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実在とは何か ――量子力学に残された究極の問い (単行本) 単行本(ソフトカバー) – 2021/9/2

4.1 5つ星のうち4.1 41個の評価

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量子論は「物質は実在しない」という。ではわれわれは存在するのだろうか? 名だたる科学者と哲学者たちが繰り広げてきた熱い論争の、知られざる展開を追う!=== 20世紀初頭に発見された量子力学は、世界の見方を根幹から変えた。ではそれはどんな世界なのか? その意味をめぐる議論は、「コペンハーゲン解釈」をもって正統とされる。しかしその解釈にはいくつもの問題がある。最大の謎は、世界を構成する基本物質、原子も電子も素粒子も「実在しない」という主張だ。 アインシュタインはこれに猛然と異を唱え、ボーアと激しい論争を繰り広げた。曖昧な決着のまま、長らくこの問題は問うことすらタブーとされてきた。しかしいま、実在をめぐる論争は、物理学のみならず、哲学者、数学者、天文学者など各界の名だたる頭脳を巻き込んで、熱く燃えている。 大いなる問い「実在とは何か」をめぐる熱い論争の100年をたどる知的エンターテインメント。

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商品の説明

著者について

アダム・ベッカー Adam Beckerサイエンスライター。1984年生まれ。コーネル大学で哲学と物理学を学び、ミシガン大学で宇宙物理学のPh.D.を取得。BBCやNew Scientistほか多くのメディアに寄稿。本書が初の著書。

吉田 三知世(よしだ・みちよ)京都大学理学部物理系卒業。英日・日英の翻訳を手がける。訳書にトゥロック『ここまでわかった宇宙の謎』(日経BP社)、マンロー『ホワット・イフ?』、ダイソン『チューリングの大聖堂』、シュービン『あなたのなかの宇宙』、ボダニス『E=mc2』(共訳)、クラウス『ファインマンさんの流儀』(以上、早川書房)などがある。

登録情報

  • 出版社 ‏ : ‎ 筑摩書房 (2021/9/2)
  • 発売日 ‏ : ‎ 2021/9/2
  • 言語 ‏ : ‎ 日本語
  • 単行本(ソフトカバー) ‏ : ‎ 480ページ
  • ISBN-10 ‏ : ‎ 4480860924
  • ISBN-13 ‏ : ‎ 978-4480860927
  • 寸法 ‏ : ‎ 13 x 2.5 x 18.8 cm
  • カスタマーレビュー:
    4.1 5つ星のうち4.1 41個の評価

カスタマーレビュー

星5つ中4.1つ
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上位レビュー、対象国: 日本

  • 2022年4月30日に日本でレビュー済み
    Amazonで購入
    大学で量子力学を学習する際は意外と解釈論には踏み込まないと思うが、当然のことながら解釈論が一番量子力学の面白いところであり、この本もとても面白かった。大分前に「不完全性・非局所性・実在主義」を読んだが格調高く(数学的にも)正直良く理解できなかったが本書は読みやすい。
    評者の世代はコペンハーゲン解釈が通説だったような気がするが、最近は多世界解釈がブームに感じる。パイロット波を提唱していたのがAB効果のアハラノフだったというのは知らなかった。
    実証主義と観念論は振り子理論のような気がする。法実証主義と自然法論が典型だが、物理も意外とそうなのだなと気付かされた。
    6人のお客様がこれが役に立ったと考えています
    レポート
  • 2023年6月13日に日本でレビュー済み
    Amazonで購入
    実在とは何か、回答に最も近いと思われる量子論の書籍を多数の読みましたが、実在について正面から取り上げている書籍はありませんでした。初めて出会いました。購入できて良かったです。
  • 2022年2月14日に日本でレビュー済み
    Amazonで購入
    最近読んだ本の中で一番面白かった
    5人のお客様がこれが役に立ったと考えています
    レポート
  • 2021年12月12日に日本でレビュー済み
    Amazonで購入
    この2冊の本はともに量子力学をテーマにしている。
    先に読んだのはアダム・ベッカーの前者であり、そこでの結論というか論者のスタンスに納得できないものを感じていた時に、ちょうど同じテーマを扱うカルロ・ロヴェッリの本が出たので、続けて読んでみたのである。
    因みにカルロ・ロヴェッリは、昨年読んで大きな刺激を受けた『時間は存在しない』の著者でもある。
    まず、前者について。
    著者のアダム・ベッカーは物理学の博士号を持ちカリフォルニア大学バークレー校の客員研究員である。
    本書は、20人を超える量子力学に関する著名かつ重要な物理学者に膨大なインタビューを行い、かつ歴史的資料を渉猟して重厚な量子力学の歴史を描く作品となっている。
    しかし、本書でアダム・ベッカーは、量子力学の成功は認めるものの、その核となっているボーアやハイゼンベルクの生み出したコペンハーゲン解釈に疑義を呈する。
    その疑義の中心は観測問題である。そして、そこから敷衍される「考えるな。黙って計算せよ」というコペンハーゲン学派の立場でもある。
    これは、量子力学のもっとも不可解なこととされる「重ね合わせ状態の観測による収束」だが、素朴な疑問として「人間が何か特別なのか?」「チンパンジーでは収束しないのか?」を生んできた。実際、著名な物理学者もこのような問いをあまた発しているほどである。
    しかし、このような疑問にもかかわらずハイゼンベルクが生んだ量子論は計算としては完璧に機能し、それが原水爆を生み、原発を生み、テレビやコンピュータや携帯電話をも動かす元となっている。
    だとしたら、この不可思議な量子の振舞(観測による収束)を取り込んだ、単一な科学的世界観を構築すること自体が不可能なのではないか、あるいは不要ではないのか、という立場である。つまり、上手く機能していることが全てで、量子力学基礎論は不要であるとする立場だ。
    ただ、これへの疑問、つまり量子力学を含んだ単一の科学的世界観が必要だという立場は、世界の現実政治の中で20世紀中盤は無視されてきた。
    それは、量子論の計算が軍事的に役立つことが判明したため、アメリカでは膨大な国防総省の予算が量子力学の研究のために投下されたが、それらはすべて実用的な計算のためであって、量子力学基礎論的な研究は打ち捨てられてきたという事情がある。
    著者ベッカーは、そのような歴史をも丹念に描いていく。
    ただ、著者はコペンハーゲン解釈に否定的な立場から、実在論や多世界解釈にまで肩入れする。
    例えば、ボーアとアインシュタインの論争では、アインシュタインの誤りが自明とされているが、筆者はボーアに否定的でアインシュタインに肯定的である。
    いや、そればかりか、レーニン『唯物論と経験批判論』まで引っ張り出してきて、レーニンの立場からボグダーノフとマッハを否定的に描き、レーニン的実在論に肩入れさえする。
    さらに、観測問題を解決するものとして、観測によって量子の重ね合わせは収束するのではなく、世界の方が分岐するという多世界解釈にまで賛同的なのである。
    多世界解釈の歴史を辿りながら、長い間無視されてきたが、宇宙論で多世界解釈が提唱されるようになったことで、量子力学の多世界解釈も再び脚光を浴びるようになった、という。
    しかし、ぼくの理解では宇宙論の多世界(多重宇宙)とは、この我々が存在する宇宙の他に並行して別の宇宙が無数に存在するという仮説であったり、あるいはこの宇宙の中に別の物理系を有する泡状の宇宙が存在するといった仮説であって、分岐とは全く異なるはずである。
    また、多世界論者による量子コンピュータの理論(解釈)が好意的に紹介されているのだが、それによると量子コンピュータが大量の計算を瞬時に行える理由は、多世界で同時に計算を行っているからだ、というのである。
    こうした疑問は、本書では解消されず、どんどん膨らむばかりである。
    11月に読み終えて、疑問の塊になっている時に、何とタイミングよく出版されたのが、後者の『世界は「関係」でできている』だった。
    前者が重厚な歴史本的趣きがあるのに対して、こちらは詩的あるいは美しい散文的な軽やかさであるのも対照的だ。
    扱っている対象も、本書にはアメリカの戦後の軍事的背景には触れられていないものの90%以上は重なっている。
    ただ、扱われている対象については評価の立場が180度異なる。
    前者がボーアとハイゼンベルクには批判的であるのに対して、後者は肯定的。
    前者がボーア・アインシュタイン論争に関してアインシュタインに肯定的であるのに対して、後者はボーアに肯定的。
    前者がレーニン『唯物論と経験批判論』を巡って、レーニンに肯定的でボグダーノフとマッハに否定的であるのに対して、後者は全くその逆。
    (2人が同時にこの『唯物論と経験批判論』を扱っていることに驚いた。現在ではほとんど忘れ去られている本だから)
    前者が多世界解釈に肯定的であるの対して、後者は全く否定的。
    といった具合である。
    ではカルロ・ロヴェッリの言っていることは何か。
    それは、コペンハーゲン解釈では観測者の観測によって重ね合わせが収束するとされていたが、これを物質同士の相互関係に置き換えることで観測者が不要になる、ということである。
    著者によれば、ある物質の特性とは常に何かとの関係の中に現れる。
    他者と全く関係を持たない物質があったとしたら、その特性を語ることは無意味(そもそも何が特性であるかもわからない)であり、存在それ自体を考えることも無意味だとする。
    うんうん、とてもよくわかる。
    この世界は物質的にもネットワークの網状に成立しており、物質とはその網の結び目(ノード)の様なものだという。
    つまり、物質が先に在って、その物質が後から関係を結ぶと捉えるのではなく、関係のネットワークが先ず先に在って、その結び目としてしか物質は存在していないという世界理解への転換を提唱する。
    おお! 廣松渉の事的世界観を学んだものとしては、何と理解しやすいではないか!
    そして、赤いバラが在るというのは実在論的な捉え方であって、関係論的に捉えれば薔薇が赤く見えるという事が生じしているとすら説明する。
    これなんかは、廣松渉の著作で何度も書かれていたことで、ひょっとして著者は廣松の著作を読んだことがあるのではないかとさえ想像してしまうほどだ。
    それはさておき、このように量子の重ね合わせ状態は観測者が観測した時にではなく他の物質と相互作用する時に収束すると考えれば、観測者は不要になる。
    まして、観測問題を「解決」するために量子が収束するたびに宇宙が分岐する(想像もできないほどの夥しい宇宙が併存することになる。何しろ、人が何かを選択する度にではなく、無数の量子が収束する度✕136億年という分岐の数なのだから)という「とんでもない」仮説を持ってくる必要もなくなると筆者は言う。
    そして、ぼくが付け足せば、かつこの世界を統一的に説明しようとする量子力学基礎論をも満たすと思う。
    ただ、廣松渉をかじったものとして言えることは、物的世界観から事的世界観へのパラダイムチェンジは、われわれ人間が常に旧パラダイムの思考文脈で育ってきているために極めて困難であるということだ。
    その意味で、ベッカーもまた世界の在り方を考える際には旧パラダイム(意識に先立って実在があるという実在論)に縛られているのではないか、というのがぼくの率直な感想である。
    ただ、いずれにせよ、これら2冊を読み比べられたことは大きな収穫であった。どちらの考えに賛同するにせよ、どちらか1冊だけを読んだよりもはるかに理解が深まるからである。
    71人のお客様がこれが役に立ったと考えています
    レポート
  • 2021年9月20日に日本でレビュー済み
    量子コンピュータ熱の高まりで再び、量子力学の基礎に対する関心が高まっている。
    「第一部 心を鎮めてくれる哲学」はボーアとアインシュタイン論争のような初期の量子力学解釈のまとめだ。「第二部 量子の反乱分子」がユニークだ。ほとんど語られる機会がなかったボームとその量子論解釈(パイロット波)が好意的に取り上げられている。
    「第三部 大いなる企て」はベルの定理とその検証実験という最近に至る研究が解説されている。
    量子力学はいかなる意味でも実在を記述していないという立場を崩さない晩期のボーアとその取り巻きを「コペンハーゲンは腐敗しているという人物が必要だった」とまで皮肉っている。
     そして、従来のコペンハーゲン解釈でどこまで割り切れるのか、についてこの本は批判的に論及している点が新鮮だ。著者の言うところによればベルの定理とその実験が示しているのは「非局所性か多世界解釈か」の二択になる。大方の物理学者は認めないだろう。
     コペンハーゲン解釈は著者の観点からすると「論理実証主義」の生き残りであり、時代錯誤的な哲学を引きづっているに過ぎない。
     量子力学の解釈問題をここまでつきつめているのは珍しいし、面白い。知的興奮を覚える人も少なくないと思う。
    34人のお客様がこれが役に立ったと考えています
    レポート
  • 2021年11月29日に日本でレビュー済み
    Amazonで購入
    仏教(空)においては実在は無い。
    実在が無いのが正しい。実在を正しく定義して論じなければならない。
    欧米においては、「空」が分からないから、いたずらに実在を求める。
    仏教(空)を欧米に教えてあげよう。
    4人のお客様がこれが役に立ったと考えています
    レポート
  • 2023年1月9日に日本でレビュー済み
    本書は、量子力学の「コペンハーゲン解釈」をめぐる論争の歴史をたどった実に面白い本である。私は数学の苦手な文科系の人間だが、この書には数式が出てこないので特に頭を抱えることなく、ワクワクしながら読み進めることができる。とはいえ科学雑誌「ニュートン」で特集している程度の量子力学についての常識は、本書の理解には必要かもしれない。
     本書は「コペンハーゲン解釈」の中心人物ニールス・ボーアに対してはかなり戯画的な描き方が目立っており、また、ウィーン学団、論理実証哲学に対する批判的な記述が顕著だ。彼らの哲学の基礎を築いた哲学者マッハに関しては悪意さえ感じさせる。(マッハについては我が国の哲学者木田元の優れた論考がある。せめてこの程度の認識を著者には求めたいが。)
     とは言え「コペンハーゲン解釈」に沿わない考えを表明した学者に対する偏見・差別・圧迫などの不当な扱いについて、著者によって次々と語られる詳細なエピソードを読むと、マッハに淵源するウイーン学団やボーア派に対する著者の感情的な批判も分からないではない。
     本書の面白さは、物理学という、一見、極めて客観的な学問の中に、実はおそろしく人間的なドラマが展開されていることを、様々な面白すぎるエピソードを紹介しながら物語ってくれていることだと思う。
     ひとつ大事な注文。百人を超える登場人物についての「人物事典」を巻末につけて欲しかった。岩波書店の「鷗外歴史文学集」には登場人物の氏名と簡単な説明が巻末についていて、とても重宝したことがある。本書にはそのような人物事典がないので、自分でノートに書きこんで作った。これが本書を辿るのにとても役立った。
    1人のお客様がこれが役に立ったと考えています
    レポート
  • 2022年4月3日に日本でレビュー済み
    Amazonで購入
    量子の世界は現実の世界とは異なり、不思議なふるまいをする世界であることは知識としてはあったがそのイメージが描けないでいた。アインシュタインの局所的実在論が直感的に理解できるのでそうあってほしいと願いつつ読み続けたがそうでないことが証明され、量子の世界はやはり非局所的な世界であるようだ。多くの天才たちのこの議論が歴史背景を通して詳細に記述されていて、とても面白く読ませてもらった。
    2人のお客様がこれが役に立ったと考えています
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