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リモートワーク&ステイホームでハイブリッド化が加速するビューティーテック

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コロナ禍でも美への想いは変わらない

COVID-19は不況の影響を受けないといわれてきた美容業界にも大きなダメージをもたらしている。

マスク着用やリモートワークで美容やメイクに対する考え方が大きく変わり、店頭でスタッフのアドバイスを受けながら商品を試すことも難しくなっている。インバウンドで大きく伸びた百貨店での売り上げが激減し、経済産業省の調査によると2020年上期のビューティケア用品売り上げは前年同期比でマイナスに転じている。

2020年5月の化粧品出荷額は984億5,759万円と前年同月比で71.6%にまで落ち込み、減額が続いている。中でも口紅はある調査によると7割以上減少しているという。

とはいえ、COVID-19で美に対する関心が全く無くなったというわけではない。むしろビューティーテックと呼ばれる最新のデジタル技術を導入する動きは、世界中で大きく加速している。

その対象は幅広く、スキンケアからメイク、ヘアケア、男性化粧品やグルーミング用品、健康用品も対象としている。パリのルーブル美術館で開催される化粧品業界の国際展示会「COSMETIC360」ではビューティーテックに関連する展示が増えており、CESのような国際デジタル展示会ではスマートな美容家電を中心としたビューティーテックのコーナーが2015年から登場している。

今年11月にオンラインで開催された「The Global Beauty Tech Forum」はAR(拡張現実)とAI(人工知能)をテーマに掲げるなど、対面販売や既存ブランドに依存していた化粧品業界にイノベーションが求められているのがわかる。最新技術を取り入れたコスメ製品は「e-コスメティック」とも呼ばれ、新たな市場が生まれようとしている。

ニューノーマルに不可欠なバーチャルメイク

コスメ関連の分野では2018年頃からデジタル化が目に付くようになってきた。大手化粧品メーカーの間では、AR/VR、AI、IoTなどの技術を取り入れたビューティーテックの商品化を急速に進めている。ビューティーテック系スタートアップとの連携や買収も進み、いろいろな商品が発売されている。

中でもコロナで注目を集めているのがバーチャルメイクの分野だ。カメラアプリの加工技術を応用したバーチャルメイクはSNSで大きく成長したが、リモートワークでさらに需要が伸びている。資生堂は2016年に日本マイクロソフトと協力し、オンライン会議の自動メイクアプリ「TeleBeauty(テレビューティー)」を開発しており、Snap Camera経由で様々なオンライン会議で利用できる。

フランスの大手化粧品メーカーのロレアルも2年前にバーチャルメイクアプリを開発するカナダのModiFaceを買収し、同様の機能を持つ「Signature Faces」を今年11月に発表した。ModiFaceは雑誌に掲載されたモデルの写真をキャプチャして、メイクをシミュレーションできるなど高いAR技術を持っている。

メイクをARで試せる技術はオンライン販売の強力なツールにもなっている。ModiFaceはスマートミラーを使ってメイクを試せる「in-store AR mirror」を開発している。店頭で試供品を使うのがためらわれるようになり、国内でもARでメイクを提案する方法を導入する動きは始まっている。

スマートミラーは数年前に登場したばかりの頃は洗面台に設置し、顔を洗ったり歯を磨いている間に天気やニュースなどの情報を表示するのが主な機能だった。だが2019年のCESに登場したスマートミラー専用のソフトウェア「CareOS」は、肌状態からその日にあったメイクを提案してシミュレーションしたり、メイク用品のバーコードを読み取って使い方を動画でレクチャーしてそのまま購入もできるビューティーテック向けの機能が強化されていた。

自宅でコスメをオンデマンドできるデバイスが登場

コロナの影響でビューティーテックが期待されているのは、販売への活用だ。対面販売に代わるチャットボットは以前から利用されており、GoogleはYouTubeで動画を見ながらメイクが試せる「AR Beauty Try-On」を発表している。フランスのランコムは3Dバーチャルで旗艦店をオープンし、動画やインタラクティブ機能を使ったパーソナライズなアドバイスをするなど、ブランドのファンを増やす試みをしている。

さらに新しいところでは、その日の気分や肌の調子にあうコスメを自宅でオンデマンドで調合できる商品が登場している。2021年にロレアルが発売を予定している「Perso」は、スマホアプリで撮影した顔写真からAIがベストなメイクを提案し、それにあわせたスキンケア、ファンデーション、口紅をそれぞれ専用デバイスで調合してくれる。カートリッジが無くなれば自動でオーダーでき、コスメのサブスクリプション・サービスの開拓を狙う。。

実は同様の商品はすでに日本で実売が始まっている。資生堂が開発したIoTスキンケアシステム「Optune(オプチューン)」は、肌にあわせたスキンケアを専用マシンで提供するサブスクリプション・サービスを昨年7月スタートしたが、残念ながら今年に入ってサービスを終了している。市場が大きく変化したため体制を見直している可能性もあり、今後の動きに注目したい。

ターゲットは男性にも拡大

ビューティーテックをきっかけに新たな販路を拡大しようとする動きもある。世界的に市場が成長しつつあるメンズ向けのビューティー商品を新たなビジネスチャンスにつなげようというものだ。

ボールペンメーカーで知られるBICはアプリと連動するAI搭載シェーバーのプロトタイプ「Next BIC」を開発している。ヒゲの太さや密度、シェービングの速度や回数をデータとして収集し、パーフェクトなヒゲそり体験を提供できる製品の開発につなげる。

また、二ベアでお馴染みのドイツのBeiersdorfは、メンズ向け商品にスマートパッケージを試験的に採用している。Googlelensでパッケージをスキャンすると商品解説やプロモーション動画が表示され、商品の感想を送ることができる。こうしたデータを元に新しい製品を開発するよう、世界市場に向けた導入を検討している。

今のところはまだマーケティングツールの段階だが、フィードバックを元に新しい美を提案する商品を開発しようとしているのはまちがいない。美容家電をはじめとしたビューティーテックは日本が先行してきたが、これからは世界で競争が激化しそうだ。

文:野々下裕子

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