリリースはすべて「最新リリース」ということになります。
また同誌は、もうひとつの、より重要な要因として、ロック部門のノミネート作品の売り上げやストリーミング数が、他のジャンルの作品と比較すると見劣りするものであったことも指摘しています。
「最優秀アルバム賞」のノミネート8作品の平均アルバム売上(ストリーミングのアルバム相当も含む)は204万3000枚。「最優秀ポップ・ヴォーカル・アルバム」のノミネート5作品の平均は301万枚。「最優秀ラップ・アルバム」のノミネート5作品の平均は71万2000枚。「最優秀カントリー・アルバム」のノミネート作品の平均は85万6000枚。「最優秀ラテン・ポップ・アルバム」のノミネート作品の平均は17万1000枚でした。
一方、 「最優秀ロックアルバム賞」のノミネート作品の平均は8万1000枚で、大きなジャンルの中では圧倒的に少ないです。受賞したローリング・ストーンズは『Hackney Diamonds』が9万1000枚で、この部門のトップだったグリーン・デイは15万8000枚でした。